中学の頃だっただろうか。映画館のポスターを見て何となく面白そうだったのでそのまま観た一本の映画。
オレンジのスープラがニトロ全開でかっ飛ばす。
「ワイルドスピード」に衝撃を受けた俺は、いつかあんなカッコイイチューニングカーでかっ飛ばしたいと思っていた。
・・・映画に憧れて数年後。
やっと自分のクルマを手にした。
とは言っても、ちょっとバイトをしているだけの学生の身分でそんな何十万もする中古車が買えるわけもなく現実は20年落ちのAT191カリーナ。
正直言って、ボロい。
おまけにSG-iって安グレード。正直、バンパーは傷だらけだしシートはだいぶヤレている。ワイスピやイニDに憧れた自分としては5MTだったのがせめてもの救いだ。親戚のじいさんが急に死んで・・・まぁ、要はお下がりって訳。
あの映画のようにニトロ全開でストリートをかっ飛ばす・・・なんてのは何年も先の話だろう。
でも、幸運(いや、不幸か?)も手伝って初めて手にした自分のクルマ。傷だらけの顔面は解体屋で適当なジャンクパーツを安く買ってきて自分で交換、通販で買った安いカッティングシートで作った自作バイナルを張る。見た目だけは何とか一端のストリートレーサーっぽくなった・・・と言いたいのだが、ワイスピ2のS2000を参考にしたらどこで間違えたのか完璧に痛車になってしまった。まぁ、それはそれでアリなのだが。
ボディはホワイトなのに何故か顔面がブラック。だが、本場USのスポコン系EFシビックで感覚が麻痺したのか・・・これも一つのデザインとして受け入れていた。
ある程度形も整ってきたので、お祓いでも受けてみようかと近所のお社に行ってみた・・・。
後から思えば、ずいぶん無茶苦茶なことをしたものである。
♪The dragon's coming out
To lead you to the power
And every one will see〜
道中、Powerful T.の The Year Of The Dragonを大音量で流していた。
まぁ、さすがに社に付く前には音量を下げたが。
余談だがオーディオにそんなに金をかけられるわけもなく、解体屋のクレスタから引っこ抜いた超が付くほど旧型のナビにセルシオのスピーカー、サブウーファーは知り合いの板金屋でもらってきた安物なわけで総額5000円かかったかどうかと言うくらいだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あら、それでしたらこれに必要事項を記入してください。」
社務所にいた一人の巫女さん。
予想だにしないタイミングで現れた美人のお姉さんに、思考が止まってしまう。
「あのー、もしもし?」
「あ、はいっ!えーと、これがこうでーーーっ!」
彼女はしょうがないわねぇ、と言った表情でくすっと笑った。
「今すぐでもできますけど、どうします?」
「は、はいっ!お願いしますっ!」
明らかに、俺は声が裏返っていた。ポーカーフェイスは苦手なクチなので、多分表情も大変なことになっていただろう。
「・・・。」
彼女は社務所からでてくるときも、すっと思わせぶりな視線を投げかけてきた。
「あーあ、彼女に目を付けられちゃったねぇ。」
「・・・え?私、何か地雷踏みました?」
「君、ここに奉ってある神を知らないのかい!?」
・・・知っているわけがない。この街には進学してから越してきたのだから。
「水を司る、龍神様だよ。」
「へぇ、そうなんですか。」
そこに、例の『彼女』がやってきた。
「それでは、はじめましょうか。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
無事お祓いが終了した後。
「良かったら、観ていってください。」
彼女は俺を本殿に連れて行き、その前で舞を披露してくれた。
彼女の美しさと舞の美しさが、二重に攻撃を仕掛けてくる。
神々しい美しさと、性的な意味での美しさ。罰当たりだがどことなくエロい、だけどやっぱり神々しい。こんな合わせ技反則だよと思いながら、彼女に見とれていた。
そして初穂料を納めようとした。
だが、その瞬間・・・彼女の目の色が変わった。
そして出てきた彼女に・・・手首を捕まれた。
「もう一度、本殿で待っていてください。」
それから数分後。
本殿には俺と彼女の二人っきり。
「あぁ、脚を崩してもいいですよ。ここの神様は、礼儀にうるさくないですから。」
正座がしんどそうな様子を見ての気配りに、素直に甘えることにした。
「先ほどから、私の身体を舐めるように見てましたよね。」
「ご、ごめんなさいっ!あまりに美しくて、ついっ!」
「あんまり熱い視線を送るモノだから、私も欲情しちゃうじゃないですか・・・」
アレ、「欲情」??
何か話が変
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