第二話 チコ港町出発・野宿

※百合描写有


昨日、ティナに散々認識について口うるさく言われたりはしたが俺達は恋人になれたらしい。
・・・そういえば恋人ってどういうことすればいいんだろうな。
まぁ、何か不満があればあいつから言ってくれるだろう。
と、言うのは置いておいて。

「むふー、毛皮改の完成だよー!」

今日もアザラシ娘は元気である。
太陽もあと少しで頂点に立ちそうな時間、サバト・チコ港支部と書かれた看板が打ち付けられている大木の中身をくりぬいた様な見た目の建物から出てきた。
何と言うか見た目は変わっていない気がする。
その考えを読まれたのか、どうせ「むふふー」とか心のなかで思ってそうな顔で俺を見てくる。

「どこが改なんだ?」

「よくぞ聞いてくれたんだよ!刮目するがいいんだよ、新機能!」

そう言うとティナはジャンプする。
ズポッという音を立てながら毛皮から足が生えてきた。
セルキーを知ってる者ならイメージしてもらえるだろう、あのツルンとしたなんとも言えない海洋生物と陸上生物が合わさったような見た目に、長ズボンを履いている足が生えたのだ。
太腿から先が出るような感じで足が生えている。
・・・シュールだ。

「むふふー、足を出すためのチャックが追加されたんだよ!もちろんチャックは防水性だし足を出しても引っかからない特別製!」

あ、それでチャック付けるだけなのに数日かかったのか。
それにしてもよほど嬉しいのか延々と話すティナ。
そろそろ止めないと日が暮れるまで話し続けそうだ。

「どれだけすごいかは分かった、そろそろ時間だし行くぞ」

「む、それもそうなんだよ」

テクテクテクテク

「やだ、あの子かわいい〜」

「へ〜、マーメイド属も歩けるんだな」

「・・・」

テクテクテクテク

「新しい、いいなあれ」

「ぬぬぬ・・・マスコット系とは・・・あざといのじゃ」

「・・・」

やばい、すげー気になる。
今までピョンピョン跳ねながら移動していたのが普通に歩いているっていうのが気になる。
もともときぐるみっぽい見た目だからあれだったけど、足が生えたせいでものすごく面白いことになっている。

そして町の人の視線がすごい。
人間や魔物娘、老若男女関係なく面白いものを見る目でティナを見ている。
そうだよな、俺だって見る、絶対に立ち止まってトコトコ歩いてるマーメイド系の魔物娘を見る。
そしてそのことにこのアザラシはなんとも思っていねぇ!?
・・・何とか耐えながら町から脱出完了。



とりあえず気を取り直して、地図とコンパスを取り出す。
チコの町の周囲は小さな森になっていて、森を抜けるとだだっ広い平原、そしてこの大陸で最も大きな森にぶち当たる。
ティナはとりあえずその森を見たいと言うことでこのまま南東に向けて移動することにする。
順調に進めば明日の昼前には平地に出られるだろう。
しかし、なんというかココらへんは普通の森だな。
魔界っていうのはすさまじいと聞いていたんだが・・・。

「ティナ、この大陸は殆ど魔界だと聞いたがこのへんもそうなのか?」

「んーん、ここらは普通の人間界だよ。それにこの大陸の魔界は殆どが明緑魔界って言う名前の魔界で、人間界に魔力が追加されただけって見た目だよ。あとは・・・夜になると月の光で魔力が光ってキラキラするんだって!」

「ふむふむ・・・ありがとう、大体わかった」

明緑魔界か、魔界にも色々あるんだな。
覚えておいて損は無さそうだ。
それにしてもいい森だ、小動物たちの鳴き声も多く聞こえるし何やら甘い香りも・・・・ん?
いきなりティナが抱きついてきた。

「どうした?」

「スコッド、真面目な話いい?」

「あぁ」

「キスして」

「お前いきなり何を言って・・・うおっ!?」

いきなりこのアザラシは何を言ってるのかなんて思った次の瞬間、何かが足に巻き付く。
袖からナイフを取り出して切り裂こうとしたが間に合わず、気づけばどこかへ引きずられていった。


「うふふ、いい男はっけーん♪」

「おたく、どちら様?」

両足首が簀巻き状態にされ、おまけに宙ぶらりん。
反転している視界の目の前にはそりゃもうぼんきゅっぼんな緑色の肌とエメラルド色の髪な魔物娘さん。
えーっと・・・でかい花の中に居るからアルラウネか?
さっきの甘い匂いはコイツからか。

「私はリーネ、お兄さんは?」

「スコッドだ」

切ろうと思えばこの蔦を切ることは可能だ、でも感覚とか痛覚とかつながっているってなったらそれはなんか申し訳ないしな・・・。
さっきのティナの反応からしてこれを予想していたのか?

「ねぇ私と番にならない?」

いやらしく胸や腰、全身を見せつけながら誘惑してくるアルラウネ。
心は全く靡いていないのだが、どうやら体は正直のようだ頭がぼーっとしてくる
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