一体、どれだけの時間眠っていたのだろうか
腕を天に向けて延ばし、固まっていた筋肉をほぐす
覚えているのは眠りにつく直前――あの忌々しい褐色肌・・・アイツに私は敗れてそれから・・・・
思い出すだけで腹が立つ。
私は眠りにつく直前自分自身に誓った。 『絶対に復讐してやる』と
「今に見てなさいファラオ・・・私の前に跪かせてやるわ・・・ふふふ・・・あーっはっはっは!」
す
・・・・・・・
とは言ったものの、普通に正面から戦う様では前回の二の舞だ。
かといって何か言い作戦があるわけでは・・・あれは・・・
十数メートル先に誰かが立っている。最初は奴の下部かと思ったが、この魔力は・・・
あちらに気付かれない様、ゆっくりと近づいていく、下半身が蛇である私にとっては音を立てずに近づくなど朝飯前だ。
少しずつ距離を詰めていくにつれ、姿を確認することができた。
白銀の鎧に包んだ若い男。青年というよりは少年のような顔つきで背も低く、鎧に身を包んだ戦士にそぐわない。反面、肌で感じとれる魔力は人間とは思えないほど高い。
人間たちでいうところの『勇者』というやつだろう。しかし、いくら『勇者』といっても所詮は人間、私どころかあのファラオにさえ遠く及ばない。
さて、どうしてくれようか・・・この場で後ろから襲えば簡単に始末できるけど・・・・
ここで、一つの考えが浮かんだ
そうだ、あの勇者と憎きファラオを戦わせ、消耗したところを私が不意打ちを仕掛ければ・・・
恐らく大したダメージは与えられないけれど、多少の隙は生まれるぱずだ。その隙を突けば・・・・ふっふっふ、我ながらいい作戦ではないか
「フフフ・・・・・あははは・・・あーっはっはっは!」
「・・・ッ!、誰だ!!」
思わず漏れた笑いが聞こえたのか、こちらに振返り、剣を構える。
(気付かれた!?・・・いや、むしろ好都合!)
あちらが近づく前に呪文を唱えその場に倒れこむ。
警戒した様子でゆっくりとこっちに近づいてくる彼の目を真っ直ぐに見る。
「あ、貴方は?」
「・・・・・・私は、此処の主に捕まってしまって・・・」
「それで・・・逃げて来たんですね。もう大丈夫ですよ! 立てますか?」
そう言って倒れている私に手を差し伸べる少年。彼の対応からしてどうやら幻術は成功しているみたい。眠りから覚めたばかりとはいえ流石は私と言ったところね。内心笑みを浮かべながら手を取り、彼に問いかける
「・・・・ありがとう・・・・私はヴィオレア。貴方は?」
「僕はフルス。教会から派遣された勇者です。」
予想通り、勇者の少年だったか。思わず笑いがこぼれそうになるのを堪え、か弱い人間の女性を演じる。
「勇者様、どうか今の当主を倒してください。」
「勿論です! と言いたいところなんですが、この遺跡は広すぎてどこに当主がいるのやら・・・」
「でしたら私が案内します。私、裏道を知ってます。」
こうして、私は人間の女性を演じながら勇者を案内することとなった。
(ふっふっふ、私にかかれば勇者一人を操ることなど容易いわね♪)
〜〜〜〜〜
「ところで、こんな大きい遺跡に一人で来たんですか?」
幻惑魔法を使っている以上、話すことに意味などないけれど、此処はかつては一王国が栄えた時期もあった遺跡。裏道を使ってもファラオがいるであろう王の間にまで着くのには時間がかかる。
言うなれば、ただの暇つぶしだ
「ええ、まぁ。こんな広い遺跡を『一人で調査しろ』なんて無茶な命令ですよね。」
「いくら最近人手が足りないからって・・・」などと愚痴を漏らす勇者
たしかにこの遺跡を一人で調査など馬鹿げた話ね。
私が眠りについてから何年経ったかはわからないが教会の無能さは未だに変わっていないみたい・・・
「貴方はどうして教団に入ったのですか?」
こんな無能な組織に入る理由を興味本位で聞いてみる。彼はすぐには答えず、
一瞬の沈黙の後、どこか遠くを見ながら、口を話し始める
「・・・僕の故郷は魔物達に乗っ取られたんです。」
悔しそうに強く唇を噛み、彼は続ける。
「 だから故郷を救うために、魔物を倒すために教団に入ったんです。」
――決意のこもった力強い瞳
「私も同じ、です。私は・・・私の国は此処です。でも今の領主がそれを・・・・」
「そうですか・・・でも安心してください!僕が絶対に救ってみますから!!」
先程の強い瞳とは逆の眩しい程の笑顔と優しい瞳。そして、その笑顔を見た瞬間、『ドキッ』っと心臓の辺りが締め付けられる。
(・・・なんだろう・・・動悸?・・・目覚めてまだ間もない所為・・・かな?)
などと考えていると、突然「危ない!!」という叫び声が聞こえ、振り返ると同時に、彼が飛びこんで来るとそのまま私に覆いかぶさるように
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