エピローグ

翌日、昼休みの時間。
玲奈と風歌は会社近くの公園でランチをともにしていた。
「風歌、大丈夫? なんか表情と仕事ぶりは疲れた感じがしているわよ?」
「……『表情と仕事ぶりは』とわざわざ言うあたり、何かを感じるな……」
ふんっと鼻を鳴らし、ハムレタスサンドイッチに齧り付いて風歌は応える。
実際、疲れてはいた。
昨日は自分の意思やペースを無視されて何度も触手化した賢吾に蹂躙され、絶頂を味わわされ……
さすがの魔物娘でケンタウロスの風歌でも疲れが残っていた。
だがこうしていつもどおり出勤できているのは彼女が人間より頑強な魔物娘だからであろう。
加えて、恋人から精をたっぷり受けており、その影響で風歌の肌はツヤツヤしていた。
そんな風歌の肌を見てはっはーん、と玲奈は頷く。
「……ゆうべはお楽しみでしたね?」
「んぐっ!? んんんっ!」
突然玲奈に昨日のことを指摘されて、風歌は咀嚼していたサンドイッチを思わず喉に詰まらせた。
顔が赤くなっているがそれは苦しさよりも、羞恥心による物の方が大きい。
「あらあら、大丈夫?」
「んぐっ……突然なんてことを言うんだっ! そう言うお前こそっ!」
「ええ、昨日は私も彼氏とエッチしたわ」
何とかサンドイッチを飲み下した風歌が玲奈を睨みつけるが、玲奈は涼しい顔をしてレタストマトサンドイッチに齧り付く。
彼女もまた肌がツヤツヤしており、昨晩は彼氏にたっぷりと精を受け、気持ちよくして貰ったことを口にせずとも雄弁に語っていた。
「昨日は激しかったわ。ファスネット・サバトの薬を使って……」
「……え?」
風歌の顔がサッと青ざめた。
まさか玲奈もファスネット・サバトの人間(?)と会って、薬をもらっていたとは……
その偶然性に対する驚きと同時に、玲奈も触手に犯されたのかと考える。
脳裏に、触手に犯されて自分と同じようによがる玲奈を想像してしまい、そして夕べ味わわされた触手の感触を思い出し、昼間だというのに自分の秘部が濡れたのを風歌は感じた。
「え、って……もしかして風歌もファスネット・サバトの人と会ったの?」
「ああ、まぁな……サンプルで薬を貰ったから、彼に使ったんだ」
「あら、奇遇ね。私もそうなのよ。お陰で前も後ろも彼に貫かれて最高に気持ちよかったわぁ」
またやりたいわと爽やかに玲奈は笑ってみせる。
その様子からは昨晩の情事の疲れを微塵も感じられない。
「……大変じゃなかったか?」
軽く眉を寄せて風歌は訊ねる。
確かに触手による攻めは快感であったが、あれはかなり疲れた。
たまには良いとは思うが、そうしょっちゅうやりたいとは思えない物だ。
それなのに玲奈に疲れは見られない。
何か上手くいなすコツでもあるのだろうか?
風歌は玲奈の応えを待った。
「ええ、確かに二人同時に相手するのは大変だったわ」
「……え?」
「え?」
何か話が噛み合わない。
玲奈も触手薬を彼に使ったのではなかったのか。
だがどうも玲奈の口ぶりはそうではないらしい。
確認するために風歌は口を開いた。
「その……玲奈。お前は一体何の薬を使ったんだ?」
「分身薬だけど……」
そして玲奈は分身薬の効能と、昨日の夜がどうだったか、かいつまんで説明した。
話を聞いた風歌は手にサンドイッチを持ったまま思わず立ち上がる。
「な、何それっ!? そんな薬もあるだなんて聞いていないぞ!」
昨晩の、触手化した賢吾によるハードな陵辱が決して不満だった訳ではないが、そういうマイルドな物があるなんて聞いていなかった。
そんなショックを受けている風歌にさらなる追い討ちがかけられる。
「さて、風歌が使った薬は私が使ったものと随分違うらしいわね。詳しく聞かせてもらえるかしら?」
悪魔のような笑みを浮かべて訊ねる玲奈に、風歌は昨日の夜のことを、自身の感想も交えて語らされたのであった。
12/08/22 19:02更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)
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