ある、晴れた休みの日だった。
僕は正直言って汚部屋である我が部屋を片づけなくちゃあなぁ、と兼ねてから思っていた。天気もいいのでまずは換気からと、ベランダのサッシを開けた。
何からやろうかと思っていたらとき、昔やってたバイトでの店長の口癖を思い出した。
「確実にできるところからやる。それが最速というものだ。」
と言うわけで、まずは台所からだ。
・・・食器を片づけるところまではうまくいったのだが、早くも資材不足が明らかになってきた。
・食器用スポンジ
・掃除機紙パック
・ゴミ袋
・ワイパー換えシート
・ダストマン
・ジップロック
・8mmボルト・ナット(※組み立て家具の交換用)
仕方がないので、買い出しに出向くことにした。
そして1時間後、買い出しから戻ってくると。
我が部屋の前に、一人の女性が立っていた。
その服装は、いわゆるミニスカメイド系。
「あれ、部屋を間違えたかな・・・?」
いや、そんなわけがない。
バイクのブレーキディスクで作った表札が、明らかに僕の部屋だと主張している。
「あのー・・・ご近所に、何か用ですか?」
「あ、本山 孝一(もとやま たかいち)さんですね。初めまして。私、ご両親からお話を伺って来ておりますアスティアル・アヴェラと申します。」
「・・・はい?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いったいこれはどういう事か。
あわててケータイを見てみると、オカンからの非着信通知が出ていた。
しかし、それは1時間ほど前。そう、リブワイド・モールに向かうべくチャリに乗ったそのあたりだ。
とりあえず、コールバックをかけてみる。
「孝一。いま、アスティアルって女の子が訪ねてきたんよ。あんたのお世話をしたいなんて言い出すんで、とりあえず本人と話してみなさいって事で住所だけ教えたけんねー。」
「もしかしてそいつ、銀髪ロングで黒いミニスカメイド服だったりした?」
「そやけど、なんで知ってるん? どっかイベントとかで会ってるん?」
「・・・そのアスティアル・アヴェラと名乗る女が、部屋のドアの前にいるんだ。」
・・・
「ええええーーーーっ!!??」
オカンが素っ頓狂な声を上げる。
「だってその子、たった3時間前にうちに来て、うちを出てってから2時間も経ってないんよ!?」
・・・なんだか話がやっかいになりそうだ。
とりあえずはアスティアルを部屋に入れ、放置気味になっていたソファに腰掛けさせた。
「でだ。そっちに来たアスティアルといま目の前にいるアスティアルが同一人物だったとして、何故こっちに寄越したんだ?」
「だってあんた、この年になって彼女もいないでしょー。身の回りのお世話もするって言うから、ねぇ。」
「とりあえず、同一人物か話してみてくれるか。」
「アスティアル、いまオカンと電話がつながってる。ちょっと話してみてくれ。」
「あら、お母様。先ほどは突然の訪問、失礼いたしました。」
「いえいえ、それより一つ引っかかるんだけど・・・孝一が言うにはもう部屋にいるって言うじゃない? どうやって1時間半強で高山まで行った上に部屋を突き止めたの?」
「私達ダークヴァルキリーは飛べますから、所要時間に関しては孝一さんのところまで一直線に飛んでいっただけです。場所に関しては、私たち向けのGPS内蔵コンパスがあるんですよ。」
「そう言うことだったの。それなら納得よ。でもアスティアルちゃん、あなたそんなかわいいのに、本当に孝一なんかでいいの?」
「はい!! 先ほどお会いいたしまして、とっても素敵な方だと思いました!! 私の本能が、嗅覚が、そう教えてくれています!!」
「あらー、そうなの!? だったらアスティアルちゃん、良かったら孝一のこと、食べちゃってくれない?」
「いいんですか!? それでしたら私、早速孝一さんと交渉しちゃいますよ!?」
なんか雲行きが怪しくなってきたぞ。
僕はあわててアスティアルからケータイを取り上げた。
「ちょっとオカン何言ってんねん!! さっきの話聞いとった!? あいつはダーク・・・何だったっけ、とりあえず魔物だって言ってたぞ!?」
「高山に住むことが決まった時点で最初っから魔物娘とつきあうことは想定内やし。あんたこのままじゃ、一生彼女なんかできんのんやから。もうあの子がそれでええんなら、そのまま喰わして学校辞めさして婿にあげてもええくらいやわ。」
・・・どうやらオカンも、そしておそらくは親父も完全に腹を決めているようだった。
「とりあえず、そのアスティアルってのが同一人物か確認してもらいたい。写メ送るからちょっと見て欲しい。」
そして数分後、メールの返信が来た。
やはり、同一人物だという。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「とりあえず、
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5 6]
[7]
TOP[0]
投票 [*]
感想