第八話 ドラゴン襲来

ソルドを数日前に出発した俺達は今こうして小動物達が姿を見せるような湖の側で昼食を食べていた。
流石塩が特産物なだけあって干し肉とかの旨味が違う、塩辛いだけじゃなく甘みすら感じてしまう。

「むきゅ〜♪今日もお昼ごはんが美味しいんだよ♪」

「のんびりしてるわねぇ〜」

「そうだな、このまま旅もゆっくり進めばいいのになー」

あはははは、あはははは。

鳥の囀りや動物たちの鳴き声を聞きながらまったり・・・いいものだ。

...ぉぉぉ

ん?

「なぁ、今何か聞こえ...」

「二人共構えて!」

二ミュが強い口調でそんな事を言うということは面倒くさいことになりそうだ・・・。
直ぐ様弓を構え、ティナは火を消し周囲を警戒する。
次の瞬間、俺達の目の前に何かが落ちてきた。

「ぐへぇっ」

潰れたヒキガエルのような声を出しながら数度、地面をバウンドして止まったそれは人だった。
思わず目を丸くする俺達をヨソにそいつは直ぐに体制を立て直し剣を構えた。
俺達も武器を構える。

青の髪で身長は俺よりやや小さい、まだ二十歳も超えていないだろうその少年の気配は・・・勇者だった。
あいつと同じだ、神の加護を持っている。

・・・?なんか様子が少しおかしい。

「まったく、こんな所までとばすかね・・・げっ!?そこの人、ここは危険なので直ぐに逃げてください!」

「いきなり何言ってんだよ!?」

「早くっ!...くっ、もう来たか」

「だから説明し「スコッド、どうやらアレのことみたいよ」

ニミュが顔を向けている方を俺とティナも向く。
その向きは上空、斜め70度。
太陽の光りに照らされるそれは巨大な翼に金色のロングヘアー、後頭部から生えている2本の角、蒼く輝くサファイヤ色の分厚い鱗で覆われた両腕両足そしてゆらゆらと揺れる太い尻尾。
何より、今まで感じたことのない驚異的な威圧感。
それは両腕を豊満な胸の下で組、じっと俺達を見下ろしていた。

「ドラゴン...なのか」

俺のつぶやきにドラゴンが答える。

「応よ雑草、オレこそは地上の王者、ドラゴンのフレイだ。どうした主?雑草等と話している暇はなかろう?」

優雅にその場で飛びとどまるドラゴンを視界に入れたまま勇者に小声で話す。

「なぁ、アレとアンタの関係と今の状況を手短に説明してくれ」

「アレ俺の妻スゲー強くて戦闘中性格悪い、俺貧弱、今地獄の特訓中、貴方達巻き込まれた」

「わかったような分からなかったような・・・」

その会話を聞いていたのかドラゴン・・・じゃなくてフレイが話しだす。

「そうだな、たまにはその場で出会った者との即興で協力するというのもいいかもしれんな・・・おいメス犬、青いハム、人間。我が主と共に攻めて来い」

「ん?犬、人間・・・むっかーー!!!誰が青いハムなんだよぉ!」

青いハム呼ばわりされたティナがブンブンと銛を振り回す、まぁ...寝転がってるところとか確かにハムっぽいかもしれんな。

「男を主って言ってるってことはもう夫婦なんでしょ?だったらそんなメストカゲにメス犬呼ばわりされたくないわね・・・」

なんかこっちもやる気になってるし、のんびりライフは何処へ・・・。
苛立っていたこっちの二人がドラゴンの次の言葉で歓喜の表情へ変わる。

「そうだな...オレを倒せたら先ほど仕留めた魔界豚を共に喰おうではないか」

「肉ぅぅ!!!」

「あぁ、いい塩で食べる焼き魚も美味しかったけど一番は鉄板の上で焼く分厚い肉に粗塩よね!」

おいこら肉食獣共!?
最早二人の目に映っているのは自分たちとは比べ物にならないほど強い、最上位魔物娘ドラゴン・・・ではなくその後ろにあるであろう魔界豚だった。
こうなったらやるしかねぇか!

「おい勇者、名前は?」

「クリスです、スコッドであっていますか?」

「それでいい。はっきり言っておくが俺達三人はコンビネーションとか以前に三人で戦うってことが今までなかった、俺はあんたを援護するから好き勝手やってくれ。こっちのアザラシは武器が銛、狼は蹴りが主だ」

「了解です」

手元にある矢は魔界銀と鉄の合金、魔界鉄の鏃の矢30本。
それと俺の魔力矢、これが行動不能までとなると20本。
構える、フレイに向ける・・・よし、手の震えは無いし手に血がべったり付く幻覚もない、コレなら行ける。

さて、勇者様の実力拝見させてもらいましょうかね。







お肉に釣られてつい構えてしまったけど、はっきり言って勝算はないしどうしたものか・・・。
なんて考えながらチラリとティナの方を向くと目を輝かせながら小声でおにくっおにくっなんて言っている、あぁこの子は正直で可愛いなぁ。

「よし、ちょっと小手試し行ってくる」

「気をつけろよニミュ」

愛する男に頷く。
私の武器は
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