毎日毎日単調な授業、そして窮屈で不快な満員電車……そろそろこんな高校生活にうんざりしていた。
ゴールデンウィークも終わったと言うことが、倦怠感をさらに掻き立てる。
僕こと新治 翔太(にいはり しょうた)は朝の満員電車に突撃しながら顔をしかめていた。
だが、そんな俺でも通学電車はちょっとだけ楽しみにしている。
良く同じ時間に電車に乗るアヌビス……
サラサラしてそうな長い髪、すべすべしてそうな色黒の肌、仕事ができそうなキリリと引き締まった顔、パンツスーツが似合うスレンダーなルックス、そしてほのかに漂う香水……そんな彼女を見るのが俺の通学時間の楽しみなのだ。
見ることができたらちょっと高いテンションで授業に望むことができる。
もっとも毎日同じ電車に乗れる訳じゃないし、電車はいつも満員だから状況によっては同じ車両でも見ることができなかったりするけど……
そして今日は彼女が見えなかった。
『今日はいないのか……』
電車のドアが閉まる音がする。
これで今日はあの人がいないのは決定的だ……いや、待った。
僕の鼻腔を何かがくすぐる。
この香りは……
「私を探しているかしら?」
低く柔らかい声が後ろから僕の耳をくすぐった。
声は初めて聞いたけど、この香りは、この雰囲気は……
「あっ……」
名前を呼ぼうとしたけど、何も言えなかった。
彼女の名前を知らないのだから……
だが、彼女が続けた言葉が、僕が思っていた人であることを裏付けた。
「いつも私のことをチラチラと見ていたわね?」
「す、すみません……」
「ふふふ、まぁ見られて悪い気分ではなかったわ」
僕の耳元で彼女はくすくすと笑う。
「菅谷奏よ、よろしく」
耳元でアヌビスのお姉さんは名乗った。
そうか、菅谷さんって言ったのか……
憧れの女性の名前を聞くことができ、僕の心は踊る。
だが、それを邪魔する者が現れた。
お尻が何かむずむずする……
くすぐったい感じが僕の尻を包んでいた。
それが何か確認しようにもこの混雑では振り向く事も不可能だ。
電車は寿司詰めで振り返ることは愚か、腕を動かすこともままならない。
振り払おうと、なんとか手を尻の方へ持っていかせようとしてもダメだった。
そうしている間にそのむずむずした感じに動きが加わった。
僕の尻の膨らみの上で円を描くような動きだ。
『え、えええっ!?』
さすがにこれは何か偶然で起きるはずがない。
間違いなく、誰かが、私の尻を、意志をもって、触っている。
冗談じゃない、僕は男だぞ!?
男の尻なんか触って何が楽しいんだ!?
触り方からして、僕がスカートを穿いていないことだって分かるはずだ。
なのにその手は僕の尻を撫で回し続けている。
『やめろ! やめてくれ!』
そう叫びたかったが、こんな大勢の人(魔物娘もいるけど)が乗っている電車の中でいざ叫ぼうにも、声が出しづらい。
痴漢されている女性の気持ちが少しわかった気がした。
だが、嫌なものは嫌だ。
僕は自分のお尻を触っている手から少しでも逃げようと身体を捻った。
「おや? どうかした?」
菅谷さんが声をかけてくる。
最悪だ。
痴漢されているところを憧れの人に見られたくない!
「い、いやぁ……ちょっと痒くて……」
「おしりが?」
「え? ええ、まぁ……えっ?」
急に具体的に尻のことを言った菅谷さんに僕は違和感を覚えた。
どうして僕が今、尻がむずむずしていることが分かる?
そう言えば、菅谷さんの声はどこか楽しそうだ。
『も、もしかして……!?』
あんまり気は進まなかったが、僕は触られている尻に意識を集中させる。
すると、尻を触っている手が、人間の手じゃないことが分かった。
何かぷにぷにしたものが中央にある。
感覚が鈍い尻だが、そのくらいは分かった。
『これは、肉球? だとすると……!?』
立ち位置的に導かれる答えは一つしかない。
「ちょ、菅谷さんっ! 何しているんですか?」
「あらら? バレちゃったかしら?」
くすくすと菅谷さんは笑う。
後ろに立つ彼女の動きに注意してみると、僕の尻を触るためにもぞもぞと肩を動かしているのが分かった。
もう疑いようがない。
僕の尻を触っているのは菅谷さんだった。
「や、やめてください! こんなところで……」
「ふふふ。なら『こんなところ』じゃなかったらいいのかしら?」
僕のヒソヒソ声の抗議も、菅谷さんは笑って聞き入れてくれない。
それどころか、手の動きをさらに大胆にする。
肉球で器用に尻の膨らみを撫でながら、一本の指で僕の尻の割れ目を撫で出した。
時々その撫でている指にクイッと力が込められる。
「うっ……」
その指先は確実に僕の尻穴を捉えていた。
なんとも言えない快感に僕は声を漏らす。
ぐぐぐ〜……
電車がカーブを曲がり、重心が移動する。
その拍子に、僕と菅谷さんの身体がより密着
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