狩られるは狐か山犬か

「動くな」
「ひっ!」
メイリンはマミーの背中にぐいっと銃口を突きつけて鋭く言う。
銃口は突きつけたらすぐに間合いを取ってはなれた。
ずっと銃口を押し当てていたほうが精神的に重圧をかけるという面では効果的だが、間合いを読まれて反撃を喰らってしまう恐れもある。
相手の動きを止めるというのが目的であるならば、一瞬銃口を突きつけていつでも打てると言うことをアピールさえしておけば、それで充分なのだ。
相手が両手を挙げて跪いたところに拘束具を使って拘束し、目立たないところに転がす。
「じゃ、大人しくしていてねん♪」
それだけ言い残し、メイリンは石造りの遺跡に似合わないチャイナドレスを翻して疾走した。


この任務は潜入任務(スニーキング・ミッション)だ。
無駄な接触は避けなければならない。
また、相手は悪の組織と言うわけでもないので、殺すわけにもいかない。
メイリンは時には隙をついて駆け抜け、時には銃を突きつけて拘束し、時には段ボールの中に潜んで警備のマミー達をやり過ごした。
そしてついに遺跡の最深部に到達し、『ファラオの目』を見つけた。
「よし、これを持ち帰ってミッション・コンプリート♪」
メイリンが壁にはめ込まれて飾られているファラオの目に手を伸ばしたその時
「待て、女狐! それを持ち出すことはならぬ!」
凛とした声が後ろから響く。
振り向くとそこには遺跡の管理をする魔物の代表格、アヌビスが立っていた。
『くっ、とうとうバレたのね・・・しかもよりにもよって、アヌビスが相手・・・』
メイリンはくちびるを噛む。
どうしようか逡巡していたが、それより先にアヌビスが動いた。
「とりあえず、お縄につくがよい」
魔法を使ったのか、アヌビスがすっと伸ばした手の先から縄が飛び出てメイリンの手首に、身体に巻きついて行く。
「こんなもの・・・!」
色仕掛けで情報を盗み出すのがメイリンのメインミッションだが、捕まった時の対処くらいはお手の物だ。
縄抜けをし、身体に巻きついているロープを太ももに装備していたナイフで切る。
「ほう、拘束された方が楽だったのに・・・少々痛い目を見てもらう必要があるな」
「あ〜ら、それは私のセリフよ」
アヌビスが錫杖を取り出し、メイリンがハンドガンをかまえる。
「はぁ!」
アヌビスの錫杖から炎の玉が放たれる。
だがメイリンはそれを横に飛んでかわした。
「野球選手のボールの方が速いわよ!」
そう叫んでハンドガンの引き金を引く。
しかし弾はアヌビスの目の前で火花を散らして消えた。
「なんですって!?」
「ふん、はんどがんなどと言う現代のおもちゃなど、相手が構えた時にバリアを張ればいいだけのこと」
目をむくメイリンに対してアヌビスは鼻を鳴らす。
「くっ!」
あきらめずに引き金を今度は3回引いてみる。
だが、撃ち出された弾は3発ともアヌビスに当たる前にはじけ飛ぶ。
「無駄だと言っているだろう」
「・・・何回か攻撃したら壊れたりしないかなと思ったのよ」
「ふん、ぐれねーどらんちゃーとか言う物にも耐えたものだぞ、このバリアは」
得意顔で言うアヌビスにメイリンは冷静に分析した。
『つまり、手持ちの火器じゃどうしようもなさそうね。でもバリアを張っている最中に攻撃してこなかったところを見ると、攻防同時には使えないみたいね・・・』
今もハンドガンをかまえているメイリンに対して防御の構えを解く様子はなさそうだ。
相手が攻撃してきたところを狙って早撃ちをすれば倒せるのかもしれないが、あいにく戦闘が専門ではないメイリンは、早撃ちはできない。
『だとしたらどうしよう・・・バリアも魔力を使うはずだから、いつかは切れるわよね。持久戦に持ち込む?』
そう考えたがすぐにメイリンはその案を否定した。
持久戦で勝てる保証がない。
何より、今はまだ来ていないがマミーの増援が来た場合、こちらがあからさまに不利だ。
「考えるより先に手足を動かせ」
突然、マミーが突進してきた。
先ほどは避けられた火球だが、至近距離ではなたれると避け切れる自信がない。
間合いを取るべく、メイリンは後ろに跳び下がったが
「甘い!」
アヌビスの錫杖がメイリンではなく、メイリンの足元の床を指す。
シュッ!
突然縄が現れ、メイリンの脚に巻きついて拘束する。
足をとられたメイリンは尻もちをついた。
「くっ・・・!」
メイリンはナイフを取り出して足に絡みつく縄を切ろうとする。
このままだと確実に火球を喰らって消し炭だ・・・いや、もしかしたら間に合わないかもしれない。
だが、待てども灼熱の炎はメイリンを襲わなかった。
代わりにメイリンを襲ったのは・・・
「はっ!? ふわあぁあ! か、身体がぁ!」
ぞくりと体中を走る快感にメイリンは身体をかき抱いた。
だが自分の身体を抱きしめると、その部分からさらなる快感が回
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