「なんだってのよ、バカッ!」
ドスンと私はベッドに倒れ込んで叫んだ。
ついさっき、私は恋人と喧嘩をした。
いや、喧嘩とも言えないかもしれない。
私が文句を言ったら彼が怒りだし、無言で同棲しているアパートから出ていったと言うのが正しいだろう。
二人で住んでいる部屋には今、私一人しかいない。
私の叫び声はガランとした部屋に虚しく響いた。
「まったく訳が分からないわ……ふん、もう知らないっ! いたっ、いたたっ! ちょ、やめてっ!」
突然、私は一人で痛みの声をあげ、制止の声をあげる。
部屋に一人いる私が今、話しかけた相手……それは私の身体の一部、髪の蛇だ。
私たちメデューサの髪は途中から蛇になっており、本体の私たちと意識を共有しながらも自由に行動ができる。
その蛇は意地っ張りで素直じゃないメデューサとは逆に、素直な感情を表す。
髪の蛇は私達メデューサの本心を写す鏡なのだ。
その蛇が私を批難するかのように、ガブガブと私自身に噛み付いていた。
つまり自分自身を責め、咎めている。
そう、彼のことをもう知らないと私は言っているが、本当は分かっているのだ。
自分が素直じゃないことがどれだけ愚かなのかを、そして、今回の喧嘩の原因は私にあることを……
彼は残業で帰宅が遅くなることが多い。
今日はとりわけひどく、へとへとになりながらも彼は仕事を終え、終電ぎりぎりで帰宅した。
彼の帰宅が遅いのは仕事だから仕方がないのは私も分かっているが、寂しいものは寂しい。
帰ってくるなり私は彼に文句を言った。
彼が帰って来てくれたことの嬉しさの裏返しでもあるのだが、可愛さあまって憎さ百倍と言ったところだろうか、私は彼にいろいろとまくし立てた。
だが、次の言葉はまずかった。
「他の女と遊んでいるんじゃないでしょうね?」
今、冷静に考えてみれば、どうしてこんなことを言ったのか自分でも分からない。
彼は誠実で恋人である私に優しい、浮気などする人間ではないことは私自身がよく知っている。
ラミア種ならではの嫉妬深さや彼がいない間の寂しさや不安感がいなまぜになって口を突いた言葉なのかもしれない。
だが言った理由は何にせよ、一生懸命遅くまで仕事して疲れて帰ってきたところにあらぬ疑いを威圧的な言葉でかけられたので、さすがの彼も堪忍袋の尾が切れたのだろう。
無言で彼は荷物を軽くまとめて今まで持っていたビジネスバッグに詰め、部屋から出ていこうとした。
「ちょっと……!」
突然の彼の行動に驚き、ペトラアイズ(石化の瞳)で彼を拘束しようとした私だが、振り向いた彼の目を見てウッと言葉に詰まった。
彼の目はペトラアイズなんかより遥かに冷たく、そして怒りに満ちていた。
魔力も何もない目なのに、私は思わず固まってしまった。
固まっている私を尻目に彼はそのまま部屋を出ていった。
これがつい先程の出来事だ。
「う、うぅう……」
先程の出来事を整理して思い出し、なんてことをしてしまったんだとベッドの上で私は頭を抱えた。
頭の蛇も今は落ち込んでいてへにゃりと力なくうなだれている。
本当は彼に「おかえり」と優しい言葉をかけたかった。
疲れきっていた彼を慰めたかった。
彼がぐっすりと眠れるように、自分の身体で包んであげたかった。
この部屋は彼が安らげる場所であり、そして私が待っている場所にしておきたかった。
「なのにどうしてあんなことを言っちゃうのよぉ、私ぃ……!」
まったくだと言わんばかりにこつんと蛇の頭が私のこめかみをつついた。
なぜあんなことを言ってしまったのか……メデューサならではの気性と、抑圧されていた私の欲が、私にあんな態度を取らせたのかもしれない。
あれこれ彼にしてあげたいという欲もあるが、我侭な欲と言うものも私にはある。
彼にギュッと抱きしめてもらいたかった。
寂しい思いをした事について一言でも謝って欲しかった。
そして……彼に抱かれたかった。
待っている間に燃え盛っていた情欲の炎をなんとかして欲しかった。
「ひどい、ひどいよぅ……私の身体、こんなになっているのにぃ……!」
身体を掻き抱いて私はベッドの上に転がる。
呆れることに、彼と喧嘩したという状態なのに、私の身体は発情したままであった。
身体は火照り、乳首はブラの中で硬く尖り、その奥の心臓はどくどくと早鐘を打っており、そして大事なところは少しでも指で開いたら粘液がこぼれそうな程に潤んでいる。
「はあっ……ん、はぅ……」
一人でに手が胸に伸び、ブラウスの上から揉みしだく。
それではすぐに物足りなくなり、ブラウスの裾から手をいれてブラジャーを退かし、乳首を転がしながら直接触った。
胸から電気が走ったような快感が全身に流れ、私は身体を震わせた。
「ん、あんっ! はぅ、んん!」
声を上げながら夢中になって私は乳首を転がし続ける。
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