「大丈夫、大丈夫だよ〜」
やさしげな声が聞こえて、僕の頭が撫でられる。顔にはやわらかな感触。でも鼻は塞がれておらず、甘ったるい香りが脳をやわやわと溶かしている。
手はだらんと下がっており、脚にも力が入らない。なんか良くない状況のはずなのに、暴れるなりなんなりして逃げなきゃいけないはずなのに、全然そんな気になれない。完全に相手に身体を任せてしまっている。
「大丈夫だよ〜」
再びかけられるこえ。その声の主を見ようと僕はやわらかなふくらみからちょっと顔を離して首を上に向ける。ふたつの丸い膨らみの奥で、優しげな暗赤色の瞳が僕を覗き込んでいた。僕を安心させるかのようににっこりと笑っている。そしてその肌は緑色だ……
『え? 魔物?』
僕の身体に緊張が走る。魔物……教団の敵、滅ぼすべき淫魔……そんな言葉が脳裏をよぎるが、まるで砂浜に書いた文字が波にさらわれるように、さっと溶け消えてしまう。
それでも逃げなければと手をばたつかせる。持っていたはずの剣はどこに行ったんだろうとのんびりと考えながら。しかし羽ばたくように手がぱたぱたと動いただけで何の効果ももたらさない。クスクスと僕を抱きしめている魔物が笑う。
では脚はどうか。もがこうとするその時
「あ、あ、あああ……」
僕の口から情けない声が漏れていた。得も言われぬ快感が、動かした下半身から全身へと広がり、口を突いていた。その自分の声に混じって、ぬちゃっと粘液質な音が聞こえてくる。
笑う魔物娘から顔をそらして僕は音がする、自分の下半身を見てみる。その前に自分の胸やお腹も見えてしまうのだが……ああ、なんということだ。身につけていた革鎧どころか、その下の服も肌着もなかった。そして僕の下半身は……ウツボカズラのような葉にぱっくりと呑まれていた。そしてその葉に差し入れられているのは僕の下半身だけじゃない。眼の前の魔物娘の下半身も入っていた。
「ふふふ……」
眼の前の魔物娘がもぞりと身体を動かした。それだけで僕の下半身からはむず痒く甘い快感が立ち上る。
僕の脚に何かが絡みついた。見えなくても分かる。眼の前の魔物娘が脚を絡みつけて引き寄せてきたのだ。たったそれだけで、僕はまた声を漏らしてしまう。
どうしてこんなことになっているのか、眼の前の魔物娘は何なのか……とろけた頭で思い出そうとする。
僕は魔王討伐のためにイルトスト王国から出発した勇者だ。いくつかの山や森や街を抜けて、今、この密林にいる。
密林に入ってしばらくしたところで……何か甘い香りがして……気づいたら何かに腰掛けている女性が見えた。貴婦人が被るような大きな緑色の帽子を被っているように見えて、歓迎するように僕に手を差し伸べていた。その女に僕は……
……ああ、そうだ。その女性が、今、僕を捉えている魔物娘なのだ。種族は……おそらく、マンイーター。それも、一見受動的でおとなしそうに見えるが、実際は凶暴でラミアにまさるとも劣らず執着心のある、袋葉種だ。
まずい。非常にまずい相手に捕まっている。武器も防具もなくて万事窮すだ。それでもなんとか逃げなくては……僕は身体をよじる。
「あっ、ふわっ、あ、あっ……!」
しかし無駄だった。いや、それどころか逆効果だ。
この袋葉種はもちろん挟葉種も、マンイーターという種族は消化液を分泌させる。特に特徴的な葉の部分から。その液は、昔は哀れな犠牲者を骨すら残さず溶かして魔物のマンイーターの養分となっていた。だが今の世代の魔物娘に代わってからは、その消化液も、獲物の思考能力をとろとろに溶かし、身体を性的に敏感にさせるものへと代わった。ぱっくりとその葉に包まれている僕の下半身は当然、その消化液でどろどろだ。
消化液で敏感になった僕はちょっと身体を動かして、彼女の身体にふれるだけで甘くしびれるような快感に声が出てしまうのだ。
僕が逃げようとしたことを察してか、マンイーターの眼の光が強くなり、いっそう強く僕を抱きしめた。
「や……やめ……」
そんな言葉を聞いてか聞かずか、マンイーターはラミアのように全身をくねらせる。僕と彼女の身体と身体が擦れ合う。それだけではない。彼女の袋葉がまるで咀嚼でもするかのように蠕動運動を始めたのだ。
ぬちゃ……ぬちゃ……にちゅ……
彼女の身体から分泌される粘液が間に入っていやらしい音が僕と彼女からする。
「あ、あ……」
快感から逃れようともがくが、やっぱりそれは逆効果。そして僕の逃げようとした意思を感じ取ったのか、マンイーターの目が怪しく光った。
やんわりと彼女は僕を抱きしめてくる。マンイーターの抱擁は動作の穏やかさに反して意外と強固で逃げ出すことができない。
そしてマンイーターの抱擁の目的は拘束だけではなかった。再び押し当てられる彼女の豊満な胸。そのやわらか
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