ラミア妻との生活

 日が没し、残照が辺りをわずかに明るくしていた。西の空は、わずかに赤く染まった部分が紫紺色に飲み込まれて行こうとしている。県道を走る車は、いずれも大分前からヘッドライトをつけて走っている。
 市営バスの後ろのほうの座席では、人間の男と蛇の魔物であるラミアが身を寄せ合っている.季節は夏であるにも関わらず、彼らは暑くは感じないらしい。しっかりとお互いの体を付け合っている。
 二人は勤め帰りであり、男はボタンダウンシャツにスラックス、ラミアはビジネス向けのシャツにスカートという格好だ。ラミアは、豊かな黒髪と黒い蛇体の下半身を持ち、上半身の人間の部分は大理石のような白い肌をしている。吊りあがった紫色の目が妖艶な雰囲気を出しており、整った細面と合っている。
 ラミアは、他の乗客に見えないように男の太股を撫でる。男もラミアの腰に手を回す。二人は顔を見合わせ、かすかに微笑みあう。
 二人は夫婦だ。

 二人は自宅近くの停留所で降り、近くのスーパによる。夕食の材料を買うのだ。
 スーパーの中は、勤めを終えた人々の姿がある。その中には魔物の姿もあった。蜘蛛の下半身を持ったアラクネが、豚肉のパックを見比べている。馬の下半身を持ったケンタウロスが、人参をかごに入れている。人間離れした緑色の巨体と角を持つオーガが、バーボンの瓶を手に取っている。
 男とラミアは、冷やし中華ときゅうり、トマト、卵焼き、蟹カマボコ、中華くらげなどをかごに入れていく。暑い中煮炊きはしたくないので、冷やし中華は流水麺だ。後はシュウマイとビールをかごに入れる。明日の朝食用に、食パンと卵とハム、ヨーグルトをかごに入れた。
 二人ほど待ってから、レジの会計が始まる。レジ係はワーウルフの少女だ。頭にイヌ科独特の耳が付いており、制服のスカートからは柔らかそうな尻尾が出ている。会計が終わると、ワーウルフは耳と尻尾を揺らしながら「ありがとうございました!」と元気よく言った。
 魔物娘が人間社会に住み着いて、十年になる。驚くほどの早さで、彼女達は人間社会に入り込んで来た。日本では、地方都市でもこの様に魔物娘の姿が見られるようになっている。
 男とラミアのように、夫婦になる者も出て来ていた。

 二人は一軒のレンガ色の角ばった住宅に入って行く。この家が彼らの家だ。二人が勤める不動産会社が売り出していた、中古住宅をリフォームした物だ。結婚した時に、会社を通して買った物だ。この家は地方都市の郊外にあるため、土地も大都市に比べると安い。
 家に入ると、スーパーで買った食品を冷蔵庫の中にすぐに入れる。夏に食品を冷蔵庫から出しっぱなしにしておけば、すぐに痛む。二人は、その事で以前散々な目にあった。
 家の中は締め切っており、昼間の熱気がこもっているためサウナのような有様だ。二人は台所やリビング、寝室の窓を急いで開ける。このままでは熱射病になってしまう。
 その後、すぐに二人は浴室に向かう。二人は、帰宅途中に十分汗をかいた。特に男のほうのシャツとスラックスは、汗で広い範囲が濡れている。すぐにでも汗を流したかった。
 もっとも、すぐにはシャワーを浴びない。いつもの「儀式」があるからだ。脱衣室周辺の窓と、他の部屋へ通じるドアを開ける。そして扇風機をつけた。
 ラミアは、シャツを脱ぎスカートを下ろす。ラミアは、黒い下着姿となる。紐の部分とシースルーの部分が合わさった、扇情的なデザインのブラジャーとショーツだ。乳首は辛うじて隠れ、ヴァギナの一部は透けて見える。
 ラミアは男に擦り寄る。ラミアからは、汗と香水が混ざった甘い香りがする。男の好きな香りだ。ラミアは、ひざまずくと上目遣いに微笑む。男のスラックスのファスナーを、紫のルージュを塗っている唇ではさみ引き下ろして行く。トランクスの端を口で軽くくわえると、ファスナー同様に引き下ろしていく。濃密な熱気と臭いと共に、男のペニスがラミアの鼻先に突き出された。
「アスパシア、やっぱり体を洗ってからやらないか?」
 男が、困った顔でラミアに言う。
「あら、あなたったら。即尺なんてやってくれる人は、そういないのよ。それに洗わないからいいんじゃない。あなたの体を感じられるでしょ」
 アスパシアと呼ばれたラミアは、笑いながら言う。そのまま鼻を赤い亀頭に付け、わざとらしく音を立てて臭いを嗅ぐ。
「それにこうして臭いで、あなたが浮気しているかいないか分かるでしょ」
 アスパシアは、釣り上がった切れ長の目で見上げる。獲物を狙う蛇のような目だ。
「四六時中一緒にいるのに、浮気なんかできるわけないだろ?」
 須佐という名の男は、呆れたように言う。
「トイレまで一緒に行くわけにもいかないからね。それに今日は、倉庫に業務マニュアルを取りに行ったでしょ。私がトイレに行っている間に」
 アスパシア
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