ルナに呼ばれ、クドヴァンは応接間に向かっていた。
『ソレーヌ義姉さんが来ているって話だけど……』
廊下を進みながらクドヴァンは考える。何の用で呼び出されたのかと疑問に思いながら。ただ単にソレーヌが妹の夫の様子を見てみたかったのか、あるいはルナが姉に夫のことを惚気たいのか……
応接間に着いたクドヴァンはその扉を開けた。
「お呼びでしょうか……って、なんですかこれは!?」
応接間に入るなり思わずクドヴァンは叫んでしまった。部屋には義姉のソレーヌと妻のルナがいた。しかしルナの服装はクドヴァンがまったく見たことのない物になっている。
光沢のあるシルク製らしき紅いドレスを彼女は身にまとっていた。ドレスには金の刺繍が入っており、そのドレスが高価な物であることを物語っている。そして何より特徴的だったのはそのドレスには裾から腰まで深いスリットが横まで入れられていることであった。
いわゆる、チャイナドレス。
霧の大陸で妖狐などが好んで着ると言われているドレスだ。クドヴァンも何度かルナに連れられて貴族のパーティーに参加した際、見たことがある。そのドレスを今、ルナが着ていた。
「こんにちは、クドヴァン。久しぶりね」
「ソレーヌ様、お久しぶりです……それにしてもどうしたのですか、このルナ様の格好は……?」
「うふふ、似合っているでしょう?」
誇らしげにソレーヌが言う。改めてクドヴァンはルナを見てみた。ドレスはルナの身体にぴったりとフィットしており、彼女の胸のラインや平らな腹のラインを惜しげもなくあらわにしている。背中も大きく開かれており、ヴァンパイアのマントのような翼とシミ一つないすべすべした背中がさらされていた。ドレスに袖はなく、白くて丸い肩がむき出しになっている。胸元の布地もカットされており、ルナの胸の谷間がそこから覗いていた。しかしなんと言っても横のスリットだ。横のスリットからルナの白くてつるりとした形の良い脚が顔を覗かせている。少し動かすと尻までが見えてしまいそうだ。しかしそれらはドレスの裾によってひらひらと隠されてしまう。
見えているのだけれども全部は見えない。短いスカートや下着姿とはまた違った露出の仕方をスリットは提供している。そのドレスをルナは見事に着こなしていた。クドヴァンはソレーヌに向かって大きく頷く。
「はい、似合っています。素晴らしいと思います」
「くっ、クドヴァンまでそう言うの……」
ルナがこぼす。着ている彼女はかなり恥ずかしいみたいだ。その頬がドレスの色と同じくらい赤く染まっており、身体も縮こまらせている。腰を少し引いていることによって膝から太腿までがスリットから覗いた。それをクドヴァンは食い入るように見つめている。
「はい。素敵だと思います、ルナ様」
「うぅう……」
服装は恥ずかしいが、夫にそう言われたらやはり嬉しい。唸るルナの表情は複雑だった。
二人の様子にソレーヌは満足げにうんうんと頷いた。
「クドヴァンが喜んでくれたのなら、買ったかいがあったわね。それじゃ、あとは二人でゆっくり楽しみなさい」
「え? あ、あの姉さん……?」
「あ、ベッドとかはメイドさんたちに頼むから遠慮なく。それじゃ、ごゆっくり」
チロルハットとサーベルを取り上げ、一方的にそう言いながらソレーヌは出て行った。あとにはチャイナドレスを纏ったルナとクドヴァンが取り残される。
「相変わらずソレーヌ様は嵐のような方ですね」
クドヴァンが苦笑する。
「そうね……そんなことよりクドヴァン。もうフォーマルモードはやめて、いつものクドヴァンに戻ってくれるかしら?」
扇情的なドレスを纏った女と男が意図的に二人きりにされ、ごゆっくり、と言われる。つまり、ソレーヌは二人に夫婦としての時間を過ごせと言っていた。この着慣れないドレスはやはり少々恥ずかしかったが、逆にそれが交わりの際、刺激になりそうだ。
恥ずかしがっていたルナであったが、もう既にその気になっている。そのルナを見てクドヴァンは軽く笑った。
「分かりましたよ……ルナ」
二人きりの時の呼び方で、クドヴァンがルナを呼ぶ。そしてチャイナドレスに包まれた細いウエストに腕を回して自分の方に抱き寄せたのだった。
「ん、あむ、んちゅう……」
「ん、んん……」
ブラントーム家の主の部屋で。既に月は沈んでおり星明かりしか入ってこない。その薄暗い部屋に熱っぽい吐息と水音が響いている。
ベッドの上でルナとクドヴァンが抱きしめ合い、キスをしていた。ルナは応接間で着ていたチャイナドレスを身にまとっており、クドヴァンは下着のみだ。金の刺繍とシルクの生地が星明かりを静かに反射して光っていた。
「ルナ……」
キスをしているくちびるの端でクドヴァンが呼ぶ。そして、手が動き始めた。開かれている背中を
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