ある日、隣の県の友達から「商店街でやってるイベントに行かないか」と誘われた。
商店街をジャックして、様々な企画が行われるのだそうだ。
思いついた奴もゴーサイン出した商店街も半端ねーよな、と思いながらイベントを楽しんでいた。
そんな見ず知らずの土地で、僕はとある女とたまたま知り合いになった。
彼女の名前は秋沢 舞。
距離的には片道50km。そんなに離れていないからと、舞さんは時々僕を訪れた。
彼女ばかりに来させては行けないと悪いと思って「今度は僕から行く」と言おうとした、まさにその瞬間僕を訪ねてくるのだ。
そのことを言っても、気にしないでと言うばかり。彼女に言わせると、稼げるので交通費は苦にならないらしい。
「むしろ十夜くんと会えない時間が苦痛なんです。」
これはデート代を出せないからと断ったところで彼女がさっと全額負担してしまうだろう。彼女とのデートから、逃れる術はないのである。
そんな中、僕はバイトをクビになってしまった。
マルチタスクが苦手だからと言うのがその理由だった。
僕がフリーになったのは、彼女には知られてはいけない。ますます突撃される。
しかし僕の口からはバイト先もクビになったっことも言ってないのに
「当分仕事もないことだし、映画でも観に行こ♪」
すっかりバレていた。いったい情報源はどこなのだろうか。
そんなこんなで、ますます彼女のアタックは激しさを増していった。
とは言えそろそろ蓄えが底を突いてきた。そろそろ次の仕事を探そうとしていた矢先、軽作業の手伝いが欲しいと言われたので泊まりがけで彼女の仕事場に行くことになった。職業判定の結果もバラしたので、それを見越した上でピッキング作業をすることになったのである。
そして、終業後。
「それじゃ、食事に行きましょうか。」
基本、この会社では残業は悪と見なされていて夜7時にはガードマン以外誰もいなくなる。明るいのは休憩室と社員食堂だけだ。まして休日出勤など御法度だという。
しかもこの時代に珍しく、人員は少し多めに取ってある。その分給料も少な目だとは言うが、前のバイトで「前後1時間のサビ残は当たり前、しかも給料も最低賃金一歩手前」という惨状を経験した自分には十分いい待遇に感じられた。
「よくそんなところで働けてましたね。」
「まぁ、雰囲気は良かったし仲間もいい奴ばっかりだったからね。あんな待遇で店長までオラオラ系だったら速攻辞めてただろうね。」
「今日の仕事を見る限り、あの部署でなら十分やっていけますよ。いっそのこと、うちで働きません?」
店までの道中、彼女とはこんな話をしていたのだった。
そう言えば、大事なことを訊いていなかった。
「ところで、今夜はどこに泊まれば?」
「実は・・・宿の方のミスで、ダブルブッキングになっていたそうなんです。ですから、うちに来てもらえませんか?」
「ぶっ!?」
ダブルブッキングで宿がない。ここまでなら「何だよそれー。」という反応になったのだが、後半のお泊まりのお誘いにはさすがに驚いて水を噴き出してしまった。
そしてしばらくの間、僕はむせていたのであった。
実は今日は僕を電車で来させて駅で迎えるというやり方だったので、車中泊という手も使えない。もう、彼女の家に泊まるしかなさそうだった。
というわけで、彼女の家にやってきた。
そして家に入るなり・・・彼女はメインのロックを締めた。
そこまではまだわかるのだが。
サブのロックもかけた。
おまけにドアチェーンまで。
どんだけ厳重なんだよと。
でもまぁ、こんな物騒な世の中だから仕方ないんだろうなと思ったので特に気にはしなかった。窓も全部防犯・断熱仕様のペアガラスだったのもその為だろう。
「それでは、寝室にご案内しますね。」
そう言われて通された部屋。
その部屋を観て、驚いた。
窓はロックされ、雨戸も閉められている。
まぁ、これは防犯のためだとしてもだ。
明らかに二人用の布団が用意されている。
それに呆気にとられていると・・・。
コンッ。
なにやら、金属音が聞こえた。
なんと、この部屋のドアにも鍵がかけられていたのだ。
外ならわかるが、室内のドアに鍵なんてトイレ以外に普通あるか!?
そして、彼女がとんでもないことを口走ったのを、僕は聞き逃さなかった。
「やっと見つけた旦那様・・・やっと追いつめた・・・絶対仕留める・・・」
その瞬間、彼女の身体に変化が。
手足が人のそれとは違う形になっていく。まるで肉食獣だ。
そして悪魔のような羽。
しかも妙な形の尻尾。
目もそれまでのおっとりした感じから、獲物を狙うハンターの目に変わっていた。
・・・おまけに服も、さっきまでスーツだったのに上下黒ビキニの上に黒エナメルのミニ浴衣(←僕の好みに合わせて用意したらしい)!?
いったい何が起こっ
[3]
次へ
[7]
TOP[0]
投票 [*]
感想