不器用な僕と彼女

人は時間とともに変わっていく

これはあたりまえなことで、誰もが知っていること

だから、これを受け入れられないのは我が儘なのかな?

子供なら「仕方ない」と言われるかもしれない。

けれど、私はもう子供の言い訳ができるような歳じゃない。

鏡に映った自分の体を見る。

白い肌の上に描かれたような紫色の禍々しい模様は私の秘所から始まり腹、胸、肩を辿って腕の先の方まで延びており、黒色の髪は紫一色に染まり、その頭からは二本の角が出ている


始まりは一週間前


私には好きな人が、恋人がいた。でもそんな彼と付き合ってから半年、私たちは未だに一線を越えられずにいた

彼は私に気を使っているらしいけれど、私は彼ともっと深いところで繋がりたかった。

そんな私の願いが届いたのか、私は一人の女性に出会った。

まるで、本に描かれた女性を具現化したような美人

何故かそのヒトは私の悩みを知っていて、私に魔法をかけてくれるといった。

『彼と深いところで結ばれる』という甘い誘惑に私は小さく頷いてしまった

そして私は'魔物'になってしまった

始めは悪い夢だと思っていた。でもまだ悪夢はまだ覚めない。

本当はわかってる、これが現実なんだって。・・・でも、どうしても受け入れることができない

だって・・・これを受け入れたら・・・・この体で、こんな体で彼に会ったら・・・

私はそこで考えるのをやめる。だって・・それより先は・・・・





『・・・ピンポーン』

不意にインタ―ホンが鳴り、小さな液晶画面に顔を向けるとモニターには見慣れた顔が映っていた

「紗枝さん?僕です、睦月です」

東郷睦月・・・私の・・・私の大切な人・・

「こんにちは睦月くん」

「えっとその・・・今日もダメ・・・ですか?」

不安そうな声で彼は私に問いかける。事の発端である一週間前から私と彼は顔を合わせていない。とはいっても電話やメールでのやり取りはしている。けれど、遠距離でもないのに一週間も顔を合わせえていない今、彼が不安がるのは当然だ。

「うん・・・・ごめんね・・・・」

「そう・・・・ですか・・・」

こんなやり取りをして今日でもう一週間が経つ。いつまでもこのままじゃいけない。それはわかっている。けれど・・・・
いつものように電話を切ろうとすると

「紗枝さん・・・その・・好きな人・・・とか・・・できたんですか?」

たった、一言だけ。けれどその一言で、何か、私の中の何かが壊れた気がした。彼は何を言っているの?私に好きな人ができた?

彼の一言からほんの数秒間沈黙が流れた後、

「・・・・ふざけないで」

私は君のために、私は・・・君に・・・私・・・私は・・・

言い終えると、それから玄関へ向かい、鍵を開け

「・・・・入りたければ入って・・・」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

近所に住み、ほぼ毎日会っていた紗枝さんに会えない日々が続き、今日でついに一週間が経った。家に籠りっぱなしで、電話の対応にも冷たい彼女に対して色々な被害妄想が広がっていた。自分が嫌われたとか、彼女に好きな人ができたとか。
この一週間で自分がどれだけ彼女に依存してるか、そして自分がどれほど弱い人間なのかをつくづく思い知った。



「・・・・入りたければ入って・・・」

プツッっと電話が切られる。

躊躇いながらも扉をゆっくりと開くと、玄関内は電気がついておらず、真っ暗だった。
靴を脱いで廊下を進む、この家には何回も来たことがあるから、真っ暗でも転ぶようなことはなかった。そして、リビングの扉を開けると、思わずその場に立ち尽くしてしまう。

声が、出ない・・・体も、動かない。

目の前で起こっていることが理解できない
胴部から長く伸びた尾下半身にかけて歩肢がびっちりと並んでいる。上半身には禍々しい模様と、頭から伸びた長い触角。腹部には大きめの絆創膏が数か所貼られている。

今、目の前にいるは誰だ?・・・いや、『何だ?』。

「・・・・・どうしたの?」

電話越しでなく、一週間ぶりに直接耳にする彼女の声。
その声が、どうしようもなく目の前の女性が彼女であることを語っていた。

「 ・・・・紗・・・・・枝・・・さん・・・・?」

分かってる。目の前にいるのが彼女だってことは。けれど、こう聞かずにはいられなかった。

「そうだよ、これが今の私、天音紗枝だよ」

何時も通りの笑顔で答える彼女。もう何年も前から見てきた大好きな彼女の笑顔。
なのに何故だろう。どうして僕は震えてるんだ?

「どうして・・・」

喉の奥から絞り出した声は、自分でも自分の声か分からないくらい掠れている。

「・・・睦月君が悪いんだよ・・」

「・・・僕の・・・・所為?」


「君が何時までも私を見てくれないから・・・悪い魔
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