ある時、反魔物領地域の国に一人の勇者と補佐として二人の騎士がいました。
勇者は不屈の闘志とタフな肉体、それと二本のF字型のロッドを自在に操り、対峙した者の武器を破壊し、それでも諦めない者には四肢を砕き戦闘不能にする鍛冶師と医者泣かせの勇者、付いたアダ名が『破壊勇者』ハイド。
一人の騎士は弓の名手で自分に飛んできた矢を掴み取り射返すのは当たり前、1秒に3本の矢を放ち、柔軟な肉体を利用した回避からの近距離戦闘が一番得意な初見殺しの弓手、スコッド。
もう一人の騎士は巨大な身体と並の魔物娘達では敵わない怪力、それと非常に強固な盾を使い他の二人の文字通り鋼鉄の壁となる料理が好きな心優しき騎士、アル。
この三人は幼馴染で、小さい頃から野を駆け回り、川で遊び、勇者に憧れて必死に努力しました。
しかし主神からの加護を受けたのは一人だけでした。
三人に親しい勇者や騎士達、町の人々は残りの二人が心配でしたが・・・。
「なれなかったものは仕方ないさ、だがアイツ一人だと心配だから手助けしてやるさ!」
「そういう事なんだな」
と、勇者になれた友を妬む事も恨む事も無く、自分に出来る事をやり始めました。
彼らの国は別の反魔物国家や山脈に囲まれていて、主にその国と戦争していたため、魔物達と戦う事はまずありませんでしたが、任務で魔物領地近くの国の大臣に重要書類を渡すために三人は険しい山道を進んでいました。
しかし突如、虫か貴様ら!と言いたくなる程、多くの盗賊たちに襲われてしまいます。
普段ならハイドが片腕でも蹴散らせる奴ら、しかしこの時ハイドは身体を壊していたのです。
「二人共、俺が足止めするから先に行って欲しいんだな」
アルはそう言って盗賊たちを殴っては投げ、掴んでは投げ。
その様子を見て安心したスコッドはハイドを抱え、進みます。
細い山道に巨大な男、盗賊たちは無理と悟り引き返していきます。
「ふぅ、やっと諦めてくれたんだな」
アルは安心して、二人を追いかけようと思った時にスコッドが戻ってきてくれました。
ハイドを途中の小屋に休ませて居ると聞き、二人でそこに行こうとした・・・その時。
アルの足元が崩れ、落ちてしまいました。
スコッドがアルの腕を掴みましたがアルの体重と鎧の重さは合わせて大人数人分、それを掴み続けれるわけも無く。
アルは崖の下の森まで落ちてしまいました。
並みの衝撃なら吸収してくれる鎧と柔らかい木々が緩衝材になってくれたお陰でアルに大した怪我はありませんでしたが、頭をぶつけてしまい意識朦朧のまま森の中を歩きまわりました。
深い森の中、時間はおろか方角すらわかりません、そしてそのまま気を失ってしまうのでした。
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「ん・・・朝、なんだな」
小鳥の仲の良さそうな囀りと日の暖かさで目が覚める。
起き上がろうとした瞬間、腹部に違和感を感じて頭だけ動かして確認する。
そこには俺の腹を枕にしてすぅすぅと可愛らしい唇から寝息を立てている女性が居た。
周りの物は一切濡れていないにも関わらず女性の身に纏っている衣服や髪だけが濡れている、身体を猫のように丸めて寝ている体勢で見慣れない衣服が水分でぴっちりと張り付いており首元が見えて思わず目を逸らしてしまう。
起こそうにもこれだけ気持ちよさそうに眠られていては気が引けてしまい、起こす事も出来ないので見える範囲で状況の確認をする事にした。
物置を使用した部屋なのか自分が眠ってるベッドのような物以外だとクローゼットと姿見鏡、それとずいぶんと脚の短いテーブルとクッキーみたいに薄いクッションが数枚隅に置かれていて、ドアが一つと窓が側の壁に一つ有るだけだった。
空いている左腕を動かして壁に届くので2m程の自分の身長も考えると2,5m〜3m四方の部屋みたいだ。
窓枠に小鳥が止まって自分を見ている、どうやらここは平和な場所らしい。
俺を枕にしているこの人が起きるまでもう少し眠っていようかと思ったその時、ドアがバァン!と勢い良く開かれた。
「うぉぉい!起きってかぁ、デケェ兄ちゃん!」
まるで火薬を耳元で発破したような爆音に体が飛び跳ね、眠っていた女性も飛び起きる。
びっくりしたのかオロオロ、キョロキョロと周りを見渡す仕草が愛らしく感じた。
爆音の主はずいぶんと小柄な体に対して身の丈ほどはありそうなハンマーを背負い、腰には様々な工具らしき物が収められたベルトを巻きつけている少女だった。
「おう、ちゃんと起きてるな!」
テコテコと可愛らしい擬音が鳴りそうな歩き方で俺に近づいてじっと見つめてくる。
とりあえず、自分のこの状況を考えるとこの子達に助けてもらったのは明白だ。
「助けてくれて、ありがとう・・・でいいのかい?」
するとハンマーっ子はケタケタとおかしそうに、けど眩しく笑っ
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