ある土曜日の夕方。
僕は高山フェリーターミナルへとクルマを走らせていた途中、リビングマートに立ち寄った。
20分後、お菓子や軽食、ドリンクなどを買って戻ろうとしたその時・・・
ドシャアアァァァァ・・・
なにやら轟音がしたと思ったら、その音の先にはフロントが壊滅的に破損したGS450hとTボーンを食らったもののはじかれた後に壁にぶつかったお陰で辛うじて横転は免れたムーヴ。
原因はというとAT車によくあるお話で、アクセルとブレーキの踏み間違いだった。
車内で顔面蒼白になっているいかにも小金持ちそうなGSの老夫婦と、一向に降りてくる気配のないムーヴのドライバー。
GSの方はあのサイズだし前面フルラップなのでベルトさえしてれば大丈夫だろう。気がかりなのはTボーン食らった挙げ句未だに出てこないムーヴの方だ。何やら液体が漏れているので心配になったが、匂いからしてガソリンではなさそうだ。緑がかった液体だから、おそらくはラジエーターのクーラントだろう。
「おい、大丈夫か!? 痛いところはないか!?」
そこにいたのは、ずいぶんな青い肌の美女だった。
だが今はそんなことを言っている場合ではない。僕はトランクから牽引ロープを取り出し、ムーヴを壁から引き剥がすことにした。いくら重いと言っても所詮は軽、サニーでなら何とか引っ張れるだろう・・・
そして1時間後。
牽引作戦での脱出も成功、怪我人はいないことがわかったところでローダーとユニックがやってきた。
どうやら彼女は僕と同じフェリーに乗るようで、かなり時間的に焦っていた。警察の事故処理の後は、「とにかく時間ないから今話すのは勘弁してくれ」と言った感じだった。
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「それにしても参ったわねー・・・タクシーも捕まらないし、バスもここからは出てないし・・・」
土壇場で突然足止めを食らった挙げ句移動のアシを失った彼女。困るのも無理はない。
そして、キャリーバッグとショルダーバッグ・・・かなり荷物もあった。
「あ、あの・・・僕もクルマごとフェリーに乗るんで、こんなんでよかったら・・・乗ります?」
見た目からして明らかに痛車方面にカスタムされているだけに、こんな美女となると嫌がられるかも知れない。が、このまま放っておくのも気が引けたのだった。
・・・
時間は20:28。
「ふーっ、何とか間に合ったぁーっ。」
僕「達」は乗船受付締切である出航30分前のギリ5分前にターミナルに到着。
何とか手続きも終了し、無事に乗船できたのだった。
「本当に、本日は助かりました! 何とお礼を言えばいいか・・・」
彼女がそう言っていたときだった。
ぐぅ〜っ。
そう、あの事故騒ぎで時間を喰われて夕食がまだだったのだ。
「あらあら。では、一緒にレストランに行きましょう。勿論私のおごりですよ。」
そして、食事を終えた後。
元々それほど乗客がいなかった上にかなりいい時間になっていたので、そのままいてもお咎めナシ。そんなわけで、しばらく席で雑談をしていた。
「え、それじゃあなたも『Cos-Pain Jack』に行くんですか!?」
『Cos-Pain Jack』とは痛車とコスプレがメインのイベントであり、自分はクルマの方で参加なのだが彼女はレイヤーとしての参加だった。
「えぇ。ただ、ひとつ気がかりなことが・・・実は、そのキャラクターがある方のオリジナルなのですが・・・許可を、取り忘れていたんですよね・・・」
そう言うと彼女は、そのキャラをタブレットで見せてくれた。
・・・ん、どこかで見覚えがあるなぁ・・・
「・・・って、これ僕の描いた奴じゃん!?」
「なるほど・・・って、えええっ!?」
互いに驚くこの事実。世の中は狭すぎる。
「ふふっ、それなら・・・あ、自己紹介を忘れてましたね。私はセントレス・ミストリア(Sentres Mistria)。この青い肌を見ての通り、種族はデビル。気軽に呼び捨てで呼んでくださいね。」
「あ、これはご丁寧に。僕は穐田 竜泉(あきた りゅうせん)、こちらこそ宜しくお願い致します。」
「はいっ。それで穐田さん、これから”りゅーくん”って呼ばせて貰ってもいいですか?」
「えぇ。大丈夫ですよ。でも会場でだけはHNの”Nightlair(ナイトレアー)”で呼んで頂けると幸いです。」
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「さて、そろそろ寝ますわ。」
「そうですね、そろそろ。」
時計を見ると時間はもう11時を回ろうとしていた。
この船は朝5時半に着岸。そして朝8時には下船しなければならない。
つまり逆算すると、朝の入浴も考えればもう寝なくてはならないのだ。
・・・のだが、セントレスはどこまでも僕に付いてくる。
僕のチケットは最
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