男は寝台に横たわっていた。薄暗い部屋はランプが照らし、香炉からジャスミンの香りが漂っている。男の意識は朦朧としていた。自分がなぜここに居るのかさえ、うまく把握できなかった。
男の上には、一人の女がのしかかっている。男の体を愛撫し、口付け、頬を摺り寄せている。湿った摩擦音が響いている事から、男と女は交わっている事が分かる。
男にまたがっている女は、妖艶な美女だ。涼しげな目元が特徴的な整った顔をしていた。豊かな胸と引き締まった腰をした、褐色の肌の官能的な肢体をしていた。露出度の高い紫色の薄物の服と、体の所々に施された紋様が妖艶な雰囲気を高めている。上半身だけならば、間違いなく男を興奮させる美女だ。
下半身のため、女は人間離れしていた。女の下半身は、赤茶色の固い殻のようなもので覆われていた。先のとがった六本足を持ち、先端がはさみの形をした二本の腕が付いていた。何よりも目立つものは、とがった針のような物が付いた巨大な尾だ。女の下半身は、サソリのものだ。
「さあ、私に身を任せなさい。何も考えなくてもいいのよ。私の言うとおりにすればいいのだから」
女は、男に顔を寄せて耳元でささやいた。
男は女の声を聞きながら、ぼんやりと自分の過去を思い出していた。
アシュガルは、生まれた時から奴隷だ。農園で働かせるための使い捨ての道具として扱われてきた。幼少のころから鞭や棒で殴られながら、激しい労働を強要されていた。
アシュガルに未来はなかった。奴隷から解放される見込みなどなかった。奴隷として生き、奴隷として死ぬ事が定められていた。
アシュガル達奴隷は、いつ死んでもいい扱いを受けていた。アシュガルのいる国は、砂漠の多い酷暑の国だ。激しい日差しが照りつける中、わずかな水しか飲む事ができずに労働を強要された。多くの奴隷が目の前で死んでいった。奴隷はいくら死んでもいい、安く買えると主人は笑っていた。
そんな過酷な条件の中で、奴隷達は他の奴隷を犠牲にして自分が助かろうとした。奴隷達の間では、盗み、詐欺、暴行、恐喝、密告が荒れ狂った。奴隷の敵は奴隷だった。奴隷達がつぶし合いをしているのを、主人とその使用人は笑いながら見ていた。
アシュガルは、奴隷達の中でも弱者だった。他の奴隷から虐げられてきた。わずかな食事や水は盗まれ、奪われた。主人の使用人に叩きのめされて倒れているアシュガルを、他の奴隷達はさらに踏みつけ、蹴飛ばした。他の奴隷の失敗は、アシュガルの失敗という事にされた。主人の命で、アシュガルは罰として焼けた鉄の棒を体に押し付けられる事がたびたびあった。奴隷達は、罰を受けるアシュガルを見てわざとらしく澄ました顔をしていた。
アシュガルが生き延びたのは、自分より弱い奴隷を犠牲にしたからだ。アシュガルもまた、盗みや暴行を行った。
男は、裸にされて椅子に座らされていた。下半身がサソリの魔物であるギルタブリルの女に、水で濡らした布で体を洗われていた。女は上半身の人間の手を使い、丁寧な手つきで男の顔を布で拭いていた。
「あなたの匂いや味を感じながら交わるのもいいけれど、あまり汚れていると気持ち悪いでしょう?体をきれいにしてから、また交わりましょう」
女は首筋を拭き、胸と肩、腕を拭いた。いたずらっぽい表情で腋を拭いた。腹とわき腹を撫で回すように拭いた。後ろに回ると、頻繁に水で布を洗いながら背と腰を拭いていった。
「男の背は大きいわね。洗いがいがあるわ」
再び男の前に回ると、足を揉み解すように洗った。足の指の先まで丁寧に洗った。女は微笑むと、男の太ももに手をかけて股を広げさせた。
「ここは丁寧に洗わないとね。何度も交わったから、たっぷりと汚れているわね」
女は、男の陰毛や足の付け根をくすぐるように拭いた。焦らした後、ペニスを撫でるように拭いていった。先端やさおを湿った布で拭き、くびれのところの汚れをゆっくりと洗い落とした。袋を揉みほぐすように拭いた。男のペニスは反り返った。
「あらあら、元気ね。だけど、まだだめよ。きちんと洗ってからよ」
女は、ペニスに向かってなだめるように話しかけた。女は、男に腰を浮かせて尻を拭いていった。水でたっぷりと濡らした布で、尻の穴の辺りを中心に事細かく洗った。
男は、洗われている時にろくに反応しなかった。交わっていた時同様に、空ろな表情でされるがままになっていた。ペニスだけがそそり立った。
洗い終わり体を乾いた布で拭くと、女は男を寝台にうつぶせに寝させた。女は、手に小瓶を持っていた。小瓶の中に入っているオイルを手に取り、男の背や肩に塗り広げた。オイルは穏やかな香りがした。女は、オイルで光る肩や背中を揉みほぐし始めた。
「体が硬くなっているわね。私に身を任せればいいのに、緊張なんかするからよ。きちんと凝りをほぐ
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