「・・・何をしている。」
ヒスイ色の髪の毛に黒い瞳の青年が、とぼとぼと歩いてくる茶髪のロングヘアーに緑の長いローブを着た女性を呼ぶ。
これで何度目か。彼は遅れてくる彼女をみてため息をつく。金さえもらわなければこんな依頼から逃げ出したい気分だ。
「レクシス・・・だって疲れたんです。もう歩きたくないです・・・」
「あと集落1つを越えればいい。黙って歩け、シージュ。」
レクシスと呼ばれた、剣を背に抱えた鋭い雰囲気の青年がシージュを呼んでいる。歩く遅さに業を煮やしているようだ。
多少起伏があるが平地にあり整地された街道を歩くなど、傭兵である彼にとってはなんでもないことだがシージュはそうでもなくすぐに疲れたと連呼する。
「護衛なら私のペースに合わせるです・・・」
「こっちは計画を綿密に練っている。後1日で依頼は達成だ。こんな長旅を悠々と続けているほどこちらにも都合はない。」
すでに空が朱色に染まっているが、レクシスはシージュに急ぐように言う。もっともシージュを見失わないように追いつくまで待っている。
見通しのいい平原に作られた街道、彼女を狙う襲撃者くらいは一通り目に付く。遮蔽物はない。
「ねぇ、次の集落で休むです・・・」
「ダメだ。それなら野宿で勘弁してもらう。」
弱音を吐くシージュの提案をレクシスが強い口調で断る。彼にしてみれば、次の集落で休むことだけは控えたかった。
傭兵部隊に討伐以来が出ていると前の集落で聞いていた。最近旅の男女問わず襲われ、非常に迷惑しているというのだ。
ごたごたに巻き込まれればそれだけ行動も遅くなる。レクシスはこれまでの旅路でシージュのペースにあわせた結果、携行してきた予算もぎりぎりの状態だ。
食料もわずかであり、無駄に使いたくないのが本音・・・だが、シージュはレクシスの事情などまったく意に介していない。
「割高の護衛料金でなければとっとと引き上げるところだ・・・」
レクシスが忌々しげにぼやく。彼は傭兵でありシージュと言う少女を旧ナーウィシア領の町へと護衛しろという依頼を受けていた。
通常受ける依頼の4倍近い資金があり、依頼主は旧ナーウィシアの騎士団が使った偽名。レクシスのお得意様でもあったため依頼を受けたのだ。
「あぁもう、嫌です・・・魔物は襲ってくるし、正規軍に襲われて・・・」
「死ぬよりはましだろう。まったく。」
レクシスは苛ついた様子でシージュを待つ。数度戦場を潜り抜けて体力のついているレクシスには、すぐ疲れたと言って休憩を要求するシージュは理解できないらしい。
「・・・本当に休みたいです。」
「集落は次まで待て。あるいは野宿だ。」
「ここ3日間、体すら洗ってないです!ベッドにも入らないですし・・・」
「3日程度で・・・俺など10日も野宿のこともあった。それも真冬でだ。」
とっとと黙らせたいとレクシスが思い、シージュの弱音を一蹴したが・・・シージュはレクシスから一定の距離を置いている。
「どうした。」
「不潔です。嫌です。」
「いきなりか。今までは平然と近づいていただろう。」
「せめて今日だけは体を洗いたいです。」
「なら川で洗えばいい。」
シージュは首を振る・・・今は冬、自分が水を浴びただけで凍傷を受けるか一瞬で凍り付いてしまいそうだ。
平然とレクシスが冷水で体を洗っているのを見てシージュも真似したら酷い目にあったこともある。風邪を免れたのが奇跡的だ。
「だったら急ぐ・・・待て、敵だ。」
「敵、ですか?」
「速いな。だが姿は見えない・・・」
気配をすでにレクシスが読み取っている。そして周囲の感覚や乱れなどに集中力のすべてを注ぎ込む。
目標は2方向、街道脇の草原を一気に駆け抜けてくる。姿が見えないが陰だけははっきりと見える。
「ステルスケープの刺客か・・・シージュ、構えろ。」
「わ、わかってるです!」
乱世ゆえに武器を持たずして誰も生き延びられない。シージュは腰につけていた棒を両手で構えると180cm程度の細身の槍に棒が変化する。
それを構え、シージュはレクシスと背中合わせにして緊張感を高め陰に動きを集中する。人の姿はないが、高速で陰が動いている。
「・・・来た!」
半透明の人型の物体が空中に躍り出ると同時に、レクシスは腰につけた長い剣の柄に手をかけると、飛び上がると同時に引き抜く。
相手の脇をすり抜けつつ、華麗に一閃し着地・・・ケープが破れ、血を流した黒装束の人物がショートソードを片手に倒れこむ。
「れ、レクシス!支援願うです!」
シージュがすばやく槍を構え、ショートソードを受け止めるがさすがに力が弱く抑えられている。
それを見てレクシスがすばやく剣を構え、黒い気を収束させると真一文字に振り下ろす。
刺
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