作者注)作中に出てくる実在の固有名詞はあくまでキャラ及びストーリーづくりのため登場しているものであり、関係各所とは関係ありません。
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これは、僕がとっても美しく、強く、優しく、人の痛みのわかる最高の妻を見つけたときのお話。
それは今から2年前の初夏にまでさかのぼる。
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「おらっ!これでも食らえっ!!」
「おわっ!」
・・・泥団子をぶつけられた。
「この国賊め!消え失せろ!」
・・・またか。
最近、こういう目に遭うことが多くなってきた。
僕は、昔から欲しかったクルマをやっと手に入れた。
ヒュンダイ・クーペの中期型で、おまけに6MTでサニーイエローと絵に描いたような希望通りの一台だった。
2.7Lというどうにも妙な排気量のせいで税金は高いし新車販売から撤退したからサポートに不安も残る。
だけどやっぱり乗りたい。今乗らなきゃ絶対後悔する。その一心で、これまで貯めたバイト代を叩いて判を押した。
納車前日はワクワクして眠れなかったし、行きたかったところにどんどん出かけた。
本当に、幸せだった。
・・・
・・・しかし、その幸せは長くは続かなかった。
ネトウヨ連中の暴走がますます過激になってきた。
ある程度の罵倒は覚悟していたし、最初は暴言だけだった。
しかし、最近は泥団子をぶつけられることが多くなってきた。
油性マジックで落書きされることもあった。
警察に被害届を出してはいるが、全然取り合ってくれない。
だから、ワイピングシートとプラモ用シンナーを常備している・・・
お陰で、あれだけ極上のコンディションだった塗装は艶を失いかけている。
あれだけ楽しかった一人でのドライブすら、まるで治安の悪い地域を丸腰で歩くかのような恐怖感でちっとも楽しめない。
とりあえず、逃げる。
とにかく、逃げる。
正直、かなり理不尽だ。
正規ルートで輸入された、
ちゃんと国内で形式認定された、
保安基準に適合したクルマを、
合法的な手段で入手し、
道路交通法に基づいて運転しているだけだ。
なのに、なのに。
何でこんなに迫害されなければならない。
悔しい。ただ悔しい。
自分に非など無い。
もしこれが許されるというのであれば絶対にプリウス - アンチトヨタでアンチエコカー(嘲)な僕から言わせれば「悪の権化」とも言うべき存在 - を、30台は燃やしているし文句も言わせない。まぁ、例えるならそう言うコトを奴らはやっていたわけだ。
このやり場のない怒りをどこにぶつければいいのか。
逃げたその勢いのまま、走り続けた。
気が赴くまま、山の奥、そして上の方に来ていた。
「^−$&‘’&(‘$“#!$%&=〜=〜)’‘(%&―――――!!!」
言葉にならない叫び。
それが僕に許された、ささやかな抵抗だった。
「なぁ〜にぃ〜? うるさいわねぇー。」
「え?」
後ろを振り向くと、洞窟があった。
そしてその奥から、大柄なお姉様が出てきた。
一本出ている角、赤みがかった肌・・・アカオニだった。
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私は、いわゆるアカオニと呼ばれる存在。
だから、それだけの理由で生まれてこのかた迫害され続けてきた。
普通に話しかけても、逃げられる。
場合によっては、石を投げられる。
そのまま反撃すれば退治されるし、かといって逃げれば嘲笑される。
にっちもさっちもいかないとは、こういうコトなのかもしれない。
当然の事ながら、私は、そして殺された私の両親も人を殺めたことはない。
言ってみれば彼らの思いこみによる暴走だ。
勿論、世界的に鬼が恐れられ、忌み嫌われる存在であることは重々承知だ。
そう言うことだから、鬼として生まれてきたことを憎むこともあった。
だけど、いや、だからこそこの固定概念を変えてもらうべく、私は真面目に生きた。
その結果としていい目を見た人たちは私を信じてくれたが、その数はわずか。
確かに私は背が高くて、筋肉が付いてて、肌の色が赤みを帯びていて、角も生えている。
だけど、人と争うようなことはしたくない。むしろ役に立ちたい。
力仕事を頼まれれば、いくらでも協力してあげたい。
もし助けを求められたなら、いくらでも力になりたい。
だけど、私の思いはみんなには通じなかった。
逃げられるか、攻撃の意志を見せるか。その二択。
彼らの頭の中に、私を知ろうとするという選択肢は出てこなかった。
長年感じ続けた疎外感。
それをどうにもできない苛立ち。
私が必要とされてないと言う現実。
・・・
・・・私は、存在してはいけない存在なの?
いつからか、私は洞窟にこもるようにな
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