再会≠出会い

彼女を殺めたあの日
訓練場に一人残された俺は
訓練場に残った彼女の剣を持ち、天に掲げ、誓った。
彼女をこんな風に変えた者、元凶である魔物を許さないと。


それから一年後、
以前は使うのを嫌っていたあの型を、
右手には昔からの相棒の剣を、左手には彼女が使っていた剣を持ち、二刀流の型に改良した。
そうして俺は自分自身を鍛え、何者にも負けない力を求めた。


気付くと俺は以前の彼女のような軍のエース的存在になっていた。
魔物の討伐では最前線を務め、慈悲もなく、ただ憎しみを込めて敵を斬り捨てる冷酷な存在。

こうしているうちに俺は「二刀流の魔物殺し」と呼ばれるようにさえなっていた。


しかし、いつしか抵抗しない者や、戦いを嫌う魔物さえ斬り、多くの血を流した。
魔物の血は人と変わらず赤色。
軍の人間はみな「流した分だけ悪を滅したんだ。騎士ならそれを誇りに思え」そういっていた。

だが、時折彼女の剣についた血がまるで誰かが流した涙のよう俺には見えた。




――魔物は本当に悪しき者なのか――
いつしか俺は戦うことに疑問さえ抱いき始めていた。







そんな中、俺はとある大国の教会に目を付けられ、そこの軍にスカウトされた。
俺はそれを承諾し、大国の軍に所属することとなった。
そうして、故郷を出て、一人大国にむかった。
大国の街は故郷の10倍はあろう広さであり、人の数もそれ相応であった。
この町に入って数十分、とりあえず明日から正式に軍に入隊することになり、今日は町を散策することに決めた。
武器屋な雑貨屋などの店、街のシンボルである教会などある程度見て回り、
最後に街の中央の大広場に来ていた。
広場には様々な年齢層の人がいて、木々や花々など美しい緑があり、穏やかな時間が流れている。
俺はベンチに座り、その光景を眺めている。
ふと、隣のベンチに座っている女性が目に入った。
自分と同じようにこの穏やかな光景を眺めている。
長い青色の髪、透き通るような青い色の瞳、清楚な顔つき







―――――――――――似ている――――彼女に


髪色こそ違うが幸せそうな目で辺りを見ているその笑顔は彼女にそっくりだった。

気が付くと、俺はその女性をじっと見つめていた。
こちらの視線に気付かいたのかその人は控え目な感じで俺に尋ねる。

「私に何かごようですか?」
「……いえ、………貴女はこの街の方ですか?」
普通に話そうとするがどこかぎこちなくなってしまう。
「いえ、ちょっとした理由で今日からこの街に住むことになりました。」
「へぇー、奇遇ですね、俺も同じです」


どうしてもこの人の話している姿が彼女と重なる。
頭の中で『この人は彼女じゃない、この人は違うんだ』そう言い聞かせるが、何故か否定出来ない。










「あの…私達…………前にどこかで会ったこと、ありませんか?」










――――――――――――――衝撃――――――――――
――――――――――何かを感じた





「あ、あの、すみません突然変なこと言って」
慌てたように女性が謝ってくる。
「あっ、いえ、別に大丈夫ですよ」
「でも………涙が」
「えっ」
言われて気付いた。俺の頬に涙が流れていた。
俺はあわてて涙を拭おうとするが止まらない。
「あれ、ハハッ、おかしいな、なんでだろ」
必死に涙を拭おうとする俺。女性は立ち上がって、俺の傍により、俺をそっと優しく抱き締めてきた。


「事情はよくわかりませんけど、泣きたい時は泣いてもいいんですよ」


『男の子でも泣きたい時は泣いてもいいんだよ』
昔、両親を失い、墓の前で『男だったらどんなことがあっても泣くな』という父の言葉を守り、
涙を我慢していた俺を抱きしめながら彼女が言った言葉。
優しくて、暖かい言葉。
そんな彼女も今はもういない。
――俺が殺した。



殺したという事実が、もういないという現実が俺の中で蘇ってくる。





優しい声と懐かしい感覚。ぬくもりの中で俺は子供のように泣きじゃくった。





―――――――――――――
「すみません、いきなりあんなことしてもらって」
あれから五分後、俺はだいぶ落ちついてきて、申し訳なさそうに言った。
「いえ、元とはいえば私の生ですから」
若干気まずい空気が流れる中、
ゴーン、ゴーンと教会の鐘が響く。
「あ、私、そろそろ行かないと」
「あのっ、引き止めてすみませんでした」
「いえ、気にしないでください。そうだ、最後に名前を教えてくれませんか。」
「俺の名前はシンです。」
「私はリアって言います。それではまたどこかで」

笑顔で挨拶をし、去っていく彼女。
俺は彼女の背中が見えなくなるまで俺はずっと見ていた。


その日俺は何かが始まるのを感じた。


次の日、俺は
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