「ウィンケル、最初に貴様が選ぶがいい」
アマゾネスの族長の言葉に私は戸惑う。
今回、私はアマゾネスの男狩りに傭兵として参加した。
与えられた役割は囮……本隊とは別行動をして、ターゲットを護衛している用心棒をターゲットから引き離すのが役目だった。
作戦は大成功。
ターゲットは全員、本隊のアマゾネス達に捕縛され、用心棒たちも囮部隊と本隊に挟み撃ちにされ、狩られた。
男狩りが終わり、戦利品の男を分け合っているのだが、囮部隊の中で私が他のアマゾネス達を差し置いて一番に男を選ぶ権利が与えられた。
「いいの?」
「ああ、貴様は客将だからな。我らアマゾネスは、礼は忘れぬ。別働隊の働きとしても素晴らしかったと聞いている。さぁ、好きに選ぶが良い」
「それではお言葉に甘えて……」
私は頭を下げ、縛られている男を物色していく。
今回のターゲットは旅をしていた反魔物派の富豪だったらしい。
豪奢な服を着たボンボン、雇われた屈強そうな用心棒……いろんな男がいる。
その中で、私は一人の少年に目をつけた。
ごく一般庶民が着ているような服を纏っている、痩せている少年だ。
恐怖に震えて目を潤ませている様子にダークエルフの嗜虐心がそそられる。
「この子が良いわ」
「ほう、可愛らしい子ではないか。良かろう、連れて行け。それからこれはついでの報酬だ。持っていくがいい」
そう言って族長は私に富豪が持っていた金銀財宝の一部を私に持たせた。
おそらく、ひと月くらいは遊んで暮らせるほどの量である。
だが確かに、族長の言うとおり「ついで」だ。
私たち魔物娘の何よりの報酬は男なのだから。
こうして私は私の奴隷候補を連れ、意気揚々と故郷に凱旋したのだった。
その日の夜……
故郷に向かう途中で私と少年は宿に泊まった。
魔物娘のために、いくら嬌声を上げても何をしても迷惑にならない、防音魔法が施された宿だ。
「うふふふふ……」
ランプの明かりを消し、私は笑う。
今からこの少年を私の奴隷として調教する……
何も知らないこの無垢な少年を、私好みの男に……そう思うだけで私の股間が潤んでくる。
夜目にも、彼がこれからのことに対する恐怖に震えている姿がダークエルフの本能をくすぐった。
私はダークエルフの魂とも言える鞭を取り出す。
そして少年に、これから行われることを知らしめるために、鞭で床を打ち据えた。
「ひいいいいいいっ!?」
尋常ではない悲鳴が少年の口から上がる。
私は面を食らった。
男を調教する術は故郷で学んでいる。
父などを練習台に鞭などのあらゆる調教の技術も身に付けていた。
母や姉、近所の人など、他のダークエルフが男を調教する様子も見学している。
そういうわけであらゆる男がダークエルフの調教によって奴隷として堕ちていく様子を一から見ているのだが、このような反応をする者は初めてだ。
「やめて、やめてぶたないで……やめてやめてやめて……」
うわ言のように少年がつぶやき、怯えていた。
まだ調教されていない男は誰でも最初は鞭で叩かれることを嫌がり、やめるように泣き叫ぶ。
だがやがては鞭の快楽を知り、奴隷として、マゾヒストとして堕ちていったものだった。
目の前の少年も、言っている言葉はその男たちと同じである。
しかし彼は調教される喜びを知らないから拒絶している訳ではなさそうだ。
『何かが違う……!』
私の頭の中で警報が鳴り響いていた。
このまま鞭を振るってはいけない、振るったらこの少年は壊れる……そう叫んでいる。
私たちはあくまで「調教」するのであって「壊す」ことはしない。
奴隷を壊してしまうのは、それは調教失敗であり、ダークエルフとして恥ずべきことのひとつだ。
どうするべきか困り、私は鞭を振り上げたまま固まってしまう。
「やめて、ぶたないで……う、ううう……」
少年はまだ怯えている。
「……」
バチンっ!
無言で、もう一度床を鞭で打ってみた。
「ひいいっ!?」
少年の怯えが強くなった。
その様子に私の中である一つの考えが浮かぶ。
『……もしかして、この子は鞭の味を知っている?』
それを考えると、いっきに私の頭の中に、少年の情報が蘇ってきた。
今回の男狩りのターゲットは反魔物領の富豪だった。
ターゲットの団体の中にいた男たちは、富豪、その息子たち、用心棒、そしてこの少年……
富豪と息子たちはいかにも金持ちらしく、いい服を着ていた。
用心棒とこの少年はそうではなかった。
用心棒たちは皆、屈強な身体つきをしていた。
だがこの少年はおよそ用心棒も務まりそうにない、痩せた身体だ。
『……少なくとも、この少年は富豪の息子ではない。かと言って、用心棒でもない……』
この少年を選ぶときにはまったく気にしなかったことを、頭の中に列挙し、整理していった。
糸くずのようにこんがらがっていた謎が少しずつ解されていく
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