透は、雑木林沿いの道を一人で歩いていた。辺りには誰もおらず、鳥の鳴き声だけが聞える。
透は、学校からの帰りだ。学校からは、他の生徒と一緒に帰る事を指示されていた。だが、透には友達がおらず、一人で帰路についている。
僕みたいなやつは、変な人にとってはカモだろうな。透は、苦笑しながら歩いている。
透の予想は当たっていた。彼は、危険の入り口に立っていた。ただ、彼の予想とは違い、人ならざる者が彼を狙っていた。
草木をかき分ける音と共に、雑木林から白い姿が現れた。白い馬の下半身が、透の目の前をふさぐ。透が見上げると、馬の下半身に接続した人間の上半身が透を見下ろしていた。顔は若い女のものであり、頭には一本の角が付いている。
下半身が白馬である女は、透に微笑みかけた。そして口を開こうとする。
「こんにちは!」
透は、女の顔を正面から見上げ、元気よく挨拶をした。女は、少しひるんだ様子をする。
透は、学校で変質者対策の教育を受けていた。知らない人に声をかけられたら、真っ直ぐ見つめながら大きな声であいさつをしろ。そう教えられていた。気の弱い変質者なら、これでおかしな事をする気を無くす。
女は、再び笑みを浮かべて透に話しかけてくる。
「こんにちは。ねえ、ちょっと君にお願いがあるの」
女は、整った顔に柔らかい微笑みを浮かべている。だが、透の進路をふさいでいる。
「私の車の調子が悪くてね、それで君に手伝って欲しいのよ。難しい事は無いから、少し手伝ってもらうだけだから」
女は、透をじっと観察しながら言う。
「お姉さんは、ケータイかスマホを持っていませんか?それで人を呼んだらいいと思いますよ」
透は、父からロードサービスの事を聞いていた。車の調子が悪いならそれを頼れば良いはずだ。
「それが、ケータイの調子も悪いのよ。それで、悪いけれど君にお願いしているのよ。手伝ってくれたらチョコレートを上げるから」
女は微笑みを浮かべているが、目は笑っていない。
透は、背に汗が流れる事を自覚した。話がどんどん危なくなってきている。透は、人が通りかからないか見回した。誰も通りかかる気配はない。透は、携帯電話やスマートフォンを持っていない。学校内で禁じられており、通学に持って来る事が出来ないのだ。「教育再生」を唱える市長の指示に従い、学校が禁じたのだ。
透は、女をじっと見る。白馬の下半身を持ち頭に角を持っている事から、ユニコーンと言う魔物だと分かる。透は、ユニコーンを見た事が以前にあった。
「すみませんが、僕は急いでいるので」
透は、ユニコーンの脇を通り過ぎようとする。だが、ユニコーンが塞いでしまう。透は元来た方へ走ろうかと考えるが、馬の脚にかなうとは思えない。
「だったら、人のいる所を教えてくれないかな。案内してくれると助かるのだけど」
ユニコーンは、透に迫ってくる。透は後退りを始める。
「この道をずっと行くと、人の家が有ります。そこで連絡をさせてもらうといいですよ」
ユニコーンに背を向けて逃げ出したい衝動から、危うく自分がこれから行く方を指さしそうになる。全力で自分を抑えて、透は自分の来た方を指さす。
「そうなの。そこまで案内してくれると助かるわね」
ユニコーンは、さらに迫ってくる。
「すみません、僕は急ぐんです。こちらに行けば人がいますから」
透は道の端により、自分が来た方を手で指し示す。ユニコーンは、透の指し示す方へ行こうとせずに透に迫ってくる。
その時、人の話し声が聞こえて来た。透は、ユニコーンから目を離してそちらを見る。
その瞬間に、ユニコーンは音も無く動く。手に布を持ち、透の口と鼻をふさぐ。もがく透を、ユニコーンは抑え込む。布から漂う甘い匂いを嗅いでいるうちに、透の体から力が抜けて意識が朦朧としてくる。
「思った以上に効くわ。さすが魔界の薬ね。クロロフォルムどころではないわね」
意識を失う前に透が見たものは、歓喜の表情を浮かべるユニコーンの顔だ。
透は、朦朧とする意識の中で目を覚ました。頭がふらついて状況を理解する事が出来ない。ぼんやりした頭をはっきりさせようとするが、うまくいかない。
それでも、次第に自分の状況が分かってくる。透は、ベッドに寝かされていた。部屋は白い壁で覆われており、一つだけある窓は格子で覆われている。窓の反対側にはドアが有る。窓の側で換気扇が回っており、部屋の空気は悪くは無い。
部屋は六畳ほどの広さであり、ベッドの他にはテレビと本棚が有るだけだ。部屋は掃除されているらしく、汚れは見当たらない。ベッドも清潔なシーツで覆われている。そのベッドの側で、ユニコーンが透を見下ろしていた。
「やっと童貞君を手に入れたわ。ショタなら他の雌の手は付いていないからね。もっと早くやればよかったわ」
ユニコ
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