魔女狩り将軍

 少女が、閉ざされた部屋で裸にされて吊るされていた。十三、四歳くらいのあどけない顔立ちの少女だ。一糸まとわぬ姿で、滑車を用いて天井から吊るされている。少女は、脅えた表情で目の前の男を見つめていた。
 少女の前には、一人の男がいた。絹服を着た三十代の男だ。青緑色の石のペンダントをかけている。平凡な顔立ちだが、自信に満ち溢れた表情をしている。男は、少女の裸体を刺すような眼差しで見ていた。
 「これから尋問を始める。初めに言っておくが、さっさと魔女だと認めろ。余計な手間をかけなくて済む」
 男の言葉に、少女は震えながら頭を振った。
 「私は魔女ではありません」
 男は、わざとらしく冷笑しながら言った。
 「では、手間暇をかけるとしよう。俺は別にかまわん。お前が苦しむだけだ」
 男は、口の端を吊り上げた。
 「自己紹介をしておこうか。俺は『魔女狩り将軍』ジェームズ・ホプキンスだ。覚えておけ、アリス・ミーズ」
 魔女狩り将軍と聞いて、アリスの血の気は引いた。この国でもっとも名高い魔女狩り請負業者だ。アリスの引きつった表情を、魔女狩り将軍は楽しげに見ていた。

 ジェームズ・ホプキンスの名は、この国では有名だった。市や町、教会の依頼を受けて魔女を狩っている者だ。既に三百人もの人々が、ホプキンスの手で魔女として狩られていた。ホプキンスは、魔女狩り将軍を自称していた。
 ホプキンスは、アリスを見ながら金の事を考えていた。ホプキンスは魔女狩りの一般的な手数料以外に、政府から依頼されていると証して魔女狩りの特別徴税を行った。この特別徴税によって、ホプキンスは多額の金を稼いでいた。ホプキンスは、さっさとアリスを魔女だと認めさせて金をせしめようとしていた。
 「魔女」を狩る際にはいくつかコツがあった。アリスは、よそから引っ越してきた者だ。町に友人は少ない上に一人暮らしだ。そのような女は、魔女として狩っても問題になる事は少ない。加えてアリスは猫を飼っていた。猫を、魔女の使い間に仕立て上げることができる。アリスは、ホプキンスにとっていいカモだった。
 「魔女には独特のしみがある。調べるとしよう」
 ホプキンスはアリスに近づき、体を食い入るように見つめた。未成熟な体だが、きれいな肌をしていた。ホプキンスは、顔を近づけて調べまわした。アリスは羞恥で顔を強張らせ、身をよじった。ホプキンスは、手でアリスの体を押さえた。顔、首、胸、肩、腕とぎらついた目で見回した。右の腋の下を見た時、ホプキンスは満足げに笑った。
 「ここに黒いしみがあるな。これは魔女である証拠だ」
 アリスは、身をよじりながら抗弁した。
 「そんなしみは、誰にでもあるでしょ。魔女の証拠になるわけがないじゃない」
 ホプキンスは、薄ら笑いを浮かべながら言った。
 「いや、明らかに魔女の証拠だ」
 笑いながら言葉を続けた。
 「証拠が正しいか否かを判断するのは俺だ。お前ではない。さあ、証拠は挙がった。おとなしく魔女と認めろ」
 アリスは、怯えを押さえながら叫んだ。
 「ふざけないで!でっちあげよ!」
 ホプキンスは、アリスのあごをつかんだ。アリスが苦痛に顔をゆがめる様を見ながら、ホプキンスはゆっくりと言った。
 「さっさと魔女だと認めろ。繰り返すがお前が苦しむだけだぞ」
 ホプキンスが手を離すと、アリスは顔を背けた。
 「馬鹿な奴だ。まだ自分の立場を分かっていないな」
 ホプキンスは、ドアに向かって声をかけた。
 「入って来い、お前の出番だ」
 ホプキンスに声をかけられて、ドアが開いた。一人の娘がオドオドと入って来た。頭にねじれた角を生やし、腕、脚、胸、腰に白い毛を生やしていた。首には家畜につけるような首輪をつけていた。羊の特長を持つ魔物娘であるワーシープだ。
 アリスは驚愕しながら言った。
 「あなたは魔物を奴隷にしているの?」
 アリスの言葉に、ホプキンスは傲然と答えた。
 「奴隷ではない、家畜だ」
 ホプキンスの言葉に、ワーシープはいじけたようにつぶやいた。
 「どうせ私は家畜ですよぅ」
 ホプキンスは、ワーシープの言葉を気に留めなかった。アリスに対して、楽しげに言った。
 「素直に認めない奴は、体に聞くしかない。お前が悪いのだからな」
 ホプキンスは、ワーシープに命じた。
 「雌羊よ、この魔女の足を舐めてやれ」
 ホプキンスの命令を聞いてため息をつくと、ワーシープはアリスの前にひざまずいて右足を舐め始めた。足を手に取り、足の裏に舌を這わせた。指の裏とくぼみを特に丁寧に舐め回した。
 アリスは、くすぐったさに耐えられずに笑い始めた。身をよじって逃れようとするアリスを、ホプキンスは押さえ込んだ。ワーシープは、繰り返し繰り返し足の裏を舐め続けた。
 「この雌羊は、足の皮が破けて肉が露出し、骨が見える
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