第四話 森入口、ワーウルフの村【後編】

※ふたなり描写有り


こんこんと宿のとある部屋のドアをノックする、今回で駄目なら本当に男は諦めて森の奥で暮らそう。
聞こえてきたのは男の声。
ドアノブを回し、中に入る。

「どうした?」

少し大きめなベッドと姿見と小さなテーブル、壁と一緒のクローゼットがあるだけの狭い部屋。
スコッドはベッドに座っていた。
テーブルの上には酒とツマミ、晩酌の途中だったのだろうか。

「・・・」

まずい、長に色々言われて来たもののどうするか一切考えていなかった。
そういえば部屋にティナが居ないみたい。

「ティナは...居ないのね」

「酒が抜けたから酒場で採血だってさ」

「そう・・・隣、座ってもいいかな」

「どうぞ」

スコッドが座っている隣に座る。
年甲斐も無くドキドキしてきた...思えば此処に来てから男と関わると言ったら他のワーウルフに捕まった男をあてがわれて・・・という感じだったからこんな風に落ち着いて関わるのは本当に久しぶりだ。

「目のそれ、夜でも外さないんだな」

「ええ、あまり光に強くないから...だから」

「だから?」

「窓...閉めてくれる?」

「こうか?」

きぃぃと音を立てながらカーテン代わりの木の板を回転させて外の魔力で作られた街灯の光が入らないようにしてもらう。

「暗い?」

「ロウソクがあるから大丈夫だな」

...なら、大丈夫かな。
立ち上がって後ろにあるアイマスクのホックを外し、テーブルの上に置いて...ゆっくりと目を開く。
今まで薄暗い所でマスクをずらしての読書は何度もしているけど、完全に外すのは本当に久しぶり。
必要なかったから外さなかった...でも今は違う。
私は、この男の顔を見たい。

普通の人には暗いのかもしれないけれど何年も真っ暗の状態だったせいで私の眼は光を調整する機能が弱くなっていて日光等の光のあるところでは裸眼で見ることが出来ない。
完全な魔物娘化をしてもこれは治ってくれなかった。
でもロウソク程度の...この位の明るさなら、見ることが出来る。
この前昼の時に見たバンダナは外していて、目元もしっかり見える。
うん、匂いだけじゃない顔も好みだ。
スコッドの手を握る。

「私の手を掴んでくれる?」

無言で私の手を握ってくれる。
女の子やワーウルフとは違ってもふもふもしていないし細くて柔らかくも無い太くてゴツゴツと角張っている鍛えられた手。
けれど、嫌じゃない。

「何度か長の所に行って話をしていたっていうのは皆から聞いている...私の身体の事、女なのに男性器が付いてることは聞かされている?」

「ああ」

「...気持ち悪くない?」

次の言葉を聞くのが怖い。
聞いてしまうのなら、この耳をいっそ塞いでしまいたい。

「手を握らせた理由が気持ち悪かったり嫌悪感を感じたら離してくれ、と言うものだったら残念だが無意味だぞ」

「・・・」

「まぁ座れって、俺の話を聞いてからだ」

トントンと自分の隣を軽く叩く、私はその通りに座って待つ。
...拒絶されなかった、男だと初めてかも。

「そうだな、確かに何も知らないで今のを言われたら多少はビビったし混乱したかもしれない。けど此処のお偉いさんがそれを見越して教えてくれたお陰で考える事ができた、その上でティナのなつき具合とか仲良くなってるのを見ても俺がニミュを拒む理由が殆ど無い」

「私、ティナを犯すかもよ」

「ま、まぁその辺は...慣れるまで待てというか置いておいてくれ...本気でその辺は悩んでいるんだ」

「ごめん...」

一気に落ち込んでしまい小さく丸まってしまった彼の背中を撫でてどうにかしようとするが...あ、戻った。

「とにかく、俺の友人の話しだ。友人の一人に面白い奴が居たんだ『自分は男として生まれたけど心は女だ』って言う奴がな。初めは男にも女にも相手にされてなかったけど女達と仲良くなって、その後に男女間の喧嘩になった時に活躍して皆から頼りにというか男女間の事で頼りになる奴になったんだ」

きっとその人すごく頑張ったんだろうな・・・。

「ちなみにそいつの名言『男は度胸、女は愛嬌、両方持ってるアタシは最強』」

「あはははっ、確かに最強だわ!」

「まぁ、なんだ...だからお前の身体であーだこーだ言ったりしないから安心してくれ。俺にとっては体が女に男があろうが心が男と女だろうが変わらないとか思ってるから」

「わかったわ、それじゃぁ...頭、撫でてくれる?」

「えっと、こうか?」

ゆっくりと私の頭にスコッドの手が置かれてさわさわと優しくなでられる。
少しずつ、わずかだけどこの人の匂いが私に馴染んでいく...あぁ、これから私、この人の女になるんだ...。
もう少し、強く撫でて欲しいかな。

「スコッド、犬って飼ったことある?
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