ある土曜のお昼前。
大学生の僕、間島 静流(まじま しずる)は「Pimp my Ride」のDVDを見ていた。
知らない人の為に解説するとその内容は「視聴者のポンコツ車を有名カスタムショップがイケてるカスタムカーに改造する」と言うものなのだが、その変わり方が半端無い。
何せベース車がボロ過ぎるのだ。
その後、馴染みの解体屋に足を運ぶ。
実は先日親戚のばーちゃんからアルトを貰ったのだが、テールランプが割れていたのだ。
軽のシェアが過半数というこの土地柄、同型のアルトはごろごろいる。
他にも同年式のミラ、ムーヴにワゴンR、ミニキャブにサンバー・・・と言ったそこそこ売れてる軽はどれもヤードに腐るほど転がっている。
それにしても現実は皮肉なものである。
アメリカの若者がまともに公道を走れるかも怪しいポンコツに乗っているのに、日本の解体屋では凹みすら見当たらないクルマがどんどん重機で切り裂かれているのだから。
今回のように10年も経てばテールランプが割れただけで買い換えるなんて言う現象も正直言って異常だと思うし、「Pimp my Ride」の出演者に言ったら殴られかねない。
どおりで海外の貿易商が日本の解体屋でカローラやハイエースを買い漁るわけだ。
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さて、話を元に戻そう。
テールを固定しているネジを外す為に、リアハッチを開けた時のことだった。
ラゲッジルームにはゴミがたくさん詰まった箱。
解体屋ではこんな事は珍しくない。特にミニバンは「ゴミ箱」だと思った方がいい。おそらくどこかの整備工場が、廃車を送るついでにゴミを詰め込んだのだろう。
-Please my master, pimp my body.-
だがそんな箱の中に、意外とお宝が転がっていたりするのだ。
プラモのジャンクパーツなんかは結構出てくる。
この前など、無修正のAVが出てきたりもした。
そして、今日の箱の中には・・・
傷だらけの人形があった。
実はフィギュアのフルスクラッチを検討していた僕にとって、これはベースに使える。
「はーい、じゃ1500円ねー。まいどー。」
僕は人形とテールを持って、解体屋を後にした。
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どうやらこの人形、硬質プラスチックでできているらしい。
それならと、プラモの工作材料を取り出して大改造。
補修・改造範囲が広いので、ポリパテもどんどん減っていく。
そして、何だかんだで整形が終わると今度は塗装だ。
・・・塗り終わると、何というか・・・いけない妄想が膨らんでくる。
調子に乗って乳首まで作るんじゃなかったかな。
そして2週間後の土曜日。
最後に衣装を制作し、ようやく完成。
1kg缶のポリパテをほとんど使い果たし、塗料も新しく買って。結構コストは掛かってしまったけどね・・・。
さて。
作品というのは最初のうちは出来上がって嬉しいので綺麗に見えているものの、次第に細かい荒が気になってくるものだ。
実際、今回もパテの「巣穴」が気になって・・・リューターで一旦穴を広げてパテを詰め直そうとしたのだが・・・
「やめてっ!!」
何だ、この声!?
驚いて思わずリューターを落としてしまった。本体は無事だが、ビットはもうダメだ。
「一体どういうコトなんだ?」
ふと後ろを見ると、消していたはずのテレビが点いていた。
リューターを落とした弾みでリモコンのスイッチが入ったのだろうか。
「今日はリビングマートのゴーゴー祭!! エルカポイント5倍、更にエルカマネー、またはエルクレジット払いならボーナスポイントプレゼント! さぁ、みんなでゴーゴー!!」
あ、そうだ。今日は買い物に行く日だ。
テレビを消し、キーを持ってスーパーに向かった。
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「よっ!! お前も買い物か?」
「あ、どーも。」
解体屋のおっちゃんに声を掛けられた。
まぁ、このスーパーは解体屋の隣なのでばったり会っても不思議じゃない。
「そう言えば、この前人形持っていかなかったか?」
「えぇ、持っていきましたけど・・・マズかったですか?」
「いや・・・だけど、妙な噂を聞いたんだ。ある日突然、等身大になって動き出すとか。特に手を掛ければ掛けるほどそうなるとか。まぁ、ただの都市伝説だろうけどな。」
「でしょー。そんなのにビビってたら解体屋なんかやってられないんじゃないですか?」
「確かにな。あんまり考えたくないけど、血なまぐさい事故車もたまに入るからなー。」
「そっちの方がヤバいですって・・・。」
「あ、そうそう。この前トッポが入ったんだけど、純正アルミ買うか?」
「いいですね、また今度モノ確認
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