カクテルとお前とオレと大人(後編)

エレーヌの泣き声を聞いてオレは身体を起こした。
うう、やっぱりちょっとめまいがする・・・
「うう、本当はあたしも可憐な淑女に憧れたりしたわよ・・・マリンさんみたいなおしとやかな人になりたいと思ったりもしたわよ・・・」
それは無理だという言葉を必死で飲みこみ、オレはエレーヌの言葉に耳を傾ける。
そして初めて知った。
どうもエレーヌは酔うと泣き上戸になるらしい。
そう言えば、互いにベロンベロンになるまで飲んだことがなかったな・・・
オレに背を向けた状態でエレーヌは肩を震わせて泣きながら続ける。
「でも無理だった・・・ぐすっ、メロウの本能のせいで猥談を封じるなんてことができなかったの・・・ひぐっ」
本当に本能のせいで抑えられないのかと疑問に思うけど、それも飲み込む。
それでも・・・可憐な淑女に憧れていたと言うのは本音なのかもしれない。
エレーヌは親しみやすい性格しているのに、日常会話でもエロい言葉を混ぜる、魔物娘でもドン引きなほどの破廉恥ぶりなので、あまり友人は多いほうではない。
普段はメロウらしく明るく振舞っているが、意外と気にしていたようだ。
「うう・・・ぐすん、ううう・・・」
エレーヌが泣いている・・・彼女を慰めたくて、何か言ってあげたくてオレはフラフラと近寄り、後ろから抱きしめた。
「はうっ!? ユ、ユウタ・・・?」
「エレーヌ・・・」
口を開いて何か言おうとするが、酔っていて頭が働かず、何も言えない。
くそっ、酔っていると大胆なことができるが、こう言うときに何もできなくなってしまうのが難点だ。
「その・・・なんだ。みんな多分エレーヌのことを良く知らないだけだと思うんだ・・・」
いつも破廉恥なことばかり言っているように見えるエレーヌだが、実際はそうではない一面を多く持っていることをオレは知っている。
娘のユリアの世話をしているときのエレーヌは普段も真剣だ(もっとも、子守唄や話しかけている内容は破廉恥だけど)
教団の理不尽な行動のニュースに怒りを示しているときも、その怒りは真剣だ。
そして・・・『桃色恋愛話―コイバナ―』にかけている想いと執筆しているときの態度は真剣そのものだ。
「だからさ・・・あの本を成功させて、ただエロいだけじゃなくて、それを表現してみんなに届けることができるところを魅せないか?」
「ん・・・うん、そうだね。ちょっと酔いすぎちゃったみたい。ありがとう、ゆうた」
涙を流しながらエレーヌはにこりと笑った。
普段では見られないその姿に不謹慎ながらも胸がときめく。
「ねぇ・・・」
そんないつもとちがう、泣きはらして濡れているエメラルド色の瞳でオレを見ながらエレーヌがささやく。
「・・・抱いて、エッチして、セックスして」
・・・いくら泣き上戸でも、酔うとエッチになるのはエレーヌも変わらなかった。





「ん・・・はふ、あむっ、んちゅる・・・ユウタ・・・・ユウタぁ・・・」
キスをしながら切なげな声でエレーヌがオレを呼ぶ。
互いに、くちびるの端からよだれを垂らしながら激しく相手のくちびるをむさぼる。
キスの激しさは2年前、初めてエッチしたときと変わらない。
だが、キスの技術は2年前と比べてだいぶ上達したと思う。
昔は舌をからませたり歯列をなぞったりするだけだったが、今はそれだけではなく、舌同士をつつき合わせたり相手の舌を吸ってくちびるでしごいたり、くちびるは重ねずに舌だけを絡め合わせたり相手のくちびるを甘噛みしたり・・・
こんなふうにすることになったのも、二人でいろいろ「検証」したからだ。
エロに関して二人の意見が食い違ったときに俺達は「検証」と言って実際にそれを互いに試したりしている。
そうして互いの弱点やイイトコロを探っていった。
もちろん、「エロに関して」と言った通り、検証したのはキスだけじゃない。
抱きしめるために背中にまわしていた腕に仕事をさせる。
さわっと5本の指先でエレーヌの背中を撫でる。
「ふぅんっ!?」
ビクッとエレーヌの身体が震えた。
一見するとくすぐったがっているだけのように見えるが、実際はそうじゃないことを何度も身体を重ねたオレは知っている。
構わずオレは背中を撫で、もう一方の手はエレーヌの耳裏を撫でた。
「ふああっ・・・ユウタぁ、そんなにしちゃ・・・ああぁん・・・」
荒く、甘く、切ない吐息をつきながらエレーヌはオレの腕の中で悶える。
その悶えるしぐさがもっと見たくて、その可愛らしくも妖しい吐息をもっと聞きたくてオレはさらに大胆に動いた。
くちびる以外のところにくちづけを落としていく。
白くてすらりとした首筋に、ピンク色のソバージュの髪に、そして頬に・・・
今までエレーヌが流していた涙に吸い付き、さらに舐め上げる。
「んぅ・・・あり・・・がとう・・・」
涙をぬぐってくれたのが嬉しかったのかエレ
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