一限講義一時間前

 ピピピピ! ピピピピ!
「うーん……くっそぉ……もう8時かぁ……」
 唸りながら俺は目覚ましの音を止めようと腕を伸ばした。途端にその腕が寒気に包まれる。
「うわっ、寒すぎだろ……」
 目覚ましを殴りつけ、さらにスヌーズ機能も切る。さらに手近に置いてあるストーブのスイッチを押してオンにした。大学生にしては購入費も維持コストも贅沢過ぎる逸品なのではあるが、今年の冬は寒すぎる。買わざるを得なかった。
「ううう……さぶさぶ……」
 腕を布団に再び引っ込める。部屋が温まるまで俺は布団に潜り込むことにした。講義は9時から。正直、あんまり寝ている余裕はないのだが、この寒さに対して布団のぬくもりは魅力的過ぎた。
 いや、本当に布団のぬくもりと言うのは危険だ。ある意味、魔物娘より恐ろしい魔物と言える。特に今日のような寒い日に布団は牙を剥く。いかに自他共に厳しいリザードマンと言えど、この布団にはそう簡単には抗えないだろう。
そして、この布団は俺一人の体温だけを溜めているのではなかった。もう一人の体温も留めている。それは……
「すぅ、すぅ……」
 俺のとなりで眠っている女の体温だ。背は小さく、150cmくらい。顔も幼い感じで見ただけだと小●生にも見えるかもしれない。一応、俺と同級生なんだけど。
 そしてなんといっても特徴的なのは彼女の頭にある真ん丸な耳、それから布団からちょこんと頭を覗かせている尻尾。そう、彼女はドーマウスという魔物娘だ。ラージマウスに似ているが、性格はだいぶ異なる。ラージマウスはせっかちだが、このドーマウスはのんびりとしており、夢見がちな性格だ。そしてよく寝る。先ほどの目覚まし時計の音にぴくりとも反応しない通り、よく寝る。それがドーマウスだ。この娘が俺の彼女、夢野遥だ。
「すぅすぅ……」
 何にも怯えていない安心しきった無防備な顔で彼女は眠り続けている。この寝顔を俺は壊したくなかった。そっとベッドから抜け出し、朝の準備をしようとする。遥の身体をそっと通り、ベッドから出て……
「だめぇ……」
 不意にスウェットの裾を力強く引かれた。引いたのはもちろん遥だ。振り向いてみると、さっきまで寝息を立てていたのに、彼女は目を覚ましていた。寝ぼけ眼で、それでも俺の目をしっかりと見つめながら、俺をぐいぐいと引っ張る。
「寂しいから出て行っちゃイヤぁ……」
「え、あ、うわ〜……」
 まだ布団から出たくないという欲があったからか、俺はいともたやすく再び布団の中に引きずり込まれる。布団に入った俺にすかさずと言った感じで遥の手足が絡みついた。
「あ、その……おはよう、遥」
「ん〜……おはよう、帆人(かいと)……すぅ……」
 俺のあいさつに返事をした遥だったが、俺が一緒の布団に再び入ったら安心してしまったのか、また眠りだしてしまった。
「……おーい、また寝ちゃったかぁ?」
「すぅ、すぅ……」
「頼むから離してくれよ〜、一限に間に合わなくなっちまうよ……」
「すぅ、すぅ……」
 聞いているのか聞いていないのか、遥は寝息を立て続けている。惰眠を貪っている様はまさに幸福。微かに笑みすら浮かべているその顔は何の影もない天使を思わせる。そんな顔をしているのは彼氏の俺を抱きまくらにしているから、と言うのは少しうぬぼれだろうか?
 彼女の頬を突いてみる。すべすべしていながらしっとりしていて弾力もある。餅と言う言葉がまさに似合う肌だ。その頬から指を滑らせ、可憐な口に這わせてみる。条件反射だろうか。遥は軽く口を開いた。俺の指は彼女の温かい口内へと消える。
「……!?」
「んぅ、んんっ、ちゅぷ……」
 寝ていると言うのに遥の舌は俺の指先に絡みつき、唾液をなすりつけてくる。そして加えた指は離さない。まるで赤ちゃんが母親の乳房を離さないように。
 いつまでも俺はその彼女の様子を見ていたかったが、そんな暇はない。本当に抜けださなければ一限に間に合わない。
「うぅうう……」
 俺は唸る。抜けださなければいけないのだが、彼女の寝顔と、布団と彼女のぬくもりは俺を捕らえて離さない。外出ると寒いし辛いし、このまま一限は自主休講にしてしまおうか。そんな気持ちが沸き起こってくる。遥がデビルだったら間違いなくその考えを積極的に指示しただろう。
 それでも俺は理性を総動員して彼女の手足をひっぺがして外に出ようとする。
「ふぅうん……行かないでよぉ……むにゃむにゃ……」
 本当に起きているのではないかと思うくらい、彼女は俺の行動を察して寝言を言いながら手足に力を込めてきた。そのせいで俺と彼女の身体が密着する。
「うっ……」
 思わず俺は声を上げた。今まで気付かなかったが、俺のスウェットの股間は大きなテントを張っていた。いわゆる朝勃ち。健康な成人男性の生理現象だ。その硬くなっている逸物に遥は柔らかいお
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