「さあー!今日は待ちに待った謝肉祭だ!各人ありとあらゆる生命に感謝を…」
「ウオッホン!魔物にはしなくてもかまいませんよ!」
「…感謝をしてカンパーイ!」
町長の声に合わせて乾杯の声が町に響き渡る。
町の人たちは一斉に酒の注がれたワイングラスを掲げ一気に飲み干した。
今日は町中の人たちが待ちに待った謝肉祭だ。
趣向としてはとしてはグラスを片手に酒を飲みながら各店舗の出店を楽しむと
いったものでこの日ばかりはこの町の人間は大いに賑わい別の町や、時には貿
易相手を招待してこの町を楽しんでもらうこともある。
教団の団長が余計なひと言を言ったせいで若干躓いたが今年も滞りなくスター
トした。
「よう、調子はどうだ?」
「おお!町のみんなが商会のみんなが家の酒を指定してくれたおかげで今年は
すっげー大変だった!」
私は乾杯の合図とともに友人のところへ足を運んだ。
笑顔な所を見るとどうやらうまくいっているらしい。
町の推薦があれば多少金額が上がっても大丈夫だろう。
自分の事のように私は胸中でほっとした。
「よく言うよ。それで潤ってるんだろ?」
「違いない違いない!ほら!あそこに今日の酒を量り売りしているからお前も
買ってけ!」
「わかった。うちもジパングのテンプラって言うの出してるから来てくれ…
おっと…後ろから『追っかけ』がきてるぞ。」
私は友人に振り向くように促す。
そこには町娘が酒の入ったボトルを持って立っていた。
この謝肉祭は男性の日ごろの苦労をねぎらうといった意味合いも持っており、
この祭りに参加する女性はからのグラスにお酒を入れて行くのが仕事になって
いる。
もちろん普通に参加してお酒を飲んでもいいし料理を楽しむのも大丈夫だが、
謝肉祭の間は女性陣は『追っかけ』となり男たちを酔いつぶすのが使命になる。
隙あらば男のグラスを酒を注ぎ続ける女性陣は酔っ払おうが、吐こうが、泥酔
使用が酒をひたすら注ぎに来る。
男たちは今日という日を楽しみにする反面いかに乗り切るかが試されているのだ。
「お疲れ様です!お酒をどうぞ!」
「こんな子供まで酒を注ぎに来るのか。」
友人は振り返ると少女の背丈に合わせてかがむ。
ビンと液体、計1.2キロのボトルが重たいのだろう。
少女はお酒をこぼさないよう一生懸命に震えながらついでいく。
「ありがとさん!これはお駄賃だ。」
「わっ!いいんですか!?」
「いいとも!なんてったってそれは家の酒だからな!お嬢ちゃんみたいな可愛
い子についでもらってくれたお礼だ!」
友人がポケットから小銭を取り出し小さな追っかけに手渡した。
少額だが子供にしてみれば大金だろう。
私は口元にグラスを当てながらその光景をぼんやりと眺める。
「わあ…!ありがとう!えへへっ!何買おうかな〜♪」
小さな背丈は元気よく頭を下げると靴から機嫌のいい音を鳴らしながらアップ
ルパイのカットが売っている店へ歩き始めた。
「羽振りがいいんだな。」
「ああ。今度、あの子お姉ちゃんになるんだよ。しっかりしているから大丈夫だ
と思うんだが、それでも妹ができたらもう甘えたりはできないだろう?」
「最後くらいは…ってやつか?」
お姉ちゃんか。
自分には二人娘がいる。
次女はまだ赤ん坊だが最近少しづつ母親に甘えるような行動をとるようになっ
てきてとてもかわいらしい。
だが娘の笑顔を見るたびに私は将来のことが不安になってきていた。
家庭は円満なのでそれほど問題はない。
問題なのは外部、いわゆる社会情勢の方だ。
あれから教団側は少しピリピリしたムードを漂わせ続けていた。
魔力を探知して転送先を特定することはできていたもののそこから魔物たちの
消息がぷっつり切れてしまうということを私は噂で聞いた。
仕事が終わり夕闇が終わりかけるころになるといつも教団の靴の音が外を闊歩
しているのが聞こえていた。
そしてアークインプが配っていた魔法陣のビラもさらに枚数が増えていたらし
い。
どれも噂でしかないがそれでも心当たりがある以上は迂闊に大胆なことはでき
ない状態だ。
「まあな。女の子ってたくましいよな。なんていうかこう…ちゃんと目の前の
目的が分かっているというか…」
「男は大望を見据え、女はそのプロセスを見据える。両方揃って子育てがよう
やくできるようになっているんじゃないか?」
「はは!どっちも気の長い話だな!」
友人がニヤリと笑いながらグラスを傾ける。
青黒い液体が芳醇な香りとともに喉をかけ下りた。
「そうだな。だから謝肉祭なんてのが必要なんだろう。」
「そうと決まれば次は…肉だ!あっちにバードンさんの鳥のもも肉ステーキが…」
「その前に行くところがあるだろう。ほれ。」
両手を屋台に伸ばした友人を私は
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