絡み付く幸せ

夜中に無性にレッドブルが飲みたくなったので、自転車に乗ってコンビニに向かっていた。
そう、ただコンビニに向かっていただけなのに、こんなことになろうとは。

路地から通りに出ようとしたその瞬間。
ガシャ、という音とともに僕はいきなり横に押し倒されたのだ。
何が起こったのか。
視線の先にあったのは、猛スピードで蛇行運転しながら無灯火で走り去る一台の軽トールワゴン。街灯に一瞬照らされたため、辛うじて車種が真っ黒のムーヴというところまではわかったのだった・・・

そう、僕は轢き逃げに遭ってしまったのであった。
「轢き逃げです・・・44-949の黒いムーヴ・・・」

程なくして、パトカーがやってきた。
「おい、大丈夫か!? 救急車がいま来てるから、無理に動くなよ!!」
現場に駆けつけた警官がそう、声をかける。
その後救急車も到着。僕はすぐストレッチャーに載せられた。

「こちら高山東AB-02、環状線A6交差点で交通事故あり、男性一名受け入れを要請する! どうぞ!」
「こちら舞原病院高山中央、傷病者受け入れOK、どうぞ!」

・・・こうして僕は、その夜に舞原病院 高山中央院に運び込まれてしまったのだった。

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病院に運び込まれた僕だったが、検査の結果骨折は確認されず軽い擦り傷と打撲と診断された。要は普通に自転車でコケたのとそう変わらなかったのだった。

「大きな怪我はないようだし、骨も折れてないね。でも念のため、明日以降改めて精密検査をしよう。今日は、とりあえず帰りなさい。」

僕が緊急用出入り口から出ようとすると、鉄っチン剥き出しでシルバーのギャランが僕を待っていた。降りてきたのはスーツ姿の男が二人。そう、2人はデカだったのだ。
「災難だったね。えーっと、キミを撥ねたのは車種が黒いムーヴで、ナンバーが44-949だったっけ。」
「えぇ、そうですね。3代目のカスタム系グレードと思われます。」
「実は昨日、ダークパープルで44-979のムーヴが盗まれたって被害届が上がってきてるんだ。鑑識が言うには現場にダークパープルのプラスチック片が散らばっていたらしいから、もしかしたらそれかもしれないね。」

「あーあ、ちょっとコンビニに行こうと思っただけなのになぁ・・・」
僕は理不尽な仕打ちへの怒りをどこにぶつければいいのかもわからず、ただただ歯ぎしりをしていたのであった。
自動車保険の特約が適用され、今後の病院代や休業による経済的損失についてはカバー出来ることになったのは不幸中の幸いである。

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事故から3日後。
あの翌日には精密検査を受け、今日その結論を聞くことになった。
目の前にいたのは、人事担当部長を名乗る女医さん。

「残念なお知らせよ。 長月くん、きみには1ヶ月間の検査入院を宣告するわ。現場の状況を考えると、私たちはまだ長月くんを安心して社会復帰させられないのよ。保険会社との話し合いも既に済んでいるから、安心してゆっくり過ごしてちょうだいね。」
彼女は堂々とした風格を持ちながらも、優しく僕にそう告げた。

そして彼女はこう続けた。
「さて、ちょっと時間いいかしら。この後の検査入院中のことについても話さなくちゃいけないし。まぁ、個人的な興味で関係ないことも聞くから、気楽にね。」
ちょっと不自然かなとも思いつつ、何故か二つ返事でOKしてしまった。

「それじゃ、ひとつ目の質問。これはアイスブレーク程度に考えて欲しいんだけど、長月くんはどんな女の子と男女の仲になりたいと思うのかな。もちろん肉体関係も持つ前提で。
あくまでも『if』のお話だから、理想全部乗せの彼女像を教えてね。」

いきなり女の子のタイプか。まぁ、男と話すなら鉄板ネタだろう。
「そうですねぇ・・・基本的には甘やかしお姉ちゃんタイプですね。体型で言えば身長は175cm以上、おっぱいも顔を埋められるくらいに大きくて、髪は黒髪ロングかな。」
ここまでは、結構おおっぴらに話す部分である。
しかし、それからがいつもと違っていた。僕は持っていたスマホを取り出し、イラストSNS「Pixarac」のマイページにアクセス。自分のオリキャラのうちの1人を表示させた。

「そうですね、こんな感じの女性が求めてきたら即・ベッドインですね。」
そこに描かれていたキャラクターの衣装は和服とスーツを足したようなデザインなのだが、下着は褌である上に「チラ」どころか一切隠されていない「モロ」だった。

普段ならリアルワールド、それもこんな場所では決して晒さないこんな性癖。
ところが、彼女と話しているとそれが何故か自然と口から出てしまうのである。

あぁ、この回答で地雷を踏んでしまった。
・・・と思ったのだが、彼女から予想外の言葉が飛び
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