中心街から少し離れた、とある料理店に二人の姿があった。
賑やかな中心街の喧騒も聞こえない静かな場所にある店ではあるが、既に日が暮れているというのも相まって、そこそこ賑わっている。
二人は既に注文を済ませたようで、ゆっくり飲み物を飲みながら料理を待っている。
コレンの手元にはワインが、ルディの手元にはジンジャーエールが置いてある。
この国、リストビア国は法律が厳しく、お酒は20歳以上からとなっている。
しかし、法は厳しいがインフラ整備、医療教育などの設備が非常に高水準である事から、治安も良く国に対して不満を持つ者も少ない。
「じゃあ、僕たちの入団を祝って乾杯!」
「乾杯!!」
二人はキンとグラスを打ち付け合う。
すっかり仲の良くなった二人、笑顔で気楽に会話をしている。
こうやって二人できちんと向かい合って話をするのは、初めてであった。
「今日はお疲れさま。本当に君は強いね」
「いやいや、コレンこそ。最後あのオッサンが止めてくれなかったら、普通に負けてたと思うよ」
「そんな事ないよ、それに君は今回魔法を使わなかったじゃないか」
「あぁ、魔法制御がまだまだ下手だからな。最近やっと狙った所に魔法を撃てるようにはなったんだけどな〜」
とルディは困った様な表情をする。
コレンはそんな様子に笑顔を浮かべて話を聞いている。
「コレンもあれだけじゃないんだろ?戦ってる時もまだ余裕がありそうだったしさ」
とルディは尋ねる。
「うん、僕も魔術を使うよ。主に肉体強化系の魔法だけどね。だから魔法も使った時は、もう少し早く動けるかな。」
「あの正確さで、さらに素早くなるのか…恐ろしいな」
ルディは、実際に魔法を使用したコレンの事を想像し戦慄する。
コレン今度は頬杖をついてニコニコしながら、ルディの事をじっと見ながら聞いている。
そうしている内に、ウェイターにより料理が運ばれてくる。
運ばれて来たのは、貝の酒蒸し、パスタ、牛肉のステーキ、ドレッシングのかかったサラダであった。
このお店は、安価でボリュームのある料理を提供すという事で定評がある。
その上、貴重と考えられている香辛料もふんだんに使われている為に、味付けもしっかりしており香り豊かである。
とある国では財産とも変えられる程の貴重品である香辛料をふんだんに使用できるのも、料理を安く提供できるのも、国の流通が行渡っているお陰であろう。
「そういやルディ、君はどうして帝国軍に入ろうと思ったの?」
コレンは口にパスタを頬張りながらルディに尋ねる。
口一杯に料理を詰めているが、全く下品という訳ではなく作法もしっかりしており、何処か気品の様なものが漂っている。その様な気品を漂わせつつ口一杯に頬張るというギャップが、何とも可愛らしい。
その様子にルディは少し見蕩れていた。
(いかんいかん、コレンは男だぞ…)
急いで自分を取り繕い、コレンの問いに答える。
「俺の親父が帝国軍の兵でな、相当な活躍をしたみたいなんだ。俺もそんな親父に憧れて、同じ道を進もうと思ったのがきっかけかな。」
「ふ〜ん、そうなんだ。因みにお父さんは今も軍にいるの?」
「いや10年程前、つまり魔王が代替わりする前に魔物に捕まって拷問の末に死んだって聞いたよ。」
「そうなんだ、ごめん…嫌な事を思い出させちゃったかな?」
コレンはまるで小動物の様に縮こまり、質問が悪かった事を謝罪する。
「気にすんな、もうとっくの昔の事だしな。因みに俺の今の戦い方も当時の親父の戦い方を真似てるんだぜ。本当の凄い人みたいだったしさ、俺にとってはそんな親父は誇りだよ。」
「そっかそっか、良かった。あのさ、一つ聞いてもいい?」
どうやら、ルディは自分の父が魔物に殺されたという事に対して、別段私意は無いようであった。
ルディが笑顔で誇らしそうに父について語る様子に、安堵の表情を浮かべるコレン。そして、改めて恐る恐るといった様子で上目遣いで尋ねる。
「君はさ、魔物の事がさ…その、憎いとか本当に残虐な生き物だと思ってる?」
「う〜ん、そうは思わないかな。親父を無惨に殺したという事はやっぱり悔しいなと思うけどさ、その様な行動をとるのは魔物の性質だろ?だったら仕方ないなと思うよ。」
ルディは当時の魔物が人間を奴隷の様に扱ったり殺したりするのは、百獣の王ライオンが草食動物を殺して食べる様に仕方が無いと言い張る。
「そんな事言ったらさ、俺らだって生きる為に鳥、牛、豚を殺して食料として食べている。それに、戦争の際には魔物を捉えて拷問したり殺したりする奴もいるしさ。あいつらと俺らはやっている事は一切変わらないよ」
それは、教団の教えが布教している帝国軍に入ろうとする者にとってはあるまじき発言である。
教団の教えとは「魔物は邪悪な生き物
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