煌びやかな星明かり。テラスに降り注ぐ月明かり。風に乗って香る甘い花の香り。
暖かなミルクティーをひとくち。ティーカップを口から放して小さなテーブルの上にそっと置く。
「今日も退屈ね。」
テラスで優雅なティータイムをくつろいでいる少女は誰に言うこともなくそう呟いた。
ため息交じりの吐息が、心地よく吹く風に乗って溶けてゆく。
少女が目を細めて空を仰ぎ見る。瞬く星空と満月が暗黒の夜空を彩る。
どこかであって、どこでもない世界。
鏡の中、鏡面世界にあるお城。イヴルフレンジラヴェ城。
日など昇らず、暗黒の夜空とでっかい星月が照らし続ける世界。
この城の主、鏡を使い現実世界と鏡面世界を行き来する吸血鬼、
シェリパフェード=エル=ヴァンツァラトゥスが治めるただひとつの世界。
「・・・・・・客を招く、と?」
すらりとした長身の執事は不思議そうにそう言った。
それもそのはず。この主は必要以上に外界に行かず、誰とも会わずに普段はずっと城の中で過ごしているのだからわざわざ外界から客を呼ぶなんて、執事にとってはオークが空を飛ぶようなものだと思わざる得ないのだ。
「そうよ。暇だから。だから私の話し相手になってもらうのよ。」
「そうですか・・・それはいい暇つぶしですね。」
「そう思うでしょう。貴方じゃ話ができないからね。」
「あはは・・・それは残念ですね。」
主人からの批判も軽くかわす執事。なれた手つきであいたカップに紅茶を注ぐ。
「まぁ、そういうことだからくれぐれも粗相のないようにしなさいよ。」
「大丈夫です。主人のフォローはできますから。」
自信たっぷりに上から見下ろしてしゃべる。
ちなみに、身長は執事の方が圧倒的に高い。
別に断然高いというわけではなく、むしろ逆で主人が圧倒的に小さいのだ。
今は椅子に座っているが、椅子から立ち上がっても執事のお腹ぐらいになる程度だ。
「(ぶちっ)言ってくれるじゃない・・・・今日鏡の前を通るときは気をつけなさい。」
「そんなこと言われたら、私はどこを気をつけて歩けばいいのでしょうね。」
鏡の前、と言ったが城の大半が鏡でできているので城内にいることは
常に鏡の前を歩くことになる。
つまりどこを歩いても気をつけろということだ。
「さて、そろそろ誰を呼ぼうかしら・・・・・・・・・」
少女・・・シェリパフェードは、カップを口にまで運ぶと
永遠の夜空を見上げながら紅茶を楽しむのだった。
[6]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録