Bright Future

「くはっ!」
水魔法の攻撃を受け、ヴァンパイアは膝を折る。
「勝負あったな!」
彼女を取り囲むのは3人の人間と1体の精霊・・・
3人はそれぞれ、戦士のラングレー、盗賊のコゼット、魔法使いのハンスだ。
そして精霊の名はミスティ、ハンスが使役するウンディーネである。
「確かに・・・よくぞ私を倒した」
崩れ落ちたままヴァンパイアは顔をあげ、3人と1体を見る。
その顔がふと笑顔が浮かんだ。
あまり気持ちのいい笑みではなかった。
「だが私には見える・・・私がいなくなってもこの地は荒れる・・・いや、それどころか私がいた以上に荒れる。それも原因がお前たちのうちの誰かでな・・・!」
「黙れ! 戯言を言うな!」
ハンスが目をむいて怒鳴るが、ヴァンパイアは笑みを崩さない。
「私は舞台を降りよう。この地が荒れ果てていくその様子を舞台袖、闇の世界よりのぞかせてもらおう・・・ふふふ・・・あーっはっはっはっは!」
笑いながらヴァンパイアの姿は風に吹き散らされるかのように掻き消えた。
「やった・・・! ついにこの土地の大地を腐らせていたヴァンパイアを倒したぞ!」
ラングレーが勝利の雄たけびをあげる。
「でも、ヴァンパイアを倒してすぐに土地が元に戻るってことはなさそうだね・・・どうするの? ハンス・・・いや、もう王子って呼んだほうがいいかな?」
コゼットがハンスに訊ねる。
実はハンス、もとはこの地方の第二王子である。
しかしヴァンパイアが現れたことによって兄と父は魔界に連れ去られ、自分を始め家臣は追放され、国の大地はヴァンパイアが放出する強力な魔力によって腐っていった。
ヴァンパイアから奪われた国を取り戻すために仲間を探し、ラングレーとコゼットと組んでウンディーネと契約し、今に至る。
「魔力というものは永久にその場にとどまるものではない・・・放出している者がいなくなれば、徐々に浄化される・・・そうだよな、ミスティ?」
「ええ、そうです。この近くの森にある私の泉も、彼女の魔力による侵食を免れるでしょう」
ハンスの問いにミスティは静かに頷いて答えた。
「そんなことは後にしようぜ! 今日はアイツが残していた財宝で、ここに戻ってくるハンスたちの家臣と一緒に大宴会だ!」
ラングレーの提案に一同は歓声を上げた。


こうしてその日の夜、大宴会が開かれた。
国を救うこととなった3人と1体は当然たたえられる。
そして宴会に参加した人間はこの国の未来に思いをはせた。
まだ大地は腐っていて、人が住むのは楽ではない土地だが、なんとかなる。
この宴会の明るさでみんなそう思っていた。


明るい宴会であったが、中心であったラングレーとコゼットが酔いつぶれてしまったことから少しずつ静かになり、お開きとなった。
だが、ハンスとミスティの宴会はこれから幕を開ける。
ハンスのものであった寝室に二人で入った。
「ここがハンスの部屋・・・」
「・・・思ったほど荒らされていないな。あのヴァンパイアにはこの城は広すぎたと見える」
長い間留守にしていたというのに、いつもどおりといった様子でハンスは服を脱いだ。
それを椅子にかけ、寝巻きは着ずに下着だけの姿になってベッドに腰掛ける。
「普通ならメイドが掃除やベッドメイキングをやってくれるのだが・・・今日はナシだ、すまない」
「いいえ、全然構いませんわ」
ミスティが微笑んでハンスの隣に腰掛けた。
ハンスの中でちょっと悪戯心が湧く。
「まぁ、たとえベッドメイキングされても今夜はすぐに乱れてしまいそうだけどな」
「もう・・・!」
案の定、ミスティは軽く頬を染めてそっぽを向いた。
そんなミスティの顎を掴んでハンスは自分の方に向けさせる。
そしてその可憐なくちびるを奪った。
ミスティも眼を閉じてそれを受け止める。
しばらく部屋には二人のくぐもった吐息と水音だけが響いていたが、どさっと音がして止まった。
『なぜだろう・・・?』
ベッドに共に倒れこんでキスを中断し、ミスティの全身を舐めるように見ながらハンスは考える。
精霊であるウンディーネは服を着ない。
戦闘の時も裸だ。
宝剣などに似た芸術品のような美しさこそ漂わせるものの、そのときは「魅惑的」という言葉は似合っていない。
『しかし、ベッドの上だとなぜこんなに魅惑的に見えるのだろう・・・?』
雰囲気の問題なのだろうか?
ミスティも普段は惜しげもなく裸体をさらしているのに、ハンスの見方に気づいて身体を縮こまらせるようにして恥じらいを見せた。
そんなミスティのしぐさに焚きつけられ、ハンスは再びくちづけをしながら愛撫を始める。
ミスティと肌を重ねるのは初めてではない。
契約のときに交わり、ときどき宿に泊まったときに精を与えるために交わり・・・しかしいつしかその行為には「契約」とは違う要素が混じっていった。
「んっ! はふっ
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