初めて見たとき
僕には彼女が幻のように見えた
言葉にするなら
透き通るような白
触れようとしても触れられず、通り抜けてしまいそうな存在
そんな儚い存在に見えたからか
あるいはどこか寂しそうに見えたからか
僕は彼女に声をかけた
別になんてことはない
ただ一人の男性が一人の女性に声をかけた、それだけだ
けどその時の彼女の顔はよく覚えている
何か特別なものを見たようなそんな感じの顔だった
そうして僕たちは出会い、親しくなり、やがて惹かれていった
僕は彼女に愛されていた
彼女は献身的な態度で僕に尽くしてくれた
そんな彼女の愛を僕は受け入れた
・・・最初は・・・・・
けれど時が経つにつれ彼女の愛は変わっていった
僕が彼女のもとを離れることを嫌い、僕と彼女が崇拝する神以外に興味を示さなくなった
気付くと優しかった愛は重い『鎖』のように僕を縛っていた
そう、彼女の愛は重かった
重すぎた
そして僕はそれが怖くなった
だから僕はそれから逃げるように他の女性を探した
彼女に隠しながら
けれど・・・・
隠し事とはいずれはばれるもの・・・・
だから、遅かれ早かれこうなることはわかっていた
「さっきの女は貴方のなんですか?」
――――――重い
言葉に含まれた威圧感が、周りの空気が・・・とてつもなく重い
「・・・・友達・・・・だよ・・・」
威圧感に押し潰れそうになりながらもなんとか喉から言葉を絞り出す
「友達?腕を組んで歩く関係が?・・・キスをする関係が友達なんですか?」
言いながら僕との距離を詰めてくる
同時に空気が凍り付いたように静まり返る
―――ヤバイ
本能が・・・・・・・全身の細胞が叫んでいる・・・・
―――アレは危険だ
―――今すぐ逃げろ
本能的に足が勝手に後退る
が、何かに躓き、尻餅をついてしまう
咄嗟に何につまずいたか確認しようと足元に目をやると
白い鱗に包まれた尾が僕の足に巻き付いていた
「どうしたんですか」
ハッとして顔を上げると
目の前10センチに彼女の顔
その目はどこか虚ろで赤く光っている気がした
咄嗟に距離をとろうとするが
―――体が動かない!?
「あれぇ?逃げないんですか?」
いたずらっぽい笑みに恐怖に似た何かを感じる
これは・・・・・魔術か?
ラミア種であり、さらには水神の巫女・・・
魔術なんてお手のものだろう
身動きが取れない僕に対し、彼女はどこか遠くを見ながら話始める
「私は義幸君の物だと・・・・・・・・・それでいいと思っていました」
左手で愛おしそうに僕の頬をなでるように触れる
「でもダメだったんですね・・・・・・・・・・義幸君は私の・・・」
ふと、青い光が彼女の右の手の平に集まっていき、やがて青い炎が灯る
「私だけのモノになってください」
言いながらその手を僕の胸にそっと押しあてた
その直前、青い光が僕には
今まで見たどんな色より暗く、そして美しく見えた
「・・・・・?」
熱くもなく痛くもない
何の意味が・・・・・
そう思っていると次の瞬間
――――――ドクン・・・ドクン
―――熱い・・・・!
―――体が・・・・全身が焼けるように熱い!
今まで感じたことのない「熱」が僕の中を駆け巡っている
「・・・・・白・・・・一体・・・・・何を・・・・」
燃えるような苦しみに耐えながら必死に白に問い掛ける
「何ってさっき言った言葉の通りですよ」
言われて直前彼女の言っていた言葉を思い出す
『私だけのモノになってください』
「・・・・・僕は・・・・・白の・・・・」
「ふふ、そうです、義幸君はもう私だけのモノです」
会話を続ける間も熱は熱さを増し続ける
「白・・・・・・・・・僕は君が・・・・・・白が・・・・」
―――欲しい
しかし体が動かない
必死に脳に命令するが、指先一つ動かすことができない
「いやです」
僕が言い切る前に冷たく言い放つ
どこか楽しそうに
まるで僕に罰を与えるように
――――――苦しい
そろそろ頭がどうにかなりそうだ
「ふふ、嘘ですよ、そんな泣きそうな顔しない
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