始まりは登校途中に公園に通りかかった時だった
「誰か・・・私を・・・」
そんな声が公園から聞こえる
気になった私は公園に入ってみたが誰もいない・・・
公園と言っても、あるのは滑り台とブランコと砂場それにベンチくらいで隠れるような場所はない
一人で首を傾げつつ、辺りを見回すとベンチの近くにあるものが落ちているのに気付い
「お人形さん・・・?」
人形を拾い上げ、人形についた砂を払いながらよく見てみる
紫色の綺麗なドレスに銀色の髪が似合った可愛らしい人形
背中や靴の裏などよく見たけど、名前はない
とはいえ、公園に落ちてたんだからきっと小さな女の子の落とし物だろう
「早く見つかるといいね」
言いながらベンチの上に人形を置き、そのまま公園を出ようとしたその時
「・・・またね」
また声が聞こえた気がして、振り向いてみたけど、やっぱり誰もいなかった。
〜〜〜〜〜
「ただいま〜」
「おかえりー、遅かったね」
家に帰るといつも通り兄さんが出迎えてくれる
「まぁちょっとね・・・」
私と兄さんはたった二人の家族だ
お母さんとお父さんは5年前に事故で他界した
だから今、この家に住んでるのは私と兄さんの二人だけ
「最近物騒だから気をつけろよ」
両親がいない私にとって兄さんは私の保護者でもある
だからよく私を子ども扱いしたりする
私が心配だという気持ちは伝わってくるけど、やっぱり少しムカッっとくる
「もぅ〜私そんな子供じゃないよ!〜」
「ああ、はいはい。もうご飯にするから早く着替えてこい」
こんな感じで、兄さんの私に対する扱いは当分変わりそうにない・・・そんなことを考えながら部屋に向かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
食事も終わり、後片付けも済ました後
「彩華ー最近学校はどう?」
兄さんの唐突な疑問
「なんと兄さん!私ねこの前のテストまた一位だったよ!」
「へぇ、また一位かやっぱすごいな彩華は!」
言いながら私の頭を撫でてくれる
「だ・か・ら!子供扱いしないでって!」
首を振り、拒む素振りを見せるが一向に止める気配はない
「ああ、はい・はい」
本当は何気ない行為なんだけどすごく嬉しい
もっとして欲しいけど、流石にそれは恥ずかしいので
「もういい!お風呂入ってくる!」
「あいよ」
「一緒に入r「ご遠慮します」」
「ツレナイナー」
からかったように装っているけど、内心私はがっかりしていた
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
私は兄さんに感謝している。今も学校に行けているのは兄さんが働いてくれてるから
本当に兄さんには小さい時から味方で、私の王子様だ。
その感情は時が経つほど大きくなって・・・・
「本当に・・・好き・・・なんだよね・・・」
私は兄さんが好きだ。これは誰にも代えられない事実
でも、この気持ちは心の奥底にしまってなきゃ
だって私は兄さんの「妹」だから
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お風呂から上がり、リビングに入るとテーブルの上に見覚えのある人形が置いてあった
「あれ?この人形・・・」
間違いなく今朝、登校途中に見たものだ
「ああ、それ?公園の真ん中に落ちてたんだけど近くにいた子たちに聞いても知らないっていうし、それに腕取れそうだったから持って帰ってきたんだ。そんで、今さっき縫い終わったとこ」
よく見ると右肩に真新しく縫った痕がある
「そっかそれで、どうするの?」
「明日、公園のベンチの上にでも置いておくよ。たぶん誰かの落とし物だろうし。いや、交番に届けた方がいいかな?」
「公園の方でいいんじゃないかな?」
「そっか。じゃあそうしよう。じゃあ俺も風呂入ってくる」
「私もちょっと明日の準備しなくちゃ」
そうして二人ともリビングを出た。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
――コンコン
ふと誰かが部屋をノックする
「兄さん?」
でも兄さんはお風呂に入ってるはず・・・
考えているうちに扉が開くと、扉の前には一人の少女が立っていた
「こんばんわ、お姉ちゃん」
スカートの裾をつまんで挨拶をしてくる少女
「貴方は・・・お人形さん?」
頷きながら扉を閉めベットに座っていた私の傍に来る
「私はエミリー。私はね、リビングドールっていう魔物なんだぁ」
魔物?こんなに可愛らしい少女が?おとぎ話じゃあるまいし、きっと私をからかってるんだろう。
「それで、エミリーちゃんは私に何か用かな?」
優しく微笑みながら声をかけると、予想外な返答が返ってくる
「私ね、お姉ちゃんのお兄さんが好きなっちゃった」
「・・・・・・え?」
少女の言葉に私は固まってしまった
「私ね、ずっと私を拾ってくれる人を待ってたんだ。お兄さんは腕が取れそうな私を助けてくれた優しい人。」
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