夜風が涼しく、晴れた秋の土曜の夜……
大百足の木下晶子と恋人の吉田浩介は浩介の家の近くにある大きな公園、菖蒲田(あやめだ)緑地を散歩していた。
名前に緑地とついているとおり二人が歩くすぐ横からは腰ほどの高さまで草が生い茂っている。
そしてその草むらからは、秋虫の鳴き声が響いていた。
「いやぁ、秋だねぇ」
明るくのんびりとした調子で、浩介は手をつないで横にいる晶子に話しかけた。
そうね、とぽつりと晶子は答える。
声だけを聞くとぼそぼそとしていてそっけない印象があるが、つまらないわけではない。
むしろ逆だ。
晶子の口元には、恋人と過ごせる喜びを噛み締めていることで現れる笑みが、ほんのりと浮かんでいた。
リーンリーン…… ルルルルル…… コロコロコロコロ……チッチロリチッチロリ……
あらゆる秋の虫の鳴き声があちこちから響いている。
つないだ手にそっと力を込めて歩きながら、二人はそれらに耳を傾けた。
「あんまり虫には詳しくないけど……うーんと、スズムシとコオロギとクツワムシかな?」
「……とりあえず知っている秋の虫の名前を挙げていない?」
晶子のツッコミにバレたかと浩介は苦笑する。
「外れだったか?」
「……クツワムシ以外は合っている。あと、マツムシとカンタンの声が聞こえる……」
大百足の触覚をピコピコと動かしながら晶子は答える。
へぇ、と浩介はスラスラと答えた晶子に感心した。
「アキは詳しいんだな」
「……虫の大百足だし。ちなみに、コオロギはムカデの好物……」
「そ、その情報はいいからっ! 雰囲気が壊れる!」
苦笑して浩介は晶子の解説をそこで止めさせる。
晶子は沈黙し、代わりにつないだ手をギュッと強く握った。
しばらく二人は虫の鳴き声に耳を傾けた。
軽い夜風によって草原が軽くざわめき、その音に混じって虫の鳴き声が聞こえる。
「虫の鳴き声って……オスからメスの求愛の声よね……」
唐突にぽつりと晶子がつぶやいた。
急に何を言い出すんだと言った感じで浩介が片眉を掲げる。
「ああ、そうだな」
「つまりは交尾したいと言う、欲望の……んぷっ!?」
「やめろっ! それもまた雰囲気が壊れる!」
魔物らしい発言ではあるが、それを言ってしまってはせっかくの涼やかな虫の鳴き声も台無しである。
慌てて晶子の口を手で塞ぎ、浩介は苦笑した。
だがその顔が、一瞬だがすぐに苦痛に歪む。
彼女の尾にある顎肢が、浩介の首筋に刺さっていた。
どくどくとそこから毒液が注入されていく。
たちまちのうちに浩介の身体が脱力し、晶子に委ねられた。
「……そんなことない。虫たちは求愛し、恋をし、交尾し、子作りして、その子たちもまた求愛して、恋をし、交尾して子どもを作る……自然で、大事なこと……」
浩介の身体を抱きとめ、ムカデの肢でしっかりと拘束しながら晶子は囁いた。
他の肢でがさごそと這い、草むらを掻き分けて横道に逸れて入っていく。
そしてそっと浩介の身体を下ろして囁いた。
「聞こえるでしょう? 虫たちの求愛の声と……魔物たちの交尾の声が……」
耳を澄ましてみると……なるほど、虫たちの鳴き声に混じって、魔物と男の啼き声が混じって聞こえる。
晶子を見てみると、彼女の顔は羞恥と情欲で少し赤らんでいた。
それ以上は何も言わず、晶子は浩介のズボンと下着を剥ぎ下ろしていく。
彼女の毒液の影響で、浩介のペニスは交尾の準備を整えていた。
「あ、アキ……こんなところで……くっ!」
抗議しようとした浩介の声が、下腹部から沸き起こってきた快感によって遮られる。
晶子の口が浩介のペニスをくわえ込んでいた。
外から見たらスローモーなフェラチオで、彼女の口内でも舌の動きはゆったりとしている。
だがその舌は浩介の感じるポイントを敏感に捉えており、ねっとりと執拗にそこを責め立てていた。
「はぐっ、あ、ああ……アキ……!」
「んふふ……浩介も、良く鳴く……」
浩介の反応に晶子が笑う。
純粋に恋人が感じていることに喜んでいるのもあるが、その笑顔と目は肉食のムカデらしい、捕食者の素顔も見せていた。
再び肉棒が晶子の口内に消える。
ちゅっちゅと控えめな音を立てて晶子は浩介のペニスを吸い上げ、舌をねっとりと肉棒にからみつけて刺激した。
毒液と恋人による刺激で、あっという間に浩介の身体に限界が迫る。
「や、やめ……アキ、出るから……」
「ん、んちゅ……んん……んっ、んっ……」
浩介の懇願を無視し、それどころか晶子は頭を動かし始める。
舌での愛撫に加えて、くちびるでの刺激まで加えられた。
亀頭をレロレロと舌の腹が這い回り、舌の先端が裏筋や亀頭の淵をつついたり撫でたりし、そして竿がくちびるでしごき抜かれる。
彼女が頭を動かす度にくぷくぷと小さな破裂音が立ち、晶子がくぐもった声を上げた。
「くっ、ああっ……!」
耐えられるはず
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