あたりは暗く、空から照らす月明かりだけが待ち人を照らしていた。
暗闇から駆けて出てきたその姿は、黒い翼とマントをはためかせて光の下へ出てきた。
「リズ!」
私は抑えきれない衝動を抱えながら彼女の名前を呼んだ。
「リオ・・・!」
彼女の顔が明るくなる。私はその笑顔を見るだけでとても幸せな気持ちになる。
彼女のために、私の鼓動が高鳴っている。もしかしたら相手にも伝わりそうなくらい。
「会いたかったよリズ・・・・!」
「あ!ちょっとリオ・・・やぁぁん!」
出会うや否や、私はリズの胸に顔をうずめる。
リズの胸が形を変えながら私の顔に当たってゆく。
とても暖かく、やわらかく、それがまた私を興奮させてゆく。
ずっとむにむにといじっていようとしたらリズに頭をたたかれて
泣く泣く手放すのはもう挨拶代わりになっている。
彼女の名前はリズ。
街の教会に住む孤児・・・らしいが私にはそんなことはどうでもよかった。
重要なのは、彼女は私の命の恩人ということ。
瀕死の重傷を負った私を介抱してさらにかくまってくれている私にとって
恩人以上のものは無いというくらいの子だ。
突拍子もなく言うが、私は彼女のことを愛してる。
ヴァンパイアとして生まれ、この方1000年近くも人を殺してきた私に
「愛」ということを説いたとんでもない変わり者だ。
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「・・・日中も、リオと合えるようになればいいのにね。」
「うん・・・私もそうしたいけど・・・・ほら、教会の連中に感づかれたらリズにまで迷惑かかるからさ。リズには迷惑かけたくないんだよ。」
「そう・・・・」
リオの言葉にリズはうなだれた。いつもリオと会うのは一緒にいる子供たちが寝静まった後、夜が深くなったときだけだ。
「そういえば、どこかの土地で太陽を克服しようとしているヴァンパイアがいるって友達から聞いたけど・・・・」
「そうなの!?誰だろう・・・太陽の下を歩くにも相当の精神力と魔力がいるからなぁ・・・・こんどその方法教えてもらおうかな?」
人間の日常会話とは、またかなりずれている会話。だが、そんな他愛もない会話がリオの乾ききった心をまた潤していくのだった。
そうして、しばらくの間談笑に耽っていた時、ふと、リズが暗い顔をして空を見上げる。
「・・・どうしたのさ?」
「ううん。やっぱりおかしいなって思ったの。魔物だからって一方的に悪と決め付けていくなんて、やっぱりどうかしてるわ。だって、リオのようなやさしい魔物だっているんだから。」
「・・・・・・・」
その言葉は、リオにとって心を痛める言葉となった。
今でこそむやみに人を襲わないようになったし襲ったとしても殺すようなことはしなくなった。だが、リズと出会うつい最近までリズが思い描くような殺人鬼だったのだから。
リオは不意に、心からこみ上げてくる悲しみに耐えられずに
涙を流す顔を隠そうとしてリズの胸に顔をうずめるのだった。
「あ、リオ・・・・・」
「っ・・・・っく・・・・・・・・・・」
相手が忌むべき人間でありながらも自分をさらけ出すリオ。
そんなリオは人外の存在であることにもかかわらず、やさしく抱きしめるリズ。
二人は無意識のうちにお互いのことを友達の枠組みを超える存在として見始めた瞬間だった。
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