現代サバイバル!-いつもどおり-

朝、いつもどおりに目を覚ます。
いつもどおり下着を身に付け、いつもどおりハニートーストとハムエッグとコーヒーの朝食を済ませ、いつもどおりダークグレーのスーツに身を包み鎌に鞘をして、家を出る。
『いつもどおり、か・・・』
いつもどおり満員電車に揺られながら、今日も人に振り回されて大変な一日になるであろうと予測しながら、私「梅軒 みどり」は心の中で苦笑を漏らした。
一週間も折り返し地点、木曜日の朝だ。


始業の時点で早速問題が起きた。
一人、無断で来ていない人がいる。
アオオニの大丸 静香だ。
理知的で仕事もできる、この営業企画課の中では数少ない主力の一人なのだが、酒癖が悪いという欠点がある。
「はぁ・・・」
ため息をつき、各社員に今日すべきことなどを伝えて解散したあと、一人欠員がいることを課長に報告する。
案の定、ネチネチと文句を言われた。
人の上に立つ者の宿命とはいえ、自分のことじゃないのに自分のことのように責められるのはやはり慣れない・・・みぞおちのあたりが痛くなる。
私をそんな状態にさせている張本人は11時にようやく出勤してきた。
遅刻したから大慌てで来たのか、化粧はほとんどされていない。
しかし化粧をしていなくても肌にはツヤがある。
「・・・どうして遅刻したの?」
理由は訊かなくても分かっているが、訪ねた。
「本当に申し訳ありません。昨日、合コンで飲みすぎた上に男のコを連れて帰って・・・」
予想通り、アオオニらしい失態だ。
ため息をつき、二言三言注意して仕事に行かせた。
気が滅入るが、これはまだ序の口だ。
デスクの隅に置いてある飴玉を一つ口に頬張り、気を引き締め直して仕事を再開する。


時計が3時を回った。
部下からのあまり芳しくない報告にため息を付く。
そしてさらに一人報告書を提出していないことにまたため息をつく。
「またか・・・誰か、金田がどうしているか知らない?」
「あ、金田さんなら給湯室じゃないですか?」
私の質問に男性社員の一人が答える。
『またか・・・』
頭が痛い・・・眉間を軽く揉みながら私は立ち上がった。
果たして、妖狐の金田 美鈴は給湯室にいて、男とイチャついていた。
そっと背後に忍び寄り、金田の後頭部に軽く一撃を放つ。
「痛っ!? ちょっと係長〜っ、今いいところだったのに何するんですか〜!」
頭を押さえて涙目になりながら金田が文句を言う。
「・・・報告の時間よ」
「え、あ、すみませ〜ん。報告書は机にあるので、それを持っていってください〜。私はこのコと・・・ひゃう!」
なおも秘事を続けようとする金田をどつく。
「仕事、して・・・」
「う〜、分かりましたよぉ」
のろのろと金田が出ていく。
「あなたも、仕事に戻ったほうがいい・・・」
「は、はい!」
逃げるようにして金田に弄ばれていた男性社員が給湯室から出ていく。
雰囲気から新入社員だろう。
名札はチラッとしか見えなかったが、総務課所属であることは分かった。
『総務課から苦情が来なければいいけど・・・』
不安を押し流すように、給湯室の水をコップ一杯煽った。


6時・・・定時は5時だが、営業企画課はそれが守られることは少ない。
国が口先でなんと言おうと、サービス残業が当たり前なのが現場なのだ。
それでも最近は私の係の社員も士気が上がってきて、この時間になれば帰ることができる社員も増えてきた。
私もこの報告書をまとめてしまえば帰ることができる・・・
「梅軒ちゃ〜ん」
そのとき、課長の猫撫で声が聞こえた。
悪い予感しかしない。
ため息や舌打ちをするのを堪えて課長の方に向き直る。
「この書類のデータを確認して、優先順位をつけてソートをして、それをまとめた物を福来ホテル本社の方に送って欲しいんだけど〜」
課長の手にはA4で200枚ほどの書類・・・
「・・・いつまでですか?」
「明日の正午まで!」
ざっと書類に目を通すと、6時間はかかるだろう。
今日のうちに半分はやっておかないと終わりそうにない。
『つまり、今日は9時まで残業か・・・』
もう少しで帰れると思っていたところの残業のため、脱力感に襲われる。
加えて気になったことが・・・
「・・・一昨日受注されたものですが、なぜ今?」
「いや〜、俺も忙しかったからさ〜」
理由にならない。
課長自身も部下に同じ言い訳をされたら叱責するはずだ。
それをへらへらと私に平然と言ってのける。
『なぜ上司のここまでのミスを私が処理しなければならないの・・・』
どちらにしても、私に拒否権はない。
「分かりました。明日の正午までですね?」
「やってくれるの!? ありがと〜! いや〜、梅軒ちゃんマジ天使だわ〜! というわけでよろしく!」
軽い足取りで課長は去っていく。
その私の苦労や自分のミスをなんとも思っていなさそうな仕草に、私の中でつ
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