ジョージは、開放感を味わいながら町を歩いていた。戦争が終わり、ジョージの身も自由になった。生まれてから自由のない身だったジョージは、この開放感を奇妙に感じた。ただ、気持ちいいことは確かだ。
歩きながら王都を見回した。荒れている所が多かった。まだ、再建が始まったばかりだった。人々の顔つきも暗く、荒んでいた。
ジョージは、内心ため息をついた。自分の国の現状を見れば、暗い気持ちになる。まして彼は王子なのだから。
白い馬が、ジョージの元に走ってきた。ジョージは、あわててよけようとした。だが、白馬はジョージの目の前に迫った。ジョージにぶつかる寸前で止まった。
白馬に見えたものはユニコーンだった。人間の上半身と、馬の下半身を持った魔物だ。頭には1本の角が生えている。ユニコーンは荒い息をついていた。呼吸を沈めると、ジョージに微笑みかけた。
「あなた童貞ですよね」
ジョージは呆れた。ぶつかりそうになる位に突っ込んできて、最初の一言が「童貞ですよね」だったら呆れない者は少ないだろう。ジョージは、無言でユニコーンを見上げた。
「貴様、何を無礼な事を言っているのだ!」
供の者が怒鳴った。
「相手をするな、行こう」
ジョージは、ユニコーンに背を向けた。
「待ってください、お話をしませんか?私達ユニコーンにとって、童貞は大事な事なんです」
ユニコーンは、ジョージの背に迫った。供の者が割って入り、ユニコーンを突き飛ばした。ジョージは、ユニコーンを一瞥した。ため息をつくと、背を向けて早足で歩いた。
ユニコーンは、去り行くジョージを食い入るように見つめていた。
ジョージは王宮に戻ると、ユニコーンのことを考えていた。ユニコーンは童貞の男を望むことを、王宮に戻ってから思い出した。
確かに俺は童貞だ。魔物は特殊な力を持つから、俺が童貞だとわかったのだろう。いきなりあんなふうに迫るとは、魔物と言うものは人間とは違うものだな。
ジョージは、自分の国について考えた。もう、この国の実権は魔物が握っている。魔物に従うしかない。
内戦の原因は、中央の権力闘争だ。王弟派、王妃派、宰相派が三つ巴の権力闘争を繰り広げた。王は凡庸であり、権力闘争を鎮めることはできなかった。
最初に乱を起こそうとしたのは、王弟だ。反乱を起こして、王位を奪おうとした。王弟の企みは、宰相にかぎつけられた。宰相は王妃と手を組み、王弟一派を粛清した。粛清で殺された者は、三千人に上る。
この粛清が王の命取りになった。王は、王弟一派の粛清に積極的だった。王弟の屍を切り刻んだ。王は、弟を憎んでいたことが明らかとなった。王妃と宰相は、自分たちも憎まれていると考えた。
王は、王弟が粛清されて半年後に毒殺された。王妃の手によるのか、宰相の手によるのかは不明である。王が死ぬと、早速新王選びが始まった。
順当に行けば、王と王妃の間に生まれた王子が新王になるはずだった。だが、宰相が反対した。宰相は、王妹を女王にしようとした。この国は、長男が王となるのが普通である。ただ、法制化はしていなかった。そこに宰相は付け込んだのだ。
王妃派と宰相派は軍事衝突し、内戦が勃発した。両派は王と女王を立て、相手の側を偽王に従う賊軍とののしった。
内戦は、最初は王妃派が有利だった。王妃は、自分の生国である南の隣国に救援を求めた。南の国は、三万の軍を送って軍事介入をしてきた。宰相派は追い詰められた。
宰相は、非常手段をとった。東にある親魔物国と手を組んだ。さらに魔王と手を組んだ。たとえ主神教会に逆らっても、内戦に勝つつもりだった。魔物の援軍により、宰相派は内戦に勝利した。宰相派は、魔物の制止を無視して王妃派の粛清を行った。数千人規模の虐殺が行われた。王妃とその息子は斬首され、屍をさらされた。
反乱が起こらなかったら、宰相はさらに虐殺を行っただろう。宰相配下の将軍の一人が反乱を起こし、宰相一派を捕らえた。宰相の傀儡だった女王は、廃位された。反乱の背後には、魔物の姿があった。
女王には幼い息子がおり、その少年が新王となった。将軍は宰相となった。国の実権は、魔王の配下が握った。
ジョージは、パーティーに出席していた。親魔物国、そして魔王領との交歓のためだ。王子であるジョージは、参加しなくてはならなかった。
パーティーの中心は、一人の女だ。白い髪をして黒衣をまとい、人間離れした美貌を持っていた。魔王の娘であるリリムだ。彼女こそが、この国を実質的に動かしていた。
ジョージは、早速リリムにあいさつをした。当たり障りのない事を慎重に話した。あいさつが済むと、早々に離れた。話をしたくなかった。
ジョージはパーティーの出席者と話しをしながら、パーティー会場を見渡した。魔物娘達は、華やかだった。絹と毛皮と宝
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