雌豚革命

 「今こそ革命を起こすときだ!」
 ローザが叫んだ。
 俺はため息をつきそうになった。
 ローザのたわ言は今に始まったことではない。空気を吐くように放送禁止用語を喚いている様な女だ。
 それにしても革命を起こすとは。
 相手にしても馬鹿馬鹿しいので黙っていると、また叫びだした。
 「オークは虐げられている!搾取されている!支配者を打倒せよ!」
 ローザはオークだ。頭のねじの飛んだオークだ。
 確かにオークは人間とは違う。考え方も違うだろう。しかし、それにしたってこのオークはおかしい。
 エロの開放と称して、白昼堂々裸で走り回る。ドラッグを解禁しろと叫んで、厚生労働省の前でクスリをきめる。清潔は病気だと喚いて、ニュータウンでごみを撒き散らす。
 実際逮捕されかかったことは、一度や二度ではない。まあ、魔物娘の人脈?で事なきを得ているらしい。
 俺はなぜ、こんなやつと恋人になったんだろう?
 まあ、肉奴隷、肉便器としては悪くないが。
 「革命のための宣言書が必要だ!羊に成り果てた愚民を覚醒させ、猛り狂う豚にしなくてはならないのだ!」
 ワーシープが怒りそうな表現だ。まあ、あいつらは寝てばかりだから問題ないか。
 それにしても『猛り狂う豚』ねえ。まあ、オークは豚だが。
 ローザは、パソコンを開いた。そして夢中になってキーボードを叩き始めた。
 ローザは、いちいち声に出しながらキーボードを叩いている。
 「日本に魔物が出没する。オークという名の魔物が」
 どっかで聞いたな、これ。
 「この魔物を倒すため、同盟が結ばれている。リリムと総理、魔物娘と人間男、喪女とキモオタ」
 キモオタが敵なのか。
 「腐臭に満ちた世界で窒息する者たちよ」
 もしかして昨日鼻フックして、鼻にチ○ポをこすりつけたことを根に持っているのか?
 「汚物にまみれ、地を這い呻吟する者たちよ」
 拘束した状態で浣腸するのは、やりすぎだったな。
 ローザはどんどん文章をたたき出している。短時間にすごいスピードで大量の文章を書き出し、読み上げている。
 「支配者どもよ、震えおののくがいい。オークは首輪のほかに失うものは何もないのだ!オークが手にするのは世界の男である!すべてのオークよ、団結せよ!」
 なんかどっかの団体からクレームが来そうな文章だな。大丈夫か?
 ローザは文章を書き終えたらしい。
 「この宣言文を、ネットで公開する。同志を募るのだ!」
 ローザは、拳を突き上げながら叫んだ。
 やらせとくか。俺はため息をつきながらそう思った。

 俺は、ローザを甘く見すぎた。オークを甘く見すぎた。
 ローザに大きな騒動を起こすことが出来るなど、思ってもいなかった。
 ローザがネットに公開した文章は、はじめは軽くあしらわれた。オークたちも、まともに相手をしなかった。
 だが、どんな集団、種族にも少数の過激な者たちがいる。オークも例外ではない。
 オークの過激派は、ローザの檄文に強く共感した。そして、ローザの文書の宣伝に努めた。
 次第に、ローザの文章を読むオークが増えていった。共鳴者もそれにつれ増えていった。
 大きな転機が起こった。ローザの檄文が出版されたのだ。
 売れれば何でもよいというある出版社が、ローザの檄文を書籍化した。ネットでの評判を見て売れると判断したらしい。
 本のタイトルは『オーク党宣言』となった。
 『オーク党宣言』は、たちまちベストセラーとなった。
 日本に来た魔物娘の中で特に多いのがオークだ。オークは、魔物娘の中でも特に好色だ。普段は臆病で怠惰だが、男が絡むと違う。魔界から大量に押しかけてきた。そして男にあぶれた。
 人間の男達は、サキュバスなどの露骨にエロい魔物娘を好んだ。あるいは、バフォメットや魔女などの見た目が幼女の魔物娘を好んだ。まあ、後者は日本特有の現象だが。
 いずれにせよオークは男にあぶれた。そしてオーク達の不満が高まっていた。
 つまり火薬がばら撒かれた状態だった。
 そして、そこに火をつけたのがローザの『オーク党宣言』だった。
 オークたちは、むさぼるように読んだ。
 ローザのアジに感激した。
 そして革命のための具体的な行動を起こした。
 革命組織をつくり始めた。
 オークは組織づくりに長けている。もともと集団で行動する種族のためだ。
 組織運営に必要な金を集めることにも長けていた。貪欲さゆえに、長年金を追い求めて来た。そして金を稼ぐ能力を身につけて来た。刑部狸に次ぐ能力があるだろう。
 あっという間に、オーク党の組織が出来た。
 ローザは、オーク党の委員長に祭り上げられた。
 まずいことに、ローザは単なるみこしではなかった。カリスマ指導者となった。
 普通の人の間でいれば、単にエキセントリックな女だ。だが、過激な集団内では魅力がある
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