カクテルとお前とオレと大人(前編)

「おいしかったねー♪」
「ああ、カジュアルなお店にしてはなかなかだったと思う」
オレこと黒崎ゆうたはそんな会話を交わしながらシーフード鉄板料理の店から出た。
会話の相手はエレーヌ・・・オレの、その・・・嫁だ。
ピンク色のくせ毛の髪、子どもが生まれても美しく均整のとれた上半身、情熱的な赤色の鱗を持った魚の下半身・・・そう、エレーヌはメロウだ。
2年前、日本から突然この世界にやってきてまだ馴染めていなかったオレに親しく話しかけてくれたのエレーヌだった。
最初の会話が
「ねぇねぇ、そこのジパング人さん。『おまんじゅう』って言葉、なんかエッチに聞こえない?」
という、とんでもないエロ発言だったけどな!
だがお陰でオレは肩の力を抜いて彼女と話すことができた。
そして相手は猥談が好きなメロウで、当時のオレは性に対して興味シンシンだった18歳だった。
なんやかんやであっという間に仲良くなり、その・・・エッチもして、デキちゃって・・・
そして今に至る。
今日はオレ達の結婚記念日ということで、夫婦水入らずでデートだ。
ちなみに娘はマリ姉が預かってくれている。
『子を持つ魔物娘は母親であると同時に、女でもあるのよ。ちゃんと女を楽しまないとね』
マリ姉はそう言った。
日本ではちょっと考えにくいことだけど、まぁ世話になっていたディランさんとクレメンスさんのことも見ると、この世界ではそれが当たり前なんだなと思える。
まぁそんなわけで、今日はエレーヌとデートだ。
結婚記念日と言う大切な日なので、もっと高級なレストランに行っても良かったんだが、すこしカジュアルなお店にした。
だってねぇ・・・こいつ、昔と変わらず食事中も猥談をするからなぁ・・・高級レストランって雰囲気じゃない。
猥談自体はオレも嫌いじゃないし、こいつと話をするのは楽しいけど、雰囲気じゃない。
雰囲気じゃないと言えば・・・
「ねぇねぇユウタ。それ、いつまで持ってるつもりなの?」
エレーヌが指さす先には、オレが肩からバンドで提げている青い箱・・・元いた世界で言うクーラーボックスと言うやつだ。
魔法が中心のこの世界では仕組みこそ違うけど、機能は同じだ。
・・・何で色も似たような感じになるのかは少々疑問だけど。
「これは・・・ああ、次の目的地までな」
こんな色気のないものを持ってデートなんて雰囲気じゃない。
だが、どうしてもやりたいことがあるから仕方がない。
クーラーボックスを持ち直し、オレはエレーヌに手を差し伸ばす。
エレーヌはにっこりと笑ってオレの手に自分の手をからめた。



オレ達は夜の浜辺にやってきた。
入口の小屋でお金を払って浜辺に出る。
お金を払う理由?
それは・・・
「ん・・・ちゅ、はふ・・・ドレイク♪」
「っ・・・マライア・・・」
「ねぇねぇエドワード。このあたりが気持ちいいの?」
「や、やめ・・・そんなにしないでくれ・・・!」
さざなみの音に混じってあちこちで聞こえるちょっとエッチな水音と相手の名前を呼ぶ熱っぽいささやき声・・・
ここは水の都・シアーズに住む恋人たちが訪れていちゃいちゃする浜辺・・・
良く言えばプライベートビーチ、もっと言ってしまえば・・・ラブホだ。
あああっ、エレーヌの影響かオレもこういうことを抵抗なく口にしてしまうようになってしまった・・・!
そういうために作られたビーチなので、脱いでもナニをしても大丈夫な、良く出来たプライベートビーチだ。
音が少し聞こえてしまうのは、互いを刺激するためのものだとか・・・なんてことをしてくれるんだ。
「あれれ〜ユウタ、こんなところにあたしを連れてきてヤル気マンマンじゃない〜」
「まぁ、待て。それは否定しないけどその前にやりたいことがあるんだ」
ニヤニヤ笑って擦り寄るエレーヌを制してオレはクーラーボックスを下ろした。
そう、オレはこのために雰囲気をぶち壊しでこの青くて重たいクーラーボックスをエレーヌとのデートの間、ずっと持っていたのだ。
「あ、とうとうそれを開けるのね。しかもここで!? 中身は大人のおもちゃ!?」
「どーしてそーなる!」
まぁ、エレーヌの桃色お花畑な頭だったらそう言う風に考えるだろうなと予想していたけどな。
先に結論を言えば中身はまた飲み物、カクテルの材料だ。
あの運命の、オレとエレーヌの距離が一気に縮まったあの夜に飲み物を用意したように、今晩、オレはまた飲み物を用意した。
ミルクセーキと同じように、名前がちょっとアレな飲み物・・・名前だけなら高校時代から知っているものだ。
本当はあの夜に試しても良かったんだけど、あの時オレはまだ18歳だったからしなかった。
シアーズでは18歳からアルコールは飲んでいいんだけど、なんとなく元いた世界の意地と言おうか何と言おうか、オレは20歳になるまで待ってしまっていた。
「ねぇね
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