我が家の蜘蛛は押し掛け女房!?

「ただいま・・・と言っても誰もいないんだよなぁ・・・」
僕、吹田 三羽(すいた みつは)は実家で両親と暮らしている。
だが、これから数ヶ月間は一人で暮らさなければならない。

事の発端は、2週間前。
両親は、二人だけで遊びに出かけていた。
二人の時間をエンジョイしていたのはいいのだが、悲劇はその帰りに起こった。
追い越しを掛けたのか対向車がウィンカーもナシに飛び出してきたのだ。
あまりに突然のことで避けきれず、正面衝突。
しかも相手はアルファード。標準車で1.9〜2t、ハイブリッドともなると2.2tもあるあの車体を70km/hで真っ正面からぶつけられてはひとたまりもない。自身もおそらく60km/hで走っていただろうから、実際は130km/hでぶつかったようなものなのである。
事故車両を見ただけでわかる事故の惨状。正直言うと、両親の命があるのも不思議なくらいだ。現場検証をした警官は避けきれずにフルラップ衝突(※1)となったのが逆に良かったのではと言っていた。確かに、もしヘタに避けてオフセット衝突(※2)になっていたら間違いなく死亡事故となっていただろう。

そう言うわけで両親は病院送りとなってしまったのである。

(注釈)
※1:車両の全面で、真っ正面から衝撃を受け止めるぶつかり方。
※2:車両の一部(中心がずれた状態)でのぶつかり方。

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「あーあ、ロクなもん作れないなぁ・・・」
一応、一人暮らしの経験はあるのである程度の自炊はできる。
が、それなりに不自由はしていた。そんなある日である。

「あら、お帰りなさい。」
「・・・だ、誰だお前?」

帰ってくると、和服美人のお姉様が台所に立っていた。
しかし僕にはそんな知り合いはいない。

「あ、ご紹介が遅れました。私、この家に住まわせておりました蜘蛛の網恵(あみえ)と申します。三羽様がしばらくお一人で生活しなければならないとお伺いして、お手伝いに参りました。」
「は!?」
「ですから、この家に住まわせて頂いた蜘蛛ですわ。」
「まぁ、それが本当だったとして何で僕を手伝いに!?」
「あの大蜘蛛であるにもかかわらず、私を退治しようとしませんでしたから。」
「あぁ、それか。アシダカグモは生かしておいた方が得策だからね。」
アシダカグモというのはその見た目のインパクトと反して、実は益虫である。
蜘蛛の巣は張らないし、伝染病を移すこともない。
その上、天然の全自動ホイホイさんになってくれるのだ。

「ふふ、ご理解頂けて何よりです。」

ぽふっ。

「!!!!????」

網恵さんに抱きしめられ、しかもその大きな生おっぱいに顔を押しつけられた!?
「それならこれからも三羽様に悪い虫が付かないように守って差し上げますわ。」

網恵さん、そんなコトされたら僕はやられてしまいます。
「三羽様がお望みなら、私のことを犯しても構いませんわよ。」

その着物の下にボンデージ風のショーツとブラを着ているのが見えてしまった。
その姿に僕の「分身」は、つい「興奮」してしまった。

「あら、いけない。お料理の途中でしたわ。もうすぐですからね。」

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彼女の料理の腕はかなりのもので、しかも僕の好みを熟知していた。
なので恐ろしいくらいに箸が進んだ。
そんな夕食のあとである。

「三羽様。どうしても言っておかなければならないことがあるのですが・・・。」

そう言って僕をこの家で一番広い部屋である和室に連れ込んだ。

「で、何かな。」
「実はこの姿、仮染めのものなんです。」
「え?」
「実は上半身こそこのままなんですが、下半身は醜い蜘蛛なんです。」
そう言うと、着物の裾がゆっくりと膨らみ始めた。

「でも、それでも三羽様にはこの姿も見てもらいたいんです。それを知った上で、私をどうするか決めて頂きたいんです。」
そう言い終わる前に、網恵さんの下半身は彼女の言ったとおり大蜘蛛に変わっていた。

「どうです?醜いでしょう?恐ろしいでしょう?」
その表情はどことなく、不安げだった。

「網恵さん。」

「確かに、嫌いな奴も多いと思う。対外的にどうするかは、これからの課題だと思う。それに大きすぎるしね。」
「はい・・・」
「でも、これが網恵さんの正体だと言うことに関しては全く問題だとは思っていません。ましてずっと人の姿を取り続けるというのであれば、あなたのような美人は大歓迎ですよ。」
「本当ですか!?」

「あの、出来れば今すぐにでも・・・三羽様の筆下ろしをさせて頂きたいのですが・・・。」
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