狂った世界で淫乱ウサギと戯れよう

 世界が狂っているのだろうか?俺が狂っているのだろうか?俺は、最近こんなことを考える。
 今俺の目の前には、黄色の空が広がりオレンジ色の草原が広がっている。先ほどまではピンク色の雨が降っていたが、今は晴れ上がって紫色の太陽がピンク色の雲から顔を出している。
 念のために言うが、俺は薬をきめているわけではない。それどころか酒を一滴も飲まない状態で、目の前の情景の説明をしているのだ。ついでに言うと、俺は生まれてから一度も薬をきめた事は無い。酒は飲むが、アルコール中毒になるほど飲んだ覚えはない。
 俺の周りからは、男と女の喘ぎ声と嬌声が聞こえる。先ほどのピンク色の雨は媚薬であり、浴びた者をセックス狂いに変える。俺の目の前でセックスの狂宴が繰り広げられているのだ。俺は、傘をさしていたから平気でいられた。
 バニーガールのような恰好をした女が、男に挿入されたまま円を描くように振り回されている。猫の耳と尻尾を生やした女が、四つん這いになって男に犯されながら走り回っている。人前なのに恥ずかしがる様子は無く、むしろ見られて喜んでいる。この世界では当たり前の光景だ。
 哄笑する太陽を見ながら、俺はこの世界に来た時の事を思い出していた。

 俺は、二人の女を追いかけてこの世界に迷い込んだ。一人の女は、男が着るような三つ揃えのスーツを着ていた。それだけなら変わった格好をしている女としか思わなかったが、その女は頭にウサギの耳が付いていた。そのウサギの耳を生やした女は、ベストのポケットから懐中時計を取り出しながら走っていた。
 その女の後ろを、エプロンドレスを着た金髪の少女が追いかけていた。少女の背中からは蝙蝠のような翼が生え、スカートからは尻尾がのぞいていた。
 あまりにも異様な光景に、俺は思わず二人を追いかけてしまった。その後の事は良く分からない。前へ進んだのか、後ろに進んだのか、右へ曲がったのか、左に曲がったのか、上へ昇ったのか、下に落ちたのかさっぱり分からない。気が付いたら、廊下の様な所に立っていた。
 薄暗い家の中をさんざん迷った後に外へ出てみると、明るくけばけばしい色彩で覆われた世界が広がっていた。ピンク色の空の下、水色の葉の木が生えて紫色の実がなっている。オレンジ色の斑点のある黄色いキノコが、そこら辺じゅうに突き出ている。そのキノコの大きさは様々だが、中にはかさの直径が五フィートある物も生えている。
 俺は事態を把握する事が出来ず、馬鹿みたいに口を開けて立ち尽くしていた。

 それから俺は、あちらこちらをさ迷い歩いた。具体的な地名は分からないので、あちらこちらとしか言えない。地名を聞いたが、「公爵夫人の鍋」だの「女王陛下のフィンガーボール」だの、何の意味があるのか分からない物ばかりだ。オークとか言う豚みたいな赤ん坊がガラガラを鳴らしている所が、なぜ「公爵夫人の鍋」なのだ?
 俺はさ迷い歩きながら、体が大きくなったり小さくなる羽目になった。瓶に入ったジャムみたいな物を食べると、三十フィート位の大きさとなった。干しぶどうの乗ったケーキを食べると、五インチ位の大きさとなった。体が大きくなる事も訳が分からないが、服も破けずに大きくなる事も分からない。どういう原理になっているのだ?
 だが、キノコに比べればマシかもしれない。キノコを食べたせいで、首が五十フィートも伸び、手足が伸び縮みを繰り返した。その挙句、ペニスが測る事も出来ないほど伸びたのだ。天にまで届く俺のペニスを見て、太陽が爆笑しやがった。
 なぜお前は不用意に変な物を食べたのだと、言う人もいるかもしれない。俺も初めは食う気が無かったが、あまりにも腹が減って我慢できなかったのだ。餓死するくらいなら、変な物でも食べようと考えたのだ。
 幸い体は元の大きさに戻ったから良いようなもの、戻らなかった時の事を考えると頭がふらつく。天まで届くペニスを抱えて生活するなど、考えただけで卒倒しそうだ。
 体の変化ほどは目立たないが、俺の言葉と思考もおかしくなった。例えば、俺はフィートやインチと書いたが、俺が元いた所はメートルやセンチを長さの単位として使う。それがこの世界に来たらいつの間にか、俺は無意識の内にフィートやインチを使い始めた。
 初めは、この世界に合わせる事を強制されたのかと思った。だが、この世界の他の奴はメートルやセンチを使う者もいれば、尺や寸を使っている奴もいる。この世界の基準が分からない。
 言葉とも関係あるが、俺の頭もおかしくなった。例を挙げると、俺は計算が出来なくなった。数学は元から苦手だったが、いくらなんでも掛け算くらいは出来る。それが今では、掛け算をやると4×5=12などとやってしまう。そのくせ微積分の計算は出来るのだから、支離滅裂だ。
 俺自身に起こった事も滅茶苦茶だが、この世界の住
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