助けた鬼のお礼が重すぎた。

それは、数ヶ月前の話だった。
「はぁ〜っ、やっぱ軽は高ェや〜。」
定食屋に入るなりカー○ンサーやG○oといった中古車雑誌を手に取った。

やはり田舎ゆえ、幸川県の軽の需要はかなりのものである。
どこかで見たデータだと軽のシェア全国平均が4割ちょい割るくらいの所で幸川は49.6%。隣県の徳原に至っては過半数の57.2%だそうで、幸川もこうなるのは時間の問題だ。
そんなわけで、こっちの軽の相場は全国平均よりも若干高い。

・・・ただ、我が国の国民というのはことクルマに関しては贅沢なものである。
30年前にまことしやかにささやかれていた「10年10万kmは廃車の目安」と言うのがこの時代になってもまだ囁かれているのだ。
アメリカじゃヒュンダイとかが10年10万マイル保証をやってるこの時代にだ。
タクシーなんか40万kmなんて序の口だというのにだ。
特にいわゆる団塊の世代なんかはその基準を疑おうともしない。

「うちらはクルマを売ってナンボな訳だけど、正直なところ言うとイマドキのクルマなんて液モノ、ゴムモノさえマメに換えてやればそう特別なことをしなくても軽でも15年15万kmなんかじゃまず壊れないね。まぁ、たまーにマフラーに穴あいたとかはあるけど、あんなのウチに全部任せてもせいぜい5万そこそこだし。
うちのお客さんは結構その辺りわかってる人が多いから、ヘタに新車を押し売りするよりサービスに力を入れてるんだよねー。」

・・・確か流谷さん、とか言ってたかな。
どっかのディーラーで営業やってるとかって言ってた人がそんなことを言っていたのを思い出す。

確かに、海外映画なんか観ると20年くらい前のクルマが普通に走っていたりする。
もちろん新興国などではなく、アメリカやフランス、ドイツなんかの西側先進国だ。
では、我が国はどうか。

・・・答えを知りたければ、解体屋に行って来い。
ヤードにうずたかく積まれた現実が、全てを語ってくれる。
時代錯誤な、その現実を。

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さて、この解体屋には叔父がいる。
「おっちゃーん。なんかうちからイモ届いたんだけど、おっちゃんにも持ってけって。」
「あー、洋介! ちょっと来い!! なっちゃん、そのイモ焼いといてくれ、おやつにしようぜ。」

叔父に呼ばれるまま、ヤードに入っていく。
「ちょっと距離行ってるけど、こんなんどうだ。」

目の前には、H58Aのパジェロミニがあった。

「俺も徳原から自走で引き上げたんだが、まだ潰すには早いと思ってな。」
なんでも、周囲に食らった10円パンチの修理代があまりに高額すぎるとして、「10年10万km乗ったし」と、廃車にすることにしたのだとか。
叔父は僕がジムニーを物色していたことを知っていたので、とりあえず話を出したのだという。
「まぁ、お前がどうしてもと言うのなら無理強いはしないが・・・検1年半付き、名変込みの4万でどうだ?」
「いいじゃん!! その話、乗った!!」
傷が周りに広がってるなんて言うけど、こいつを本来の使い方で使っていれば岩で傷が付く。まぁ、サビ止めにタッチペンは入れておくかな。
「でもさすがにカセットだけっつーのはキツいからCDくらいは欲しいけどねー。」
「そんなのそこら辺のスクラップから剥ぎ取ってけばいいだろー。」
実際、最近は純正ハーネスのどのケーブルがどの配線かなんてのはアルパインのサイトを見れば一発だ。そしてギボシ端子もエレクトロタップも熱収縮チューブも、さらにはハンダゴテまでもがダイソーで普通に売ってる始末。そりゃそう言う考え方にもなる。著者もよくお世話になっている。

「ま、ちょっと郵貯行ってくるわ。」
「おーい、せっかく焼いてるんだからイモくらい食ってけー。」

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それから1ヶ月後。
オフロードが楽しそうとは思ったものの、さすがにジムニストの如く攻めるレベルまではいいかな・・・と思っていた自分にはこれがちょうど良かったようだ。
軽トラベースだと笑われもしたが、いやいや軽トラを侮るなかれと。
著者もかつてDD51Tキャリイに乗っていたが、あれの走破性は侮れなかった。
田んぼに突っ込んで動けなくなったときもレバー操作一発、4L(4WD-Lo) モードで難なくクリアできたことばかりだった。まぁ、さすがにジムニーと比べられれば厳しいが。

そして今日は、気ままに峠を流していた。

「ひゃー、結構この道酷いなー。」
夏の台風が残した爪痕は、県境を越えたこの地に依然として残っていた。
迂回路もあるので、ほとんどの車はそっちを通っている。
何せ20cmほどの窪みがそこら中にあるのだ。そりゃ迂回するわ。

そして、ちょっと休憩しようと、かつて7時に開いて11時に閉まっていたらしいコンビニ
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