隔世の約束

「ん……あっ、あんっ! クリネス、クリネス……!」
「ランタナ様……あ、あ……!」
とある小さな遺跡の奥、主の間にて。一対の牝と牡が寝台の上で絡みあい、乱れていた。女の肌は褐色。男の肌はそれよりは幾分か白に近い。この遺跡の主である亡国の女王、ファラオのネフェルランタナと、その夫のクリネス。歳は女が漸く17,8を行ったかと思われる程度、男は20を過ぎたくらいか。その二人が寝台の上で愛を交わしていた。
ネフェルランタナがクリネスの上にまたがり、手を頭の後ろで組んで淫らに腰をくねらせるようにして動かしている。下になっているクリネスも彼女にされるがままというわけではなく、腕を上に伸ばして彼女の動きにあわせて揺れている豊満な胸を愛撫したり、下に伸ばしてクリトリスを愛撫したりしていた。
乾いた砂漠らしからぬ、ぐちゃぐちゃとした水音が部屋に響き、砂漠の風より熱い吐息が二人の口から吐き出されている。
「あっ……あっ! クリネス……もう……!」
限界が近づいてきたのか、ネフェルランタナの上半身が重力に従って前傾する。頭の後ろで組まれていた手もクリネスの胸の上に置かれた。そのネフェルランタナの手をクリネスは取り、そして指を絡ませるようにして繋いだ。
「僕もです、ランタナ様……ッ!」
「はぁ、はぁ……いいわよ。女王たる私の中に……んぅう! たっぷり中出しなさい……!」
女王の腰がますます激しく、ねちっこく、男と自身を絶頂に追いやるべくうねる。目と目を合わせ、呼吸と鼓動を合わせ、二人はともにその最高の時を待つ。
先に我慢できなくなったのは男の方だった。
「うあ、あ……ランタナ、様ぁ……!」
一声、切なそうに啼いてクリネスは腰を突き上げる。小さな遺跡の主と言えどもその遺跡の中で一番上に立つ者、元は国の主だった者。その高貴な女性の中に男の白濁液が吐き出されていく。
「ふあああっ! クリネスぅう!」
愛しい者の精液を膣に受け止め、ネフェルランタナも澄ました女王ではいられなかった。その様子は完全に、牝へと堕ちている。
絶頂に達した女王の膣がもっと精液を捧げよと収縮して要求する。男はその要求にあっさりと屈し、さらに尿道内に残っている精液も差し出した。
「ああ、クリネスのが、いっぱい……」
「ランタナ様……」
狂おしい絶頂が過ぎ去り、うっとりとした余韻に二人は身を漂わせる。その中で二人は互いの名を呼び合い、そしてくちづけをするのであった。


「うーん……」
つい先ほどまで熱く甘い声が響いていた主の間。そこに悩んでいるような唸り声が響く。ネフェルランタナの者だ。寝台の上で裸身を起こし、頭を抱えている。
「どうなさいました、ランタナ様?」
クリネスが上体を起こし、首を曲げて下からのぞき見るようにしてネフェルランタナの様子を伺う。ネフェルランタナを愛称であるランタナと呼ぶのは彼だけだ。
彼の問いかけに対してネフェルランタナは曖昧な答えを返す。しかし、クリネスは彼女の悩みは分かっていた。
「まだ、記憶が戻られないのを気に病んでおられますか?」
「うーん……」
ネフェルランタナがまた唸る。今度は肯定的な唸り方だった。

大昔。それこそ旧世代の魔王の時代。砂漠の国では"ファラオ"とは王の意味であった。だが魔王が今のサキュバスとなったこの時代、"ファラオ"とは今、クリネスの前にいるような魔物を指す。
彼女らは元は魔物ではなく、とある神より加護を受けた、砂漠の国の民を導く王である。それが今の魔王の時代になり、何らかの形で蘇ったのが魔物のファラオだ。ネフェルランタナもそのうちの一人だ。
しかし旧世代の魔王の時より永き眠りについていたファラオである。その記憶は曖昧であることが多い。ネフェルランタナもそうであった。

「ごめんなさい……」
「お気になさらず……ランタナ様が記憶や……私との状況を気になさる気持ちも私には分かります」
ネフェルランタナのぽつりとしたつぶやきに、クリネスは手を握って答えた。

普通、ファラオは曖昧な記憶などうっちゃり、王国の復活と世継ぎの誕生のため、愛を交わすことだけに専念する。だがネフェルランタナはそうではなかった。クリネスの言葉の通り、自分の記憶と、そしてクリネスとなぜ結ばれたか、疑問に思っていた。
クリネスのことは愛している。そのことは自信を持って言える。それゆえになぜ彼と迷いもなく結ばれたかが疑問であった。
なぜなら、クリネスは元は主神教団の国の人間なのだから。
二人が出会ったのは5年前である。クリネスはとある主神教団の国、コロタゴークスの奴隷であった。砂漠で何人もの人間が失踪する事件があったため、魔物の仕業と判断したコロタゴークスの幹部は討伐部隊を派遣した。結果は、討伐部隊は惨敗。慣れない砂漠の戦いで次
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