ある意味お楽しみ、ある意味大仕事、忘年会……
今年は、福来観光の企画・営業課はとある片田舎で忘年会をやるらしい。
そこのゴルフ場でゴルフをしたのち、近くの宿で宴会がある。
どちらも福来観光の姉妹社、福来グループの子会社であるため、予算も抑えられるのが魅力だ。
もっとも、参加費として私たちはいくらかお金を取られるのだが……それでいて参加を強要される。
ある意味、仕事だからだ。
正直、忘年会など私にとっては何も楽しみはない、面白くないイベントだ。
私はゴルフができないから、課長に付いてキャリーを務めるだけ。
酒は嫌いじゃないけど、大勢で飲むより静かに飲む方が好きだし、ビールよりはジントニックなどのお酒が好きだ。
二次会などにカラオケがあったとしても、何も歌えない……
私にとってはお楽しみな要素は皆無で、もっとも辛い仕事のうちの一つであった。
しかし、今年は少々事情が違う。
これが終われば吉田と……部下で恋人である彼と交われる、お楽しみがある。
私は妖狐の金田やアオオニの大丸と同室だが、ご丁寧にも彼女達は別の部屋で寝るらしい。
少し前、宴会前の風呂に入っていたとき、向こうからその約束を取り付けてくれた。
だから我慢して、普段から仕事を押し付ける腹立たしい課長のキャリーも務めたし、今も宴会で課長の酌をしている。
だが……
肝心の吉田は他の男と一緒に、宿の従業員の女性に目が行っていた。
その従業員は男性社員に囲まれてちやほやされていたが、吉田がそのグループの中で一緒に盛り上がっていたのだ。
従業員の女性はなぜか人間のふりをしているが、その正体は稲荷だ。
このホテル、福来ホテル・かみおりの宿には中庭に稲荷神社があるのだが、その稲荷神社の主かその娘と思われる。
尻尾はおそらく3本くらい……実際に見たわけではないので分からないが、同じ魔物であればそのくらい分かった。
確かに彼女は可愛い顔をしている。
他の男が盛り上がっている中、恋人である私に気を使ってむっつりと無反応でいるのも、賢い手段ではないだろう。
だが、その盛り上がり様はないんじゃないだろうか……
溜飲を下げるかのようにビールを煽る。
私らしからぬ飲み方だ。
そのとき、稲荷がリクエストに応えて何か言ったのだろう。
男たちがさらに盛り上がる。
その中には吉田もいた。
「……っ!」
私の中で何かが切れた。
「俺、ちょっとトイレ行ってきます」
ちょうど吉田がトイレのために席を外す。
私もそっと席を外し、彼のあとを追った。
「あれ、みどりさん? みどりさんもトイレですか?」
トイレから出てきた吉田を捕まえた。
いつもどおりの爽やかな笑顔で私に訊ねる。
おそらく、彼は私を怒らせていることに気づいていないし、原因も分かっていないだろう。
怒らせた原因の行動は悪気があってやっているわけでもないし、周りの調子に合わせていただけなのかもしれない。
だが、その悪気がないのが余計に許せない。
私は彼の浴衣の首根っこを捕まえた。
「えっ、みどりさん……!?」
「……」
無言のまま強引に私の部屋に引きずる。
そのまま、敷かれていた布団の上に彼を転がした(ちなみに布団はご丁寧に2人分だけ敷かれていた)
「みどりさん……?」
「……何、あの稲荷への態度?」
「稲荷? 態度?」
吉田がきょとんとした表情をしている。
とぼけた様子はない。
従業員の正体にも気づけていないし、私が怒っている原因も分かっていないようだ。
「さっきの従業員、稲荷……」
「あ、そうなんですか」
「『そうなんですか』じゃない。何なの? あの稲荷ににやにやしちゃって……」
ここまで言われて、ようやく吉田も私が何に対して怒っているのか感づいたのだろう。
顔が申し訳なさそうに曇る。
「いや、でも……」
「言い訳は聴きたくない」
私は鎌を鞘から抜き放った。
「……えっ?」
吉田の顔が青ざめる。
次の瞬間、彼が身にまとっていた旅館の浴衣は私によって細切れにされていた。
「わーっ!? みどりさん、旅館の物を裂いちゃうのはまずいですって!」
「黙って……」
言いながら私は彼を押し倒す。
彼の性器は緊張やちょっとの恐れからか、まだ勃っていなかった。
「……あなたが、他の女に目移りしないよう……徹底的に刻み付ける」
「あの、みどりさん、酔って……んんっ!?」
うるさい口を私の口で封じる。
ああ、確かに私は酔っている。
ハイペースで飲んだアルコールが、私の嫉妬心と情欲をさらに掻き立てていた。
宿の浴衣に包まれた身体が火照り、ショーツが冷たく濡れているのを感じる。
こうなったのは誰のせい?
目の前の、愛おしくて仕方がない、だからこそ今は腹立たしい、男のせいだ。
心に突き動かされるまま、私は吉田のペニスを握る
さっきまで勃っていなかったのに、いつの間にか硬く
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