俺と彼女の約束
それは
もし自分達が魔物になったら
ためらわずに殺すと言うものだった

どうして……こんなことに












事の発端は1週間前…
俺は町の軍に所属していて、軍により町は魔物から守られていた。
そんな中、街のはずれに強い魔物が住み着いたという噂が立ち、
それに対し軍では討伐隊が作られた。
そんななか、
「と言う訳で討伐隊に選ばれました」
腰に手を当て、誇らしそうに彼女は言う。
こいつはルカ姉。俺の幼なじみで俺より2つ年上で俺と同じく軍に所属している。
女にも関わらず100人近くいる軍の中でも上位10人に入るであろう実力者だ。
俺にとっては姉みたいな存在。
「相変わらずルカ姉は凄いなー」
一方、俺ことシンは軍に入ったばかりの新人。
自分で言うのもアレだが実力はそれなりにあるほうだと思う。
ただまだ下っぱで、討伐のようなまともな仕事はまだない。
「それでいつ出動なんだ?」

「明後日だよ、それでさ、今日の夜、一戦大丈夫?」

「ああ、いいよ。それじゃ、またいつもどうりにね」
いつもどうりの変わらない会話をして俺達は別れ、軍の訓練等で1日が過ぎた。

その夜0時、俺は訓練場に来ていた。ここは普段軍の訓練に使われていて、
この時間はいつも閉められているがそれを管理してるのは下っぱの俺。
つまり俺がいれば自由に使える訳である。
そうして中で待っているとルカ姉が現れた。
「ごめん、少し遅れなっちゃった」

「いや俺も今来たとこ。じゃ、さっそく−−−よろしくお願いします」
そういって互いに一礼し、剣を抜き、構えた。
俺達はよくこの時間にこの場所で剣を交える。
昔は秘密の特訓とか言っていたが最近ではルカ姉の調整になっている。





―――
「ふぅ、こんなもんか」
「そうね、この辺りでやめにしましょうか」
小一時間程剣を交えて俺達は向き直り、礼をした。
「しっかしやっぱルカ姉は強いな、本気だされたら絶対勝てないよ」
俺は全身脱力して倒れ込むように地面に座った。
「いやシンだって本気じゃないでしょ、それに……」
ルカ姉が意味ありげな視線で俺を見た。
「な、なんだよ」
「何か隠してるでしょ」

「な、ナンノコトデスカ」
「だってシンって剣を本気で握ってないもの。構えもどこかぎこちないし。」
図星だった。流石は軍のエース。俺には隠してることがある。
けれどこれは本当に必要な時以外使いたくないものだ。

「まぁいいわ、でもそのうち聞かせてもらうからね」

そういってルカは俺の傍に座った。
ほっとしている俺にルカ姉は真剣な目で言った。
「ねぇシン。約束…覚えてる?」

「当たり前だろ」
俺は即答した。
ルカ姉は任務の前に絶対に約束を確認する。
「破ったら罰ゲームだからね」

「わかってるって、大丈夫だよ」
軍の教えによると、魔物は人間を糧に生き、場合によっては人間を魔物に変える悪しきもの。人間の敵。
そんな魔物をルカ姉は強く嫌っていて、自分がその立場になるのは絶対に許せないらしい。

「信じてるからね、シン」
俺は目を見てしっかり頷き、夜空を見上げた。

星が綺麗な夜だった。

「でも大丈夫、私は必ずここに帰ってくるよ」
つぶやきながら、ルカ姉も星空を見上げた。

こうしてまたいつもと変わらない時間が過ぎていった。
こんな風にずっと毎日が続いて行くのだろうと俺は思っていた。











だけど……







討伐隊は…ルカ姉は帰って来なかった。








ルカ姉が行方不明になってから3日がたった夜。
−誰かに呼ばれた気がした
−いつもの場所で待ってると言われた気がした
気が付くと俺はいつも時間にいつもの場所に向かっていた。






――この時、多分、俺は気付いていた




訓練場に着くと中央に人影があった。
その影には羽や角があり、先端が印象的な形の尻尾を持っていた。
雲が月明かりを隠していたためはっきりとは見えなかったが…
「アハハ、やっと会えたねシン」
…まぎれもなく彼女の声だった。
「………ルカ…姉……なのか」
わかっていた―けどそれを認める事ができない。
「そうだよ、私だよ。」
考えてはいた。
3日前に行方不明の時からこうなった可能性を…
ただ俺はどうしてもそれを受け入れることができずにいた。
「ずっと会いたかった。もうずっと一緒にいよう」
呆然としている俺にルカ姉は嬉しそうに言った。
「ねえ、シ「ルカ姉!」」
「約束……覚えてるか?」
一番聞きたくなかったことを聞いた。
「そんなことどうでもいいよ。ねぇシン、私の目を見て」
淫らな目でこちらを見たが俺は目をあわせず、短く答えた。

「……いやだ」
(やっぱりやるしかないか)

予期していた最悪の展開
彼女が魔物になってしまった時点で分かっ
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