俺はリオ、旅人だ
昔は教団の人間だったが…まぁ細かいことは忘れた
今はあてもなく旅をしている
ある日、とある田舎町を訪れていた俺は、町外れに洞窟が発見されたという噂を聞いた
田舎町なので調査や探索をする人はいなかった
そこで俺は好奇心でその洞窟に行ってみることにした
そうして今、その洞窟にいる訳だが
おかしい
ワーバットやラミアがいてもおかしくないのだが
誰もいないし特に何もない
ここまでくるとつまらないな
そうして俺は特に苦労もなしに洞窟の奥にたどり着いた
洞窟の奥はやや広がっていて、一つの部屋のようになっていた
ふと、その空間に何者かの気配に気付いた
奥に誰か、何かいる
一見、見惚れそうな綺麗な顔付きだが髪が途中から蛇になっていて、露出度の高い服を着ているが、下半身は蛇のようだ
―――メドゥーサ
ラミアの上位種にあたる魔物
こっちに気付いたのか彼女は睨むようにこっちを見てくる
「アンタ…誰?ここに何の用?」
「俺はリオ。旅人だ。ここには興味本位で来た。ちなみにその奥には何があるんだ?」
彼女の後ろを指差し尋ねるが…
「特に何もないわよ。だから帰って」
綺麗な顔してるわりに対応が冷たいなぁ
きれいな花にはトゲがあるって感じか
何ていうか警戒されてる?
そんなこと言われると逆にやる気がでてくるなー
「しょうがない、じゃあ実力行使で通らせてもらう」
そう言って剣を抜き構えた
「ホントに何もないのに……仕方ないわね」
そういうと彼女は呪文のようなものを唱え始め、やがて無数の火の矢が現れ、一斉に飛んできた
「うわっ」
剣に鈍い衝撃が走ると同時に辺りに金属音が響き渡る
なんとか剣で弾くが、数が多く、全ての矢を撃ち終わる頃には何本か腕や足を霞め、赤く染まる
「よく防げたね。じゃあこれはどうかしら」
そういうと先程の倍以上の火の矢が彼女の周りに現れる
「……マジかよ」
唖然としている俺に彼女は言う
「今すぐ帰るなら撃たないであげるわよ」
「冗談だろ?来いよ!」
挑発され、少しムッとしながらも
俺は相手に向かって走り出した。同時に大量の矢が飛んでくる。俺は進行方向で邪魔になる最低限の矢だけを弾き、彼女の前に走り込み、剣を振りおろす。
が彼女は瞬時に後ろに下がりそれを躱した。
「ふぅ、今のを躱す……か、アンタかなり強いわね」
「そいつはどうも」
突然、辺りの空気が凍り付いたように静まる
「仕方ないか、恨まないでね!」
そして次の瞬間、彼女の目の色が変わり、辺り一面が全て石に変わった
だが
「嘘っ、なんで!?」
俺が石にならないことに対する驚き
その一瞬、彼女に隙ができた
ほんの数秒だったが
勝敗を決めるには十分な時間だった
俺は距離を積め、彼女の腹辺りに蹴りを入れる
そして、倒れた彼女の首元に剣先を向ける
「……なぁ、死ぬのは……………怖いか?」
ふと、浮かんだ疑問を尋ねた
「………別に、死んだって結局…………………」
「じゃあなんで泣いているんだ?」
そう、彼女は泣いていた
それも死に対する恐怖ではなく
どこか悲しげな涙だった
「・・・・・・私は・・・ずっと一人だった。話相手もいない、遊ぶ相手もいない。・・・・・・・・・そうやって誰とも会わないままで死ぬのかなって思って」
彼女の言葉は
ひどく寂しげだった
「……一人…………か」
剣をおろし、昔のことを思い出す
「俺もそんな時期があったっけな」
「えっ?」
「俺は昔『勇者』ってやつだった」
「勇者なら周りに人がいるでしょう」
彼女が言うことは最もだ
一般に勇者はそんなふうに見られてるだろう
けど
「勇者ってのはそんなにいいもんじゃない、周りから崇められたり、変に期待されたるし、戦場でもいつも一番危険な場所を任せられる。それに周りの人間として扱われることなんてほとんどないしな。特に、教団なんて最悪だ、アイツら俺を駒か一つの武器程度にしか思ってない」
そんな感じで嫌なことばっかだから俺は教団を抜け出してきた訳だ
「『勇者』なんて人であって人じゃないんだよ」
苦笑まじりに俺は続けた
「事情とか環境とか色々違うけど、ある意味俺とお前は似てるのかもな」
そういって剣を収める
「とりあえず俺は殺しはしないよ」
「どうして?アンタ、元勇者でしょ?」
不思議そうな顔で彼女が言ってくる
「元……な。今の俺には殺す理由もないし、そもそも俺は旅人だし」
そういって洞窟の奥を覗く、が彼女の言う通り何もない
「マジでなんもないのか。ちょっと残念だな。」
独り言みたいに言った後、俺は彼女に尋ねる
[3]
次へ
[7]
TOP[0]
投票 [*]
感想