穏和な彼女の暴走

「コウくんはもっと私を愛するべきだと思います」

「はい?」

仕事から戻った俺に対して彼女の第一声はそれだった

「いきなりどうしたの?」

「だからコウくんはもっと私を愛してださい」

イマイチ会話が噛み合わない

「いやいやいや、どうしてそんなことを言うか理由を」

いつもの彼女らしくない

というかなんか妙に顔が赤いし

「だってぇー、コウくんが私だけを見てくれないんだもん」




おかしい



絶対におかしい



普段ならお姉さんっぽくて母性本能MAXのこのエキドナのレーナさんが今、

尾を振りながらつぶらな瞳でこっちを見てくる。

まるで小犬のようだ

「な、何があったの」

口を尖らせ、人差し指の先と先をツンツンさせながら彼女は言う

「だってぇー、コウくん最近私を二日に一度しか抱いてくれないしー、それを友人に話したら「それって病気だよ」って言われるしー」

駄々をこねるように語尾を伸ばしながら彼女は続ける

「この前だってうちにリズさんが来た時、リズさんにデレデレしてたしー」

リズさんというのはレーナの古くからの知り合いのヴァンパイアのことである

「コウくんはもう私のことなんかいらないんでしょう」

目に涙を浮かべながら、いつかの時代のドラマのヒロインみたいなことを言っている

「と、とりあえず少し落ち着いて」

慰めるべきか、ツッコミをいれるべきか迷いながらもとりあえず安全策をとるが


「さわらないでください!」

尻尾で手を払われる

「どうせ、どうせ私なんか…」

床にしゃがみこんで地面に指で「の」の字を書いてる

あ、しっぽでも書いてる

なんか可愛い



しかしこれはどうしたものかなー


「ふぅ」と一息入れて


「そんなことないよ、俺はいつでもレーナが好きだよ」

背中ごしに自分の気持ちを伝える

「そ、そんなの嘘です!、だって、だってぇ」

レーナは泣きながら小さく震えている

まさに小動物だ

そんな彼女をそっと後ろから抱き締める

「嘘じゃないよ、俺はずっとレーナの傍にいる」

「ホントに?」

ゆっくりとこちらに向き直りながら彼女は不安げに尋ねてくる

「ああ、これから先、ずっとレーナだけを愛する。愛し続ける。約束するよ」

先程から赤かった彼女の顔がより赤くなる

多分俺はもっと赤いんだろうな

「私もぉ、コウくんを愛してるぅ、これからもずーっとぉ」

そういって彼女は俺を抱き締めてくる、全身で

「コウくん」

そうして目が合い

唇を重ねた







………そうして気付いた

「レーナさん、俺が帰る前になんか飲んでた?」

唇を放して彼女に尋ねる

「ふぇ?、べ、別に何も」



嘘だ



絶対に嘘だ



というか不自然に目を反らしている時点で嘘じゃないわけない

「レーナの口の中凄く甘ったるい気が」

しかも、どこかお酒みたいな匂いもする

「レーナさん、お酒飲んでないですか?」

「イヤゼンゼンノンデナイデスヨ」

「とりあえず目を見て話してください。じゃあそこに転がってるビンは何ですか」

「えっ、そんな、さっき片付けたはず」

「ゴメン、今嘘ついた」

「あぁ、ずるいです。誘導尋問なんてひきょーです」

テキトーにカマをかけたら見事にひっかかった

こんなとこもいつもの彼女らしくない

「はぁ、酔ってますね、完全に」

ため息混じりに俺は言う

おかしいと思ったら酒の所為か

「いや私全然酔ってナイデスヨ」

愚問だった

酔ってる人いっても意味がない言葉一位だったなこれ

「とりあえずレーナさんはベットに横になろうか」

「抱いてくれるんですか!?」

今日一番嬉しそうな目でこっちを見てくる

「いや頼むから今日は寝てくれ」

「むー」と頬を膨らませながら彼女は言う

「こうなったら強行手段です!」

「えっ?、ちょっ」

いきなり彼女に押し倒された

「ふっふっふっ、これでコウくんゲットです」


ダメだこの人…キャラ崩壊とかのレベルじゃない……早く、なんとかしないと


しかし全身を使って抱きしめられ、動けない

「ちょっと、レーナさん、落ち着いて」

「嫌です♪私だってコウくんのこと大好きなんです。コウくんが欲しいんです。欲しくて欲しくてたまらないんです。コウくんコウくんコウくんコウくんコウくんコウクンコウクンコウクンコウクンコウクンコウクンコウクンコウクンコウクンコウクンコウクンコウクン」

何とか説得を試みるが逆効果だ



というかもう無理だ



止められそうもない



つーか誰か助けて(泣


「それじゃあ頂きまーす♪♪」

そう言われた瞬間、俺は諦めた














〜〜〜〜〜〜〜
目が覚めるとコウくんのベットの上でし
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