第10話 ちょっとだけ手掛かりを得た件について

スリの探索、とはいってもブリジットの広域探索魔法で逃げているラージマウスを特定し、行き先を予測して先回り。相手の逃げ道を一つずつ潰して追い詰めるだけなのだが。これで文字通り袋の鼠だ。
俺は一番運動能力が劣るので追いかけるのは無理、最後に捕まえる役目を担いました。

『ヒロさん! そっちに行きました』

ブリジットの声が頭に響く。その言葉通り鼠のような耳をした少女が俺の財布と荷物の入った袋を持って走ってきた。諦めて投げ捨ててくれたら楽だったんだが、流石にそうもいかないらしい。

俺は少しずつ左にずれる。アメフトでボールを持ってる相手を止めるのにそういうのがあったのを思い出してやってみたが、ラージマウスは見事に嵌って俺が動いた方向とは逆方向に逸れた。
俺はすかさず跳びかかる。

「ふひゃ!!?」

ラージマウスの力がどれ程なのかは知らないが、体格は少女のそれとあまり変わらない。それなら男にいきなり跳びかかられればひとたまりもないだろう。

「はーなーせー!」

「とりあえずスッたもん返してくれよ。そしたら放すから」

ラージマウスは不貞腐れながら手に持ってた俺の荷物を地面に置いた。俺は中身を確認して無くなった物が無いかどうかを確認するとラージマウスを放してやる。次は盗られないように念入りに括りつけた。
その後、俺は少し思案してから硬貨を一握りを財布から取り出し、ラージマウスに手渡した。

「……へっ?」

「もう、スリなんてするなよ? 悪い事してもいいことなんで無いんだからさ」

「アハハハハ、面白いね。あたしニナ。この辺じゃ見ないけど、旅人?」

愉快そうに笑うラージマウス、ニナ。やっぱり女の子って楽しそうに笑っているときが一番輝いていると思うんだよ。

「俺はヒロ。最近、町の外にあるギルドに住み始めたんだよ」

「町の外のギルド? そんなのあったっけ」

ニナが首を傾げる。
ミリア様。アンタのギルドの知名度はまだまだっぽいです。

「来たばっかりだったらさ、あたしがいろいろ案内してあげようか?」

「あー、気持ちはありがたいんだけど、連れが「ヒロさーん!」」

少し遅れてブリジット、マキア、マルチダ、シェリルさん、リル、コルルが来た。
そういえば連絡がまだだったのを思い出す。

「荷物は取り戻せたよ」

そう言って腰に括りつけた荷物をパンパンと叩く。
みんなは安心したとにニナを睨む。特に恐いのがブリジットとマキア。
ニナは明らかに怯えている。

「荷物も返ってきたし、もうチャラにしようよ。その代わりにさ、ニナが穴場に案内してくれるらいしからさ」

俺はニナを指差す。
ニナは「ハードル上げてくれるなぁ」と呟いた。

「……ヒロは少しお人好しが過ぎるのではないか?」

「そう?」

マキアに指摘されるが、そのつもりはないんだけどなぁ。女性に対してはちゃんと優しくするようにと両親には口が酸っぱくなるほど言われてはいたが。

「え〜、それがヒロさんの良いところだと思いますよ〜」

「リルもヒロの優しいところ、好きだよ」

「私もー♪」

「……(コクリ)」

「私は優しいヒロさんも激しいヒロさんも鬼畜なヒロさんも愛せます」

ブリジット……君のキャラが段々おかしなことになってきてないかい?
それに俺にはそういう趣味は無いですから。

「それじゃあ何処へ行く?」





〜サキュバス喫茶 アムネジア〜

ニナに「この辺で一番食事が美味いところは?」と聞いてこの店が値段も手ごろで一番らしい。サキュバス喫茶と表記されているが、別にサキュバスしかいない訳でもなく、他の魔物も働いている。この店を経営している店長がサキュバスだから、そう命名したらしい。

「「「「「「いらっしゃいませ、ご主人様! お嬢様!」」」」」」

あれだ、まんまメイド喫茶だ。服装もメイド服っぽいのを着ている。
何故"っぽい"をつけているかというと、スカートがミニだったり、ヒラヒラがやたらとついていたりとどちらかというとウェイトレスに近いからだ。

メニューを見ると、『モエモエオムライス』みたいな変なネーミングな料理は一切無い。日替わりランチやパスタのように喫茶店でよく見るものがほとんどだ。変わったのだと『店員 要相談』の文字がメニューにあった。意味が分かって水を吹き出しそうになった。

とりあえず俺とブリジットとコルルとニナは日替わりランチ(ドリンク、スープ、ライスorパン付き)、マキアとマルチダはステーキセット(以下省略)、シェリルさんはサラダパスタのセット(ドリンク、サラダ付き)を注文した。
リルは身体の構造上少ししか食べられないので、みんなからちょっとずつ貰う形式になった。

「あたしも奢って貰って良かったの?」

「嫌なら自費でもいいけど……」

「お願いします
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