リンユーちゃんは、お日様が輝く中で青い自転車をこいでいました。今日はいいお天気なので、おうちでいるのがもったいないのです。お父さんとお母さんが誕生日に買ってくれた自転車に乗りたくなったのです。
「面白い事ないかなあ」
リンユーちゃんは、のんびりとつぶやきました。パンダみたいな姿なので、のんびりした様子が似合っています。リンユーちゃんは、レンシュンマオと言うパンダみたいな姿の魔物娘なのです。
リンユーちゃんの頭には、黒くて丸っこい耳が付いています。手と足は黒い毛で覆われています。お尻からは丸っこいしっぽが出ています。可愛らしい女の子の顔なのですが、リンユーちゃんはパンダの魔物なのです。
でも、怖い魔物ではありません。丸くてピコピコ動く耳は、のんびりした表情を浮かべている顔と良く似合っています。手足の黒い毛は柔らかそうです。しっぽはフリフリ良く動きます。着ている水色のチャイナ服は、パンダみたいな姿と良く合っています。動物園にいるパンダよりも可愛らしいのです。
お空は晴れ渡り、気持ちのいい風が吹いています。その中を、リンユーちゃんはフサフサした毛の生えた足で自転車をこいでいました。面白い事や物を見つけようと、心に決めながらこいでいました。
今日は天気がいいので、人がいっぱい出歩いています。人間の男の子や女の子が遊んでいました。リンユーちゃんは、その子たちにニッコリと笑いかけます。話しかけようと近づいていきました。
でも、人間の男の子や女の子たちは、リンユーちゃんを見ると顔をそむけてしまいます。リンユーちゃんが近づくと、みんなどこかへ行ってしまいました。
人間と魔物娘はいっしょに暮らすようになって、もうずいぶん経ちます。でも、人間の中には、魔物娘を嫌いな人も多いのです。人間の子供の中には、魔物娘の子を仲間はずれにする子も多いのです。
リンユーちゃんは、人間の子に意地悪をされて悲しくなってきました。もう、おうちに帰ろうかと思いました。でも、もしかしたらいい事があるかもしれないと思い、そのまま自転車をこぎ続けます。
リンユーちゃんは、町をぬけて野原を通る道を自転車でこいで行きました。
野原には、黄色い菜の花が一面に咲いています。辺りにはいい香りがただよい、ミツバチが飛び回っています。リンユーちゃんは、菜の花畑を見ている内に悲しい気持ちが無くなってきました。
道の前の方を見ると、一人の子が赤い自転車をこいでいました。リンユーちゃんは、また意地悪をされるかもしれないと悲しくなります。でも、もう一度だけ声をかけてみようと思い近づいていきました。
自転車をこいでいる子は、丸い耳と尻尾が付いていました。自転車をこぐたびにピコピコと動いています。手足は、茶色いフサフサの毛が生えています。その子は魔物娘でした。なんだかクマに似ています。
「こんにちは、いい天気だね」
リンユーちゃんは、笑顔を浮かべながらあいさつをします。
「こんにちはなんだな、いい天気なんだな」
その子は、あいさつをかえしてくれました。なんだか少し変なしゃべり方です。
「きみ、どこから来たの?」
リンユーちゃんは、笑いながら聞きます。
「ぼくはサーカス団から来たんだな。お客さんの前で自転車をこぐんだな」
そのクマの女の子は、男の子みたいに「ぼく」という言い方をしました。
「そうなんだ。わたしは雑技団から来たんだよ。お客さんの前で自転車に乗るんだよ」
リンユーちゃんは、クマの女の子と同じような事を言います。
「うそだろ」
「きみもうそついてるよね」
二人は笑い合いました。クマの女の子は、なんだかおもしろそうな子です。のんびりした話し方も、自分と合いそうな気がします。
その子は、体中に柔らかそうな茶色い毛をはやしています。その上に青いオーバーオールを着ています。女の子はのんびりとした顔をしていて、その子の毛と服とうまく合っています。クマの女の子は、グリズリーと言う魔物娘です。
「わたしの名前はリンユー。きみの名前は何て言うの?」
リンユーちゃんは、クマの女の子の名前が知りたくなりました。
「ぼくの名前はアナスタシア。アーニャと呼んでほしいんだな」
リンユーちゃんは、アナスタシアと言う名前よりもアーニャと言う呼び方のほうがいいような気がします。
「よろしくね、アーニャちゃん」
「よろしくなんだな、リンユーちゃん」
二人は名前を呼び合うと、黄色いお花畑の間を自転車で進んでいきました。
お花畑は無くなり、辺りは草原になりました。そして草原の先には森があります。道は終わることがなく、森の中へと続きます。
リンユーちゃんは、森をじっと見ました。なんだかうす暗くて怖い感じがします。でも、おもしろいことを探すには、危ないことをしなくてはいけない気が
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5]
[7]
TOP[0]
投票 [*]
感想